刑事を名乗るのに“刑”の字が書けない。
特殊詐欺の“詐”が書けない。
今月7日に警察官を装い府中市の90代の老人からキャッシュカードをだまし取った男が捕まった。
まぁ、今時まだオレオレ詐欺とか給付金詐欺、還付金詐欺に引っかかる老人が多いのも問題だが、警察官を装った受け子がこんな字も書けない奴ってのも問題だ。
この21歳の男は90歳代の男性宅で「刑事課の特殊詐欺防犯係」と名乗ってたが、男性が連絡先を紙に書いて欲しいと言われたところ、
刑事の“刑”を“形”と書き、特殊詐欺の“詐”はごんべんしか書けなかったそうだ。こんな奴になぜ5枚もキャッシュカードを渡してしまったのか不思議だ。
学がないのは悲しいね。
だからこんなしょうもないオレオレ詐欺の末端出し子、受け子をさせられて利用されてるんだろう。
彼はどこで道を間違えてしまったのだろう。
MIU404。
一つのドラマでレビューを何回を書くのは稀なのだが書く。
このドラマには裏切られたから。
いや、誤解招くな、これじゃ。いい意味でね、裏切られたのよ。期待以上っていうかこっちが思ってた以上の展開なの。
第1話で派手なカーチェイスを見せてくれて、これは久々に往年の刑事ドラマの復活か?って思わせておいて2話目で早速裏切られた。
MIU404は、昨今の警察ドラマでしょっちゅう描かれる警察組織の腐敗や上層部の闇だとか隠蔽だとかじゃなく、ただ単に凸凹バディが痛快に事件を追うドラマかと思ってた。いや、俺が勝手に1話目でそう思ってしまっただけなんだけどね。
確かにバディもので事件を追うのはその通りなんだけど、毎回テーマがコロコロ変わる。
2話は一転して重いテーマ。
幼少期に父親にボロカス言われて育ったせいで歪んで育った男が起こした悲しい犯罪。いまいち犯人(これがまた下手なんだ)の過去にも動機にも同情できないし、人質に取られながら、過去に自分の息子を信じなかったゆえに亡くした事を悔やんでたから今度は容疑者を信じ、最後に裏切られる夫婦(片方は鶴見辰吾)の心情も理解できない。
なんかなぁ、これじゃない。
みたかったのはコレジャナイ・・・。
と、第3話見てから見続けるか見切るか決めようと思い観た話は前回書いた。
MIU404 3話目で野木亜紀子の本領発揮
第3話では、先輩の不祥事により廃部にされ走れなくなった陸上部の生徒が、警察へ110番をして駆けつけた警察官から逃げるいたずらを繰り返してた話。
野木さん脚本の『アンナチュラル』から大倉孝二と吉田ウーロン太がその役のまま登場し、さらに事件の黒幕で菅田将暉まで登場してきたことが話題となったが、この回のテーマは分岐点。
誰と出会い、誰と交わるか、ほんのちょっとの出会いやきっかけで犯罪に手を染めてしまうか、踏みとどまれるか変わる。
いたずら電話をかける役立った女の子が、本当に変質者に襲われた事を伝えられ踏みとどまった少年と、逃げてしまった少年。
この話を見て「あれ?これは俺が思ってた刑事ドラマ」とは違うぞと。
いい意味で裏切られたのだ。面白いのだ。
そして先週の第4話は、ほんのちょっと道を外れただけで、これまで何もいいことがなかった女の意地が描かれた。
女を演じるのは三村里江。
最初誰だかわかんなかったんだけど、以前ミムラって芸名だった女優だ。以前はお世辞にも褒められないヘタッピ〜な女優だったが、今回のドラマではサブイボが出るくらいいい演技。
今回の重要参考人の三村は、発砲事件の被害者。ガラの悪い男たちから逃げながら薬局に飛び込み、撃たれた銃創の薬と手当てを店主に要求する女。防犯カメラを睨みつけるように。そしてカバンには1億近いお金が。
彼女は以前夜の仕事をしていて、客にアフターで闇賭博場へ誘われた。そしてビギナーズラックで最初は勝たせてもらえるけどあとはドツボ、気がついたら多額の借金というおきまりのパターンにはめられた。夜の女はホストか博打でストレス発散、ただし借金まみれになるリスク大。
そして借金返済のために裏カジノで働いてたところに警察の手入れを受け、逮捕され、執行猶予付き前科がついた。テンピンの賭け麻雀なら許してもらえたのにな。
その後、安い賃金で働いていたPCショップが実はヤクザのフロント企業で、マネーロンダリングの片棒を担がされていたことを知った彼女は、ピンハネを始める。そして、それがバレて逃げていたのが今回の話。
そして最後に彼女は賭けに出る。
ほんのちょっとのボタンの掛け違いとか、間違った道の選択で何もいいことがなかった女の意地。
見事な脚本である。毎回上から目線で申し訳ないが、さすが野木亜紀子さんである。
ドラマ終盤、空港に逃げる彼女がバスの窓から外を見て何かに気付くシーンがあった。その時はてっきり追ってくる警察やヤクザの車を見つけたのかなと思ってたんだが、違った。
見事に裏切られた。
ドラマの最後に消えた一億の行方と彼女の最後の賭けが映し出される。
空港での銃撃戦を避けるため、エアポートギリギリでバスは本線を外れインターチェンジを降りる。
その横を(本線を)彼女の希望を乗せたトラックが走っていく。
映画のような見事なシーン。
派手な銃撃戦も、逮捕劇のアクションも、カーチェイスもないけど、このドラマは最高に面白い。
第4話を見終わった時、良い映画を見終わった時と同じ余韻があったよ。
今回、三村はほぼしゃべらない。取り調べも職質もされない。薬局で店主に「早くして」「お金ならいくらでも出すわよ(あれ?「あげるわよ」だったかな」とヒステリックに叫ぶシーンくらいだ。
それなのに彼女のこれまでの人生がわかる。何もいいことがなかった。どこで踏み外してしまったのか。そして戻そうと思って選んだ道も実は悪い方向へ向かうレールだった。
彼女の最後の賭けの意味が嫌いほどわかる。
人は彼女を見てこう言うだろう。「ツイてないね」と。
いや、人は彼女の人生を気にもしないかもしれない。気づきもしないかもしれない。
人がいっぱい交わっているのに無関係・無関心でいられるのが今の社会。
刑事の刑の字も書けないくらいの学力しかなく、詐欺の末端、一番捕まるリスクのある部分を請け負った彼は、どんな人と交わってきたんだろう。
SNSで「短期・高収入の簡単なバイト」という誘い文句に乗ってしまっただけなのか。
それとも数々の老人を食いものにして、平気でいられる悪党どもの手先として今までも動いてきてたのか。
奴らは多分こう言うだろう。
「どうせ老い先短く使い道のないカネを俺たちが使ってあげるんだ」「これは経済の活性化だ」と。
違うぞ、それは。
騙されるやつ、騙す奴。
知らない間に犯罪に手を染めてた奴。伊豆から犯罪に手を染める奴。
踏みとどまれた奴。流されてしまった奴。
分岐点はどこだ。
誰と出会い、誰と出会わないか。
気付いた時はいつも遅すぎる。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます