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猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

使用済み核燃料の再処理は経済合理性に反する、MOX燃料はウラン燃料の10倍も高い

2022-04-07 23:14:28 | 原発を考える

2日前、朝日新聞28面(社会面)下段に『MOX燃料20年で倍増』という記事が載った。どうも話題にならなかったようだが、注目すべき記事である。MOX燃料がどれだけかかるかを契約上の守秘義務として公表していないからだ。

記事によれば、貿易統計データから価格を推定したところ、通常のウラン燃料が一体あたり1億2千万円のところ、MOX燃料が10億1千万円であることが判明したという。

MOX燃料とは、プルトニウム酸化物(PuO2)とウラン酸化物(UO2)を混ぜ合わせた原発用核燃料のことをいう。原子炉の使用済みウラン燃料中にプルトニウムが約1%含まれる。このプルトニウムを再処理にして取り出し、ウランとを混ぜてプルトニウム濃度を4から9%に高めた核燃料である。

日本には技術的な問題があり、まだ青森の再処理工場が稼働していないので、日本の使用済みウラン燃料をフランスで再処理してもらっている。したがって、MOX燃料の価格とは再処理と加工の費用である。それでは、これで、どれだけの電力がえられるのだろうか。もとのウラン燃料から得られるエネルギーの12%だけ増加するという。このことの意味は、ウラン燃料を12%だけよけいに買えば、10倍の価格のMOX燃料を使うのと同じ電力が得られるということだ。

MOX燃料を使えば使うだけ損していることになる。

調べてみると、MOX燃料は高いことは、岩波書店の月刊誌『科学』の2月号の巻頭エッセイでも指摘されている。

《日本は,その高速増殖炉計画がとん挫したため,フランスに倣って,再処理で分離したプルトニウムをウランと混ぜて混合酸化物(MOX)燃料として普通の原子炉で燃やす計画だ。たとえうまくいってもMOX燃料利用コストは,普通のウラン燃料を使った場合と比べ,1桁大きくなる。》

朝日新聞の記事はこのエッセイを裏づけている。朝日新聞が価格推定に利用したのは、昨年9月に関電がフランスから輸入したMOX燃料である。その1年前に、関電が使用済みウラン燃料をフランスに送り、11月から処理加工を始め、8か月後の昨年7月にMOX燃料が完成し、輸入したものである。日本でMOX燃料を作ることができないだけでなく、フランスでも大変な作業なのである。イギリスはすでにMOX燃料の生産をやめている。

経済合理性だけでは、MOX燃料を使うことが説明できない。MOX燃料はウラン燃料と色々な特性が異なる。たとえば、ウランと比べ、プルトニウムは、遅い中性子をぶつけても核分裂反応が起こりにくい。したがって、密集させる必要があるが、密集させると高温になる。爆発的に核分裂連鎖反応が進まないために、これまでのウラン燃料用原子炉をプルサーマル炉に変更しなければならない。

現在、プルトニウムを使用済み核燃料から取り出し保有するという政策を続けているのは、核兵器保有国4カ国(仏・ロ・中・印)と、日本だけである。英国は2022年に再処理を終了することになっている。

したがって、日本は核保有国になりたいのかもしれないと世界から疑われている。この疑われている状態が、自民党内の核武装派にとって居心地がいいのだと思う。

経済合理性を主張する河野太郎は昔から核燃料サイクルのウソを追求し、使用済み核燃料の再処理に反対してきた。河野太郎が自民党の総裁選に負けたということは、核武装派が自民との主流派になっているのだろうか。

岸田文雄首相は昨年9月18日の日本記者クラブでの総裁候補者討論会で、「核燃料サイクルを止めてしまうと、除去される高レベルの核廃棄物はそのままということになる。再処理すると廃棄物の処理期間は300年と言われている。高レベルの核廃棄物を直接処理すると10万年かかると言われている」と意味不明でバカげた発言をした。プルトニウムは半減期が非常に長いから単位時間に発生する放射線の量はきわめて小さい。核廃棄物の中の放射性物質といわれるものは、半減期が数年から数十年と短いから危険なのだ。

