GOKIGENRADIO

バーボングラス片手のロックな毎日

東京事変のライブ

2020-03-03 20:58:25 | MUSIC/TV/MOVIE

東京事変のライブが物議を醸してる。

新型コロナウイルスの感染が拡大し、イベント自粛要請が出てる中、2月29日,3月1日にライブを決行した。8年ぶりの復活、しかも2月29日は4年に一度しかない。だから決行したのかどうかわからんが、やりたい気持ちはわからんでもない。わからんでもないが、俺はすべきではなかったと思ってる。

椎名林檎はデビュー時から好きだし、東京事変も好きだ。今回の再結成も「おっ再始動ね」と時効警察のエンディングテーマ聞きながら楽しみにしてた。でも、正直、「なんで、この時期にライブ決行しちゃうかなぁ」って思ってる。

 

「自己責任だろ?」

という声もあったみたいだが、これはとてつもなく勘違い。いくら主催者側が「会場では感染防止に努めてます」「ご来場のお客様も自身の健康を優先していただき、くれぐれも無理をしないように」「希望者には(不安で来れない方)には払い戻しの対応しますよ」と言ったところで、それは逆を返せば「もし会場で新コロナウイルスに感染したとしても、それは告知を読んだ上でリスク承知でこられたんだから当方は責任あり(取り)ませんよ」と言ってるに過ぎない。

 

そして椎名林檎及び東京事変のファンが「こんな時だからこそやるべきだ」「コロナに負けるな〜」、ライブ参加者も「もし感染したとしても、仕方がないと諦める。それより東京事変のライブを生で観たい」なんて言ったところで、それは、とてつもなく甘い考えでしかない。それこそ無責任に煽るのはやめてくれ。

 

なんで政府が公演やイベントの中止や延期の自粛を要請したか。なぜ命令とか禁止ではなく、要請なのか。

「自粛の要請なんだから、演るも演らないも自主判断でしょ?」

そう思ってる人は大きな間違い。以前にも書いたが現在の法律だとウイルスなどでは、台風や地震などの自然災害、テロ・戦争などと違い、政府はイベントや公演の中止や禁止の指示・命令は出せないのだ。

政府はそれを可能にする新法案の成立を急いでる。【新型フルエンザ等特別対策措置法】を今回の新型コロナ19でも最長2年間適用できる法の改正を急いでる。マスコミは何かにつけ「安倍政権は遅すぎる」とか「いきなり学校を休校にした」とか言ってるが、まずは法律を勉強してから、正しい情報をみんなに伝えて欲しいと思う。

この法律(法改正)が成立して初めて「緊急事態宣言」で「要請」から「指示」に、そして「命令」が出せれるようになる。したがって今は「大型イベントなどの自粛要請」「不要不急の自粛要請」しかできないのだ。そこを勘違いしないで欲しい。

 

椎名林檎及び東京事変が2月29日の閏日は記念だからとか、コナン君の新作映画タイアップとの関係とか、すでに会場を押さえてて中止にすると莫大な損害がとか、延期による振替公演する場所や日程が抑えられないとか、いろいろあるのはわかる。

でも、ファンのがっかり感とか、所詮林檎もその程度かと思われるとかのイメージとか、それよりももっと大事なことがあるのよ。

 

もし来場したファンがスプレッダーになったらどうする?

もし会場がクラスターになったとしたらどうする?

自己責任などという甘っちょろい考えは全然通用しないのだよ。

 

「こんな時こそライブはやるべきだ」とか「自己責任で」とか言ってるやつのほとんどは、

「もし感染したら」

の後のことをよくわかってないからだと思う。

病状が出たら、病院行って検査して、もしウイルス陽性だったら「人と会わないようにしておとなしく寝て、症状治まるまで・・・ってことでしょ。」なんて軽く考えてないか?

