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田村正和のダンディズム

2021-05-21 19:07:51 | MUSIC/TV/MOVIE

田村正和さんがお亡くなりになられてた。

4月3日に既に心不全でお亡くなりになられてたと、5月18日に発表された。新型コロナかで取材ができないとはいえ芸能レポーターとか、芸能取材陣は最近手抜きだなぁ。

 

マスコミ・メディアも、相変わらず猛威を振るう新型コロナと、それでも強引にやろうとしてる東京五輪の事ばかり報道して飽き飽きしてたところに、新垣結衣と星野源の結婚おめでとうニュースと、田村正和さんの訃報が入ってきたもんだから狂喜乱舞。

でも、このおめでたいことと哀しいこと、両極端な二つのニュースをどうやって流したらいいかいいか戸惑ってる。

しかもどっちも取材できてなかったから情報がない上に、この先も取材できない。

いつものごとく「ネットでは」とか、「関係者の話では」とかばっかりだ。後はおきまりの芸能人のSNSを拾って、誰々がこんなコメントしてたってのばかり。

手抜き取材を通り越して、こたつ記事ばかり。これでいいのかね。

 

田村正和さんといえば、何と言っても「古畑任三郎」だろう。

1994年から放送されたこのドラマは、刑事ドラマとしては異色だった。だってそれまでの刑事ドラマって、刑事が捜査して犯人を見つける過程を描くものだもの。視聴者もそうさの過程で事件の概要をつかみ、「こいつが怪しい」とか「こいつが犯人では?」などと自分も推理しながら観るものだった。

しかし「古畑任三郎」は違う。

先に犯人が分かってる。冒頭で田村正和演じる古畑任三郎が事件の概要と真犯人について語る。そして「今日の見所はここですよ」「ここに注意してみてください」と言わんばかりの親切さ。今でいう「ネタバレ」で視聴者は観るという、大きなお世話大好きの三谷幸喜ならではの脚本だ。

したがって視聴者は、「真犯人は誰なのか」ではなく、古畑任三郎がどうやって事件を解明し、どうやって真犯人から自白や自供さすのかを観る。完璧なトリックをしかけた犯人を古畑任三郎が追い詰めていく、それを楽しむのだ。

毎回、豪華ゲストが犯人役として出演してた。

たしか第一回目は中森明菜だ。

菅原文太や草刈正雄、津川雅彦、緒形拳など大物が犯人の回もあった。

風間杜夫、鹿賀丈史、市村正規などベテランから唐沢寿明、真田広之、石黒賢などまで起用。

古手川祐子、沢口靖子、桃井かおり、鈴木保奈美など女優陣も超豪華。大地真央も出てた気がする。

笑福亭鶴瓶、小堺一機、明石家さんまなどお笑い界だけでなく、イチローやSMAPまで本人役で登場するという大盤振る舞い。

俺が好きなのは最終回での江口洋介との電車内で繰り広げられる心理合戦ね。ファイナルでの石坂浩二と藤原竜也の回も圧巻だったな。

 

本間勇輔さん作曲のオープニング曲も有名よね。ちょっと(いや、だいぶ)「007」のテーマ曲と似てるけど、そこはあまり掘り下げないでスルーしよう。

刑事ドラマはいいテーマ曲多いよね。「太陽にほえろ」「西部警察」「Gメン'75」「相棒」「踊る大捜査線」。テーマ曲が流れただけでドラマを思い出す。

 

 

古畑任三郎は警部補なので、階級で言えば「相棒」の杉下右京(水谷豊)や、もうすぐスペシャルが放送される「駐在刑事」の江波敦史(寺島進)と同じだ。

ついでに言えば「遺留捜査」の糸村聡(上川隆也)、ストロベリーナイトの姫川玲子(竹内結子)、「新参者」の加賀恭一郎(阿部寛)、「アンフェア」の雪平夏見(篠原涼子)とも同階級だが、古畑任三郎の方が偉く見えるのは田村正和さんの持つオーラのせいか。

ちなみに警部の方が階級は上だから、銭形幸一(ルパン三世)や目暮十三(名探偵コナン)よりも警部補の古畑任三郎は下である。どうでもいい情報だが。

 

田村正和さんは80年代には、トレンディドラマにも主演されてる。

その筆頭が「ニューヨーク恋物語」だろう。

タイトル通り全編ニューヨークロケという、時代を象徴するかのようなバブリーなドラマである。

主題歌は井上陽水の「リバーサイドホテル」。この曲を聴けばこのドラマを思い出す人は多いだろう。

 

 

登場人物は男3人(田村・真田広之・柳葉敏郎)と女5人。桜田淳子を除く4人がワケありバーテンダーの田村正和に惚れるという謎設定だ。

岸本加世子が右手にホットドッグ左にコーラという、「お前それ、ひったくりにすぐ会うぞ」って両手ふさがり超油断スタイルでN.Y.の街を闊歩してるところに、向こうから歩いてくるトレンチコートの田村正和。岸本加世子のヒールの靴紐が解けるのに気付き、跪いて靴紐を結び直してあげ無言で立ち去る田村正和。

今思い出してみても、ただ「N.Y.は素敵な街」「その街で出会うおしゃれな男女の素敵な恋の物語」を表現したいってのが丸わかりの演出だ。

しかし、当時の正和さまはそんなベタな演出も、サラリと似合いすぎるほどカッコよかったのだ。

「パパはニュースキャスター」「パパは年中苦労する」(共演:浅野温子)、パパとなっちゃん(共演:小泉今日子)など、パパを演じても田村正和はおしゃれでかっこいいのだ。

 

古畑任三郎の後も、田村正和のかっこいい主演ドラマは多々ある。

「協奏曲」(共演:木村拓哉/宮沢りえ)では建築設計士。ピークを過ぎた建築士の苦悩と葛藤がわかる演技はさすがだ。キムタクの抑えた演技もいい。

「総理と呼ばないで」(共演:鈴木保奈美/鶴田真由)では総理大臣。三谷幸喜は「記憶にございません」(主演:中井貴一)でも支持率の低迷する総理大臣描いてたな。

「美しい人」では美容整形外科医。夫・大沢たかおのDVから逃れるために「どんな顔にしてもいいから:と整形手術を希望する常盤貴子を、田村は亡き妻と同じ顔にする。野島伸司脚本ならではの暗い演出は田村正和には合わなかった気がする。松本清張シリーズなら違和感ないのにね。不思議。

 

そう、田村正和さんは「かっこいい」を貫いた人なのだ。

プライベートはほとんど明かされてないし、トーク番組でペラペラしゃべることもない。

役者は私生活はミステリアスな方がいい。どんなとこに住んでて、どんなもの食べてて、どんな暮らしをしてるかなんて、視聴者にバラす必要ない。想像にお任せしますでいいじゃない。

最近は俳優でも歌手でも簡単にプライベート語りすぎよ。トーク番組に出るとかもそうだけど、SNSで自ら発信してる人もいる。そんなにサーヴィスしなくていいのにな。

 

そんなミステリアスなダンディズムを貫いた田村正和さん。

ご冥福をお祈りします。

 



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