プルトニウムの問題は、濃縮すると起きる。臨界半径を越えてプルトニウムが密に集まれば核分裂連鎖反応が起きて、一気に爆発する。核兵器である。経済合理性を無視して、わざわざ再処理してプルトニウムの濃度を高めるのは、核兵器を作りたいという下心をチラつかせたいだけである。

使用済み核燃料の再処理に反対する河野太郎のほうがまともである。

ロシアがウクラナイへ軍事侵攻するにあたって、ウクラナイ側に立つ国に必要となれば核を使うかもしれないと脅している。このため、アメリカ政府もNATOも援軍をウクライナに送ることをためらっている。すなわち、アメリカやNATOの核兵器は何の役にもたっていない。それなのに、日本はなぜ核武装をするぞと世界を脅したいのか。まるで、北朝鮮のまねではないか。

日本は核武装するのか、平和憲法のもと、非核を守り続けるのか、正面を切って論戦するときがきていると思う。


ウクライナ国民の不幸に乗じた原発再稼働の動きに怒りを覚える

2022-03-15 21:58:49 | 原発を考える

ネットによる情報では、きょう3月15日、自民党の電力安定供給推進議員連盟や日本維新の会が政府に原発の再稼働を進めるように要請したという。理由は、「ロシアによるウクライナ侵攻で原油価格や電気料金が上昇し、安定的な電力供給に影響を及ぼす恐れがあるから」という。

今回のウクライナ侵攻で明らかになったことは、原発が攻撃の対象となることである。原発は地上に固定されているから、ミサイル攻撃から防ぎようがない。原発を所有していること自体が、いつでも、脅しの対象となるのである。核攻撃の前哨戦として、原発攻撃があるのである。

日本はエネルギー資源の多くを中東、東南アジア、オーストラリアに頼っている。したがって問題は原油や天然ガスの上昇であるが、戦渦の中のウクライナ国民の辛苦を思うとき、それは仕方がないことではないか。世界がロシアへの経済封鎖にでるのは当然ではないか。ウクライナの国民が、空爆で死ぬか、水と食料を断たれて餓死するか、というときに、日本だけが、これまでと同じ日常が送れるというのも奇妙なことである。

それでは、きょうあすという次元より、もう少し長い次元で、エネルギー問題を考えてみよう。

現在、原発より安くて済むエネルギー源、水力発電、風力発電、太陽光発電の技術がある。いずれも、海外からエネルギー資源を輸入する必要はない。ようは、これらを合わせて利用する電力システム構築が、日本では遅れているだけである。

電力業界は地域独占だから変化を好まない。新しい電力システムに投資するより、政治家にわいろを送って、この地域独占と従来の発電の仕方を守ったほうが得だと考える。自民党や日本維新の会に働きかけるだけでなく、電力業界は労働組合を使って、国民主党や立憲民主党にも働きかける。

そんなわけで、電力業界は政府の保護をうけている。国税庁の賃金労働者の年俸調査では男女とも突出して電力業界の給料が高いのである。金融業よりも高いのである。

ウクライナ国民に訪れた危機と混迷に乗じて、電力業界のエゴを通そうとする、自民党や日本維新の会の動きに、私は反対する。


ウクライナの危機が11年前の3月11日の思いを新たにする

2022-03-11 23:06:13 | 原発を考える

きのうから、私は昼間はダウンを着ず、替え上着で外にでている。いっぽう、ウクライナではまだ雪がちらついている。雪がちらつくなかを、人びとが戦渦から逃げ惑っている。

11年前の横浜の天気を詳しくは覚えていない。寒かったか暖かったか思い出せない。3月11日前後はずっと空がどんより曇っていたような気がする。岩手、宮城、福島は雪がちらついていたと覚えている。

東日本大震災の日、私の住んでいる7階の部屋は大きく揺れた。長く揺れ続いた。積み上げていた本や書類は崩れ落ちた。私の妻は買い物からちょうど戻ったときで、外にいた。妻は、私たちの住んでいる建物が大きく揺れるのが見て、恐怖で立ちすくした。

