春は気候や環境の変化などにより、心身のバランスが乱れやすくなる季節です。
春の不調に負けないためにも、「トリプトファン」を摂って、気分や感情をコントロールして心の安定を保つ脳内ホルモン「セロトニン」を増やしましょう。
セロトニンとは?
別名、しあわせホルモンと呼ばれる脳内ホルモンで、「ノルアドレナリン(神経を興奮)」や「ドーパミン(快感を増幅)」と並び、感情や精神面、睡眠など人間の大切な機能に深く関係する三大神経伝達物質の1つです。脳は緊張やストレスを感じるとセロトニンを分泌し、ノルアドレナリンやドーパミンの働きを制御し、自律神経のバランスを整えようとします。ストレスが溜まっている時に温泉に入ったり、リラックス効果のある体操などを行ったりすると癒されるのは、セロトニンが増え、ノルアドレナリンが減少するからです。しかし、ストレスや疲労が溜まると、セロトニンの分泌量が減ったり、働きが制限されたりしてしまいます。
セロトニンを増やすには・・・
セロトニンは脳内で作られますが、その材料として必須アミノ酸のトリプトファンが必要となります。ただし、トリプトファンは体内で生成できないので、食事から摂らなければなりません。食べ物から摂取したトリプトファンは、日中は脳内でセロトニンに変化し、夜になると睡眠を促すメラトニンに変化します。そのため、トリプトファンが不足すると、不眠症や睡眠の質の低下を引き起こす原因となります。また、トリプトファンは、糖質、たんぱく質、脂質を代謝・分解する上で必要なビタミン(ナイアシン)の合成も行います。
トリプトファンが多い食材は?
トリプトファンが多く含まれている食材は主に、豆腐・納豆・味噌・しょうゆなどの大豆製品、チーズ・牛乳・ヨーグルトなどの乳製品、米などの穀類などです。その他、ごま・ピーナッツ・卵・バナナにも含まれています。また、肉や魚にもトリプトファンが多く含まれますが、動物性たんぱく質に含まれるBCAAというアミノ酸はトリプトファンを脳へ取り込みにくくするため、植物性たんぱく質から摂ることをおすすめします。ただし、動物性たんぱく質も「炭水化物(穀類、いも類、果物など)」と「ビタミンB6*」を一緒に摂ると、血糖が上昇してBCAAが筋肉に作用するため、脳内でのトリプトファンの合成が促進されます。つまり、バランスよく主食・主菜・副菜を揃えて食事をすることで、必要とされるトリプトファンは摂取できます。
*ビタミンB6・・・鮭、さば、さんまなどの魚類、鶏胸肉やささみなどの脂身の少ない肉類、酒粕や抹茶、ごまなどに豊富に含まれています。
トリプトファンはどのくらい摂ればいいの?
摂取量の目安は、体重1kgあたり2mg程度。体重が60kgの方の場合は120mgとなります。
食品中のトリプトファン含有量(可食部100gあたり)
白米 | 82mg |
玄米 | 94mg |
パスタ(乾麺) | 140mg |
そば(乾麺) | 170mg |
鮭 | 250mg |
カツオ | 310mg |
マグロ赤身 | 270mg |
豚ロース | 280mg |
鶏むね肉 | 270mg |
木綿豆腐 | 98mg |
豆乳 | 53mg |
上記以外でも、牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品にも含まれています。
《注意》
※既に疾患をお持ちで食事療法を行っている方は、主治医の指示に従ってください。
※サプリメントを摂っている方は、過剰摂取にならないよう用法・容量をしっかり把握し服用してください。
おすすめレシピ
★ 豆腐のドライカレー (豆腐:トリプトファン)+ごはん(炭水化物) ★ 豆乳ビシソワーズ (豆乳:トリプトファン)+鮭のムニエル(鮭:トリプトファン、ビタミンB6)+ごはん(炭水化物) ★ 塩麹の野菜パスタ (パスタ:トリプトファン)+サーモンのマリネ(鮭:トリプトファン、ビタミンB6) ★ パスタ エファジョーリ(パスタ:トリプトファン) ★ 鮭と具だくさんの粕汁(鮭:トリプトファン、ビタミンB6)+酒粕(ビタミンB6) |
その他のおすすめ食材「バナナ」
トリプトファンの含有量は100g中15mgとそれほど多くない食材ですが、セロトニンの材料として必要となるトリプトファン、ビタミンB6、炭水化物のすべてを含んでいるため、効率的にセロトニンをつくることができます。イライラしやすい時や、睡眠不足の時などにおすすめな食材です。ただし、カロリーが高いので、夜ではなく日中に摂るようにしましょう。また、欠食がある方は、バナナと一緒に牛乳を摂るとさらに効果的です。お試しあれ!