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大阪粉もん文化 その1お好み焼き

2015-07-06 02:44:10 | FOOD&DRINK
大阪は粉もん文化である。
食い倒れの街の大阪。勿論粉もん意外の食べ物もいろいろあるが、やっぱり大阪の食文化とは「粉もんがメイン」って断言してもいい。

小麦粉料理の代表その1。お好み焼き。
類似で阪神百貨店地下の「イカ焼き」、十三やまもとの「ネギ焼き」(他の店では一銭定食と呼ぶ事もある)、その他豚肉を使った「とん平焼き」、韓国代表の「チジミ」もあるが、粉もんの代表は「お好み焼き」と呼ばせていただく。
大阪にお好み焼きの店がどれくらいあるのかしれないが、チェーン店・個人店、かなり多い。古くからある街のお好み焼き店で食べるのもいいが、自分の家でも手軽に作る。ワインを飲みながらアヒージョって洒落たホームパーティより、大阪ではビールや酎ハイ片手にホットプレートを使ったお好みパーティの方がポピュラーに行われてるんじゃないかな。

よく地方の方に「大阪はお好み焼きとご飯を一緒に食べるんでしょ?」って言われるが、これは残念ながら間違い。何が残念なのかわからないが、これはソース二度づけ禁止が「キタイナイから」って同様、誤解、勘違いされてる情報だ。北海道人が「毎日朝からジンギスカンを食う」とか思ってるのと同じくらいの誤解だ。
確かに千房、風月、ゆかり等のチェーンでは「お好み定食」ってご飯とお好み焼きとみそ汁ってメニューがあったりする。町のお好み焼き屋や喫茶店でもあったりする。でも、本当のお好み焼き好きはご飯と一緒に食べない。いや、正確には食べれないと言った方がいい。

本来、大阪のお好み焼きは、自分で焼くのが基本だ。チェーン店では奥で焼かれ、出来上がったお好み焼きを目の前の鉄板に置かれたりするが、これは邪道だ。だから俺らはチェーン店には行かずに、自分で焼かさせてくれる店を好む。お好み焼きは「自分の好きな焼き加減で作る」から“お好み”焼きだとか思ってる。お好みの具材を入れて焼くからお好み焼きなのかもしれないがね。どっちが正しいか知らないが、調べる気もないしどうせ正解は無いから気にしない。
アルマイトなんかの容器にキャベツと卵と出汁で溶いた生地の入ったものを、かちゃかちゃとこねくり回し混ぜ合わし、使い込まれた鉄板に一気にひく(流し込む)。この瞬間がたまらなく好き。東京のもんじゃ好きもこの快感を味わっているのだろうか?店に焼いてもらってる方が多い広島焼きではこの快感は味わってないんじゃないかな。違ったらごめん。

大阪定番の豚玉の場合は広がった生地(ただしあまり広げては駄目、直径15-17cmくらいがベスト)その上に豚肉を置く。イカ玉やエビ玉の場合は一緒に混ぜて焼く。そして頃合いを見てテコでひっくり返す。これができない大阪の男は、女性に「うわぁ、こいつダサっ」って思われる。どんなに洒落た服を着てても駄目。ブランド品で身をまとっていても、大阪でお好み焼きをひっくり返せないのは、最下層レベルまで落とされると言っても過言ではない。慣れた奴は片手で小さいテコでもひっくり返す。叩いてペタンコにしたら駄目だよ。ついつい触りたくなるけどじっくり我慢。

で、もう一度最後にひっくり返して焼き上がったお好み焼き。それにそのまま直接ソースを塗り、鰹節、青のり、マヨネーズ等をまたもやお好みで使い、そのまま鉄板の上で“テコ”を使い切り分ける。勿論切り分けてからそれぞれにソース、ポン酢、マヨ、七味などかけて、いろんな味を楽しむのも良し。だけど基本は一つの味。ピザ風に円錐形に切り分けるのも良し。9分割、12分割に縦と横に均等なサイズに切り分けるも良し。(大阪ではこちらの方が定番かな?)
そしてそのままテコで食べる。それが大阪スタイル。そのテコでどうやって茶碗のご飯が食べれるというのだ?お好みとご飯を一緒に食べれる人は、テコではなく箸で食べてるんだろう。小皿かなんかに移してね。それははっきり言って邪道だ。それは俺に言わせると東洋ピザだね。お好み焼きは鉄板からテコで直接食べなきゃ美味しくないよ。