その日から何週間もすべての番組が自粛で、津波で家が流される映像と福島第1原発の報道ばかりだった。流されるコマーシャルは公共広告ACジャパンだけだった。

福島第1原発が全電源を喪失して原子炉を冷却できなくなった。放射性物質の漏れが始まった。避難範囲が日増しに増えた。枝野幸男は「ただちに人体に害がありません」とテレビで言っていた。

原子炉に重大事故が起きたとき、気体の放射性物質がまず大量に放出される。最初は放射性アルゴンガスであるという。遅れて、気体になったカリウムやヨウ素が吹き出る。そうチェルノヴィリ原発事故を研究した人から教えられた。

放出された放射性気体はすぐ広がらないでかたまりになって風に吹かれて飛んでいくという。プルームといわれる。爆発の危険がなければ、すぐ外に飛び出して逃げてはいけない。放射性気体のかたまりをやり過ごし、飛んでこない方向に避難しないといけない。それなのに、福島の人びとは風下に逃げた。放射性気体が飛んでいく方向に逃げた。

そう、11年前に、どう逃げるかのガイドをだれも行わなかった。避難経路は気象条件によって異なる。事前にこう逃げなさいと一意的に決められない。責任をもって、避難を指揮する人がいる。避難バスを用意し、歩いて逃げなくても良いようにしないといけない。政府は原発を再稼働しているが、重大事故の際の避難体制を整えていない。

いま、ウクライナはミサイルが飛びかうので、逃げるのも大変である。脱出用のバスを用意しても停戦が守られないからである。

脱炭素だとかエネルギー資源の安定確保だとかいって、原発をおし進める人びとが、現在の政権の中にいる。だが、原発より再生エネルギーのほうが安くなっている。経済的理由はなくなっている。現在、原発をおし進める理由は核兵器を開発するためしかない。

しかも、今回、ウクライナへの軍事侵攻で明らかになったのは、原発が戦略的攻撃のターゲットになるということだ。核兵器使用のまえに使う恫喝が、原発の破壊である。原発がエネルギーの安定確保どころか、戦争では直接に安全の危機を招く。原発への攻撃は防ぎようがない。

ウクライナの軍事侵攻は、原発の新たな問題を引き起こしている。


欧州委員会が原発への投資を優遇する草案を作ったことを非難する

2022-01-04 00:28:30 | 原発を考える

けさの朝日新聞によると、2日前の1月1日に欧州委員会(EU Comission)が原子力と天然ガスを環境にやさしいとする草案を発表した。具体的には、原子力と天然ガスをEU "sustainable finance taxonomy"に加えるというものである。これは、単なる言葉としての分類ではなく、これによって、EUにおける原発や天然ガス発電への投資を、太陽光発電や風力発電と同じく優遇するという草案である。

草案は、この追加を脱炭素に向けた移行措置とするが、2045年まで原発の新設に投資を優遇するいう。事実上、移行措置でない。

とんでもないことだ。ドイツ、オーストリア、スペインの各政府が反対を表明している。グリーンピースなどの環境団体も反対を表明している。

私はこの数年の脱炭素の動きは気違いじみたところがあり、何かの陰謀ではないかと、気になっていた。自動車産業の既存の勢力図を塗りかえるだけでなく、フランスの原発産業(国有)の保護や、石油・天然ガスの高騰を防ぎロシアの影響力を抑え込むなどの政治的意図をもって、二酸化炭素排出の急激な削減と原発再評価の動きがでてきたのだと思う。

大気中の二酸化炭素は、現在、1700年代の濃度の2倍にまだ達していない。二酸化炭素は植物の生育上欠かせないものである。

いっぽう、原子力(核分裂連鎖反応)の利用で、大気中のトリチウム濃度は一時的に1940年の100倍に達した。現在は、核実験は地下で行い、原発のトリチウムは海に流しており、大気中の濃度は20倍程度である。原子力を利用する限り、核分裂連鎖反応で放射性物質が副産物として作られる。放射性物質はごく少量でも、生物の遺伝子に確率的にダメージを与える。