 

これは俺の経験談だ。コロナ19とかSARSではない。以前、結核の疑いと診断されたことがある時の話だ。ちょっと長くなるけど読んでくれ。

 

当時俺は関西に数十店舗を要する美容室チェーンのマネージャーをしていた。新しい支店の出店準備に追われてた時、図面や設備・免許・各書類と共に診断書が必要。新店舗のスタッフ予定者とともに管理者の俺も病院で診断書をとって保健所に提出しなければならないので、阪急系列のクリニックに行った。

その検査で引っ掛かった。

レントゲン写真の俺の肺は片方が真っ白で、医者曰く「これは肺がんか結核しかない、大きな病院で再検査をしてもらってくれ」。

 

地元のちょっと大きい総合病院にレントゲン写真と紹介状を持って検査を受けに行く。どれくらい待たされたと思う?6時間だよ。仰々しいマスクを付けられ、他の外来の患者がいなくなるまで、ひっそりとした小部屋に隔離されて6時間。ようやく看護婦が来て診察室に入ると、医者は問診とかもなしにレントゲン写真を見ながら「結核だな」と。「専門病院の紹介状書くから」と。京都に結核専門の桂病院があるらしい。

こんなに健康で?バリバリ働いてるのに?咳も出なけりゃ、たんに血が絡んでるわけでもない。

そりゃ毎日ハードで、休みも取れてないよ。朝食ったら昼飯は夕方6時、晩飯は終電で帰った夜中1時頃で、ビールもバーボンもそれから飲む、俺にとってはこれが規則正しい生活だ。毎日睡眠時間4時間くらいだけど、全然楽勝だよ。変な薬はしてないよ。

納得いかなかったので(桂病院に入れられたら半年から数年でてこれないって噂があったから)、大阪医大への紹介状を書いてもらった。どうせ結果が同じなら、納得いくまで大学病院で検査してもらおうかと。

 

で、大阪医大に予約を取って行く。窓口でレントゲン写真と紹介状を出して長椅子に座って待つ。また6時間くらい待足されるのかなぁと。思った瞬間、看護婦(当時は看護師って言いかたしてなかった)が飛んできて別室に誘導され、マスク(今考えると手術用のマスク?)を付け替えろと言われ、これに記入しろと紙を渡された。問診票かなってみたら全然違うの、ここ1ヶ月の行動パターンや接触した人を書けと。そしてそれを持って検査後、保健所に行けと。(大阪医大と保健所はまぁ近い距離だ)

この時まで「もし結核だったらやだなぁ」とか「入院ってなったら長引くんだろうなぁ」なんて思ってた。結核が指定感染病である事などそれほど重く考えてなかった。

 

先にも書いたが当時の俺はチェーン店の教育や指導をしていて、全店の店長をはじめスタッフに対しほぼ毎日講習してる。隣店もしてるので大阪兵庫京都縦横無尽に行っている(当時はまだ遠方での講習はしていなかったのは不幸中の幸い)。朝は満員電車、夜は終電。勤務は主に人の溢れかえってる梅田。店では月1000人以上のお客様に来店いただき、自身のお客様も月200人近く接客している。本部の会議にも出てる。メーカーや代理店の人とも会う。喫茶店にも行くし、Barや居酒屋などに飲みにも行ってる。外食も多い。

ここ1ヶ月のこれら接触や会話のした人、会った人、行った所、交通経路などを思い出せる限り書けと。そして可能な限りそれらの人の連絡先も記載しろと。

 

無理。

思い出して名前を書くことはできるよ。けど、これ書いて、この人たちに連絡されたらどうなるのだ?まだ検査結果も出てないうちから「実は〇〇さんが結核の疑いがあって」って連絡されたら、不安になるだけじゃないのか。

でも、もし結核だったら大変だ。労咳と呼ばれた昔と違って、結核は今は治る病気だが、そんな問題じゃねぇ。「俺にうつされた」って絶対思うよな。俺がもし結核だったら俺も誰かにうつされたってことなんだが、被害者ではなく加害者になってしまうのだ。

そうなんだ、結核というのは伝染病だ。宿主の俺だけではなく、俺に関わった人すべてにうつしてる可能性がある病気なんだ。

俺だけでこの有様だ。ここ1カ月くらいに限定したとしても俺の講習を受けたスタッフ(約400人くらい)それぞれも各店で接客している。もし彼ら彼女らが感染してたら、それぞれのお客様、店のスタッフ、その店のお客様・・・と芋ずるのように調査対象は広がっていく。

 

長々と書いたが詳細は一気に端折る。色々検査をしてもらって自宅でじ〜っと我慢の日々。出店準備も講習も接客も全部キャンセル。引きこもりのように外出一切せず。1週間後(10日後だったかもしれん)大阪医大にて診断結果が出るまでの辛抱だ。

結果は陰性。結核と違いました。

診断してくれたのは日本で有名な肺の権威の先生で、その先生のお墨付きだから潔白。安心。

だが先生曰く、このレントゲン写真だと「100人中99人の医者が肺癌か結核と診断する」らしい。肺がまっ白に写っていたのは以前にした肺気胸の手術の処置が悪かったせいみたいだ。肺が癒着してるんだと。じゃぁ、ここの前に行った地元の総合病院のせいじゃないか。チクショウ!って思う前に安堵した。よかった。これでお客様、スタッフ、関係者すべての人に迷惑をかけないで済むって思ったよ。

ちなみにその後、出店の度に検診受けて診断書をとってるがすべて大丈夫だ。

 

俺でこの有様だ。実際に結核にかかったハリセンボンの箕輪はるか(2009年)やJOY(2011年)などは大変だっただろうな。

お客様を前にして舞台に立つ。テレビ番組に色々出る。スタッフとの打ち合わせもするし、他のタレントにもいっぱい会う、楽屋や番組で喋る。局や都内の移動はタクシーやハイヤーでも、ロケなら街中を歩く。イベントとかで地方へ行くのは新幹線や飛行機で移動。売れっ子なら接触人数は膨大な数になる。

 

いいかい、いくら自己責任って言っても、全然責任取れないってことがわかるかい?

もし東京事変のライブで感染者が一人でも出たら、どんだけ大変な事になるか。

 

大阪のライブハウスがクラスターになってしまい、次々と感染者が出てる。

東京事変のでっかいライブ会場(東京国際フォーラム)と違い、この大阪京橋のArcは100人規模のライブハウスだ。ここでのライブに当日行った人も、出演者も会場側も、まさか感染者(サイレントキラー)がその中にいるとは思っていなかっただろう。音楽に酔いしれ熱狂した夜だっただろう。

 

その結果、大阪、京都、神戸、札幌、高知、愛媛からの参加者が感染してることが確認されてる。彼ら彼女らは移動に電車や飛行機を利用し、ホテルや飲食店も利用してるだろう。ライブ参加者以外にも当然職場の仲間や取引先、お客様、家族以外の把握できない方々にも感染の恐れがある。

その一人一人が俺のように関わった人など、行った先のことを書くだろう。人間関係は相関図になり、誰と誰がどこで接触して移ったか把握できる場合もある。わからない場合もある。

こういうことになるから、ライブなど人が集まるイベントは自粛してってお願いしてるのだ。

じゃぁカラオケボックスは?とか屁理屈言わないでくれ。不要不急の外出は控えてなるべく人と接触しないでくれ。自衛のためにも人にうつさないためにも。ましてやライブには行かないでくれ。っていうかそもそもライブを開催しないでくれ。

 

X-JAPANのYOSHIKIが言う。

「今、このタイミングでコンサートを行う行為、及び参加は、危険な行為だと思う」

これをホリエモンってバカが「これって圧力ですか?」などとこれまたいつもの見当違いコメント出してたが、かまってちゃんは無視してくれ。圧力でもなんでもなく、アーティストが今やるべきことは、ライブでみんなを元気づけることではなく、ファンのみんなをスプレッダーにさせない、悲しい思いをさせないってことじゃないのか。

 

新型コロナの脅威が収まるまでのライブ自粛、そのちょっとの我慢が出来ない奴はファンでもなんでもない。

東京事変よ、今後のライブは中止にすべきだ。俺はそう思う。

 

 



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