したがって、「大阪ではお好み焼きをおかずにご飯を食べる」は、お好み焼きの本来から外れた邪道と思っていただくがいいかもしれない。
これを説明するとあまり良く理解できないからか、怪訝そうな顔をされて続いて「じゃぁ焼きそばとご飯を一緒に食べるも嘘ですか?」って聴かれる事多々あり。焼きそばとご飯。しかしこの食べ方は定番なのだ。喫茶店でも「焼きそば定食」ってのが普通にあるしね。うどんとご飯、ラーメンとご飯(又は焼き飯)を食べるのと変わらず、焼きそばとご飯は定番だ。ソースの絡まった麺とご飯。最強の組み合わせ。

なんでお好み焼きとご飯は邪道で、焼きそばとご飯は定番?って思われそうだが、仕方が無いのだよ。
お好み焼きはでかい鉄板から直接テコで食うが、焼きそばは箸で食べるからね。喫茶店等では小さな鉄板に移されて運ばれてくるから、豚生姜焼きとかハンバーグ定食とかと一緒の系列。違和感なし。

こなもん文化の大阪。炭水化物+炭水化物って最強コンビは、「焼きそば+ご飯」「うどん+かやくご飯」「ラーメン+焼き飯」にのみ存在する。
「スパゲッティ+パエリア」とか「蕎麦+いなり寿司」とかと同じく「お好み焼き+ご飯」はあまり定番じゃないのよね。

俺がいろんな地方の方が来た時に案内するのは、大阪梅田の「美舟」。
昭和23年年創業の老舗。大阪で一番古い店だと勝手に思ってたんだが、クリームシチュー司会のTV「シルシルミチル」で、更に老舗が判明。一番古い店は千日前の「はつせ」さんとか難波の「美津の」さん(共に昭和20年創業)だって。両方行った事が無い。いや、行った事があるのかもしれないが、今まで行ったお好み焼きの店名はほとんど覚えてない。大阪のお好み焼き屋の名前なんていちいち覚えてられないもん。乱立してるからね。

俺にとっては美舟さんが大阪代表のお好み焼き屋さんだと思ってる。
勿論自分で焼かさせてくれるし、お独り様用の鉄板テーブルもある。2階もあるが階段がかなり老化してヤバい。(2階に上がった事のある人はかなりの通)「マヨネーズ欲しい」とか「七味は?」って聞くと、平均年齢70歳くらいのおばちゃん店員たちがエプロンのポケットから、使い切りサイズを出してくれる、ドラえもんみたいだ。

大阪で有名なお好み焼きは他にもある。カウンターにずらりとそびえる鉄板で、店主がそれぞれの注文を焼いてくれる某有名店。この店の店主はこだわりがあって、焼いてる最中に客が「もう焼けてるんじゃない?」なんて触ろう物なら烈火の如く怒る。この店の噂を聞いて「お好み焼きなのに窮屈なのはごめんだよ」って思っていたのに、ツレに「面白そうだから行こうぜ」連れて行かれた。噂通り、客が目の前の鉄板のお好み焼きをちょっとでも触ろうものなら怒られてる。その時、俺の中で「たかがお好み焼きで何を偉そうにしてんだこいつ」って感情がわき上がり、目の前のお好み焼きを店主の目を盗んでテコを使って一気にひっくり返してやった。「うわぁ!なにしてんねんお前!」ってツレ。それに気づいた店主が俺の目の前に立ちこちらを睨んでる。文句言ってきたらそのまま金払って出てったるって思って睨み返す俺。怒られると思いきや意外な一言が・・・。
「私を信じてください」

その後はなんか罪悪感で一杯で、お好み焼きを味わうっていうよりは、早く食べてこの店を出なきゃって焦燥感に煽られた気がする。
その後「先代が亡くなってしまった」ってニュースをツレからの情報やTVで知る。
違うとは思うけど、なんか俺のした行為のせいでガックリきたからかなって、ちょっと落ち込んだ。
中島らもさんのエッセイで、らもさんがこの店で俺と全く同じ行為をこの店でした事が記載されてた。しかも店主の対応もほぼ同じ。
良かった、俺だけのせいじゃなかったんだ・・・。

大阪人にお好み焼きエピソード聞くと、かなりいろいろあると思うから、是非身近な大阪人に聞いてみてくれ。
理解はできないと思うけどさ。


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