いわゆる原発の安全性は、核分裂の際、放射される中性子線が遮蔽されているということをいうのであり、副産物の放射性物質については打つ手がないまま、この50年、原発が運用されている。それに加え、スリーマイル島原発重大事故やチェルノブイリ原発重大事故は原発の点検時における人為的ミスで起きている。福島第1原発重大事故では、設計のミス、施工のミスが見いだされ、それに加えて、緊急事態の訓練が事前になかったことも指摘されている。

安全性を無視し、経済的政治的理由を優先して、今回の欧州委員会から草案がでてきた。日本で福島第1原発重大事故が風化しつつあるなか、これを他山の石とせず、日本の各政党が、どのような見解をだすかが、いま問われていると私は思う。

日本の政府組織では、原発を小型化すればよいとか、高速炉を作ればよいとか、核融合炉を開発すれば、良いとか言っているようだが、これは全部誤りである。

放射性核廃棄物は、発生する電力に比例して原発からでるのだから、1つ1つを小型化しても、電力源として頼る限り、放射性核廃棄物は大量に作られる続ける。

高速炉は各国で開発に失敗しているが、放射性核廃棄物を減らすための効果は全く無く、日本政府がプルトニウムをため込む理由として掲げているだけで、いずれ、アメリカをはじめとする欧米各国に批判されるだろう。

核融合炉はいまのところ全く実現の見込みがないから批判されないだけで、原発よりも制御しがたいものになるだろう。

二酸化炭素は有害で、放射性核廃棄物は有害でないという見解は、まったく誤っている。


脱原発、再処理、海洋放出を衆議院選の争点に

2021-09-07 22:41:58 | 原発を考える

政治評論家の田崎史郎は、自民党総裁選で一番人気の河野太郎が勝利するのは難しいだろうと言う。それは、河野太郎が原発稼働と使用済み核燃料再処理に反対しているからであると言う。自民党の幹部たちにとって、いままで選挙に勝ってきたのは自民党が既得権集団の利権を守るからであり、河野を総裁に据えると自民党が壊れると思っているからだと言う。

原発の稼働は日本の経済にとって必要ではない。原発はもっとも安い発電方法ではなくなっている。原子爆弾を日本が製造する原料と技術を確保するために、原発の稼働が必要だという自民党幹部もいるが、私には、それも必要と思えない。

原発は安全な技術ではなく、無理して稼働すべきではない。

きょう、9月7日、IAEA(国際原子力機関)のエブラール事務次長らが、福島第1原発事故のトリチウム水放出の安全性などについての検証作業を開始した。

IAEAは、原子力の平和利用を推進する機関である。トリチウム水を放出することでなりたつ原子力利用を推進する機関であり、そんなものが、安全性を宣言しても、何の意味ももたない。

トリチウムは自然崩壊する放射能物質である。したがって、自然界にほんの微量しか存在しない物質である。アメリカ、ソビエト、中国が核兵器開発の実験を繰り返したために、大気中のトリチウム濃度が、一時、以前の200倍になった。原発が平和利用だからといって、大量のトリチウム水を海洋に放出して、良いわけでない。トリチウム水は、どこかに閉じこめて、自然に崩壊するのを待つものである。トリチウムの半減期は12年であるので、1000分の1になるには、120年待てばよい。

東京電力は1km沖にトリチウム水を放出するという。沿岸から1kmというと、防波堤までの距離である。この距離では水深は10mを越えない。じつは、水深10mで1気圧、水圧が増す。圧力を加えて海底深部にトリチウム水を放出することを、はじめから、考えていず、表層に放出するつもりでいる。大量のトリチウム水が、福島、宮城の沿岸に漂流することになるだろう。

それは、良いことではない。立憲民主党は、今度の衆院選で、脱原発、再処理反対、トリチウム水放出反対の立場を明確に打ち出すべきである。

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