猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

被告人の主張、津久井やまゆり園殺傷事件第9回公判

2020-01-29 23:16:49 | 津久井やまゆり園殺傷事件

1月27日 横浜地裁で、津久井やまゆり園殺傷事件の第9回公判があった。弁護側の被告人質問と検察側の被告人質問が行われた。これまでに、2回の審理がキャンセルされ、来週の2月4日の審理もキャンセルされることになった。弁護側が被告の発言の機会をへらすために、このようなキャンセルが続くのではないかの疑義を覚える。

第9回公判のメディア各社の報道は非常に簡単なものになっている。それでも、総合するとかなりの情報が得られる。

27日に、弁護側の被告人質問で下記のやりとりがあった。

(1)被告は「匿名裁判というのが、重度障害者の問題を浮き彫りにしている。(重度障害者は)人の時間と金を奪っている。施設に障害者を預けているのは家族の負担になっている証拠だ」と述べた。

裁判で被害者を匿名にすることに、確かに重度障害者への差別意識がうかがえるが、匿名に反対している被害者の遺族もいる。裁判所が被害者を匿名にしたことが、「施設に障害者を預けるのが家族の負担になっている証拠」とは言えない。

(2)「大麻の使用によって思い浮かんだ一番良いアイデアは何か」との質問に被告は「重度障害者を殺害した方が良いということ」と答えた。

アメリカ精神医学会の診断マニュアルDMS-5には「大麻誘発性精神病障害は大量の大麻使用直後に発症し、通常、被害妄想、顕著な不安、情動不安定、離人感を伴う。障害は通常1日以内に寛解するが、症例の中には2~3日持続するものもある」とある。

被告の「事件の3年ほど前から大麻を週2~4回ほど吸っていた」という程度で、「意思疎通が取れない人を安楽死さすのが正義である」という信念をもったという仮説は無理である。

いっぽう、検察側の被告人質問で下記のやりとりがあった。

(3)被告は2012年12月から3年あまり園で働いた。その経験から「重度障害者はいらない」という差別意識を抱くようになったとのべた。
 被告によると、障害者への同僚の接し方は「口調が命令的で、人として扱っていない」と思ったという。流動食の利用者もおり、「人の食事というより、流し込むだけの作業に見えた」。自らも食事を食べさせる際に利用者の鼻を小突いたことがあり、「しつけと思ったが改善しなかった」と話した。

津久井やまゆり園にどんな問題があったかは、別途、神奈川県知事のもとに委員会を組織し、調査が進められている。

(4)事件を起こした動機について、「重度障害者を殺した方がいいのだと、(社会に)気づいてもらえればと思った」と話した。会話など意思疎通のできない入所者を「できるだけ多く、殺そうと思いました」と説明した。

(5)意思疎通できないと どうやって判断したのかの問いに、被告は「部屋の様子やその人の雰囲気で判断した。部屋に何もないと、自分の考えを伝えられない人だと思った」と述べた。

(6)被告が拘束した職員から「入所者に心はあるんだよ」と言われ、「居心地がいい気はしなかった」が、それでも「人の心とは言えない」と思い、犯行を続けたと述べた。

(7)通報を恐れ、逃走を決意したが、それまでに刺した人数が少ないと思ったため、意思疎通可能かどうかを確かめずに刺したという。

(8)事件後に自ら出頭することで、そうした動機が「(社会に)伝わりやすいと思った」と述べた。なぜ伝わりやすくなるのか尋ねられると、「(自分が)錯乱していないことが(警察にも)分かるから」とした。

(9)「なぜ体を鍛えていたんですか」の問いに、「職員と取っ組み合いになると思っていた」と答えた。また、「職員の少ない夜勤を狙った」「拘束しやすい女性職員のいるホームから狙った」とも語り、職員を拘束する目的で拘束バンドやガムテープを事前に購入したことも含め、周到に準備した上で決行したことを明らかにした。

   ☆   ☆

本件と同じような思想信条からくる大量殺人は、2011年7月22日にノルウェーで起きた。

白人によるヨーロッパ社会が移民によって壊される、移民を受け入れるノルウェー労働党党員を殺すのが正義だという信念から、32歳のブレイビク(Anders Behring Breivik)が77人を殺害した。
首都オスロの政府庁舎で8人を爆死させ、ウトヤ島でノルウェー労働党青年部の集会に集まった10代の青年69人を射殺した。

このとき、極右思想が広まるとまずいと理由で、裁判を非公開にし、しかも、ブレイビクは統合失調症だとして、無罪にし、精神病院に閉じ込めようとした。被害者の遺族がこれに抗議し、結局、2012年に、殺人罪としての最高刑の判決が出された。ノルウェーでの刑法では、それが、禁錮最低10年、最長21年であった。

今回と同じく、ブレイビクは一貫して裁判で自分は統合失調症でないと主張した。

裁判所が極右思想が広まるとまずいとした根拠は、ヒトラーが、ミュンヘン武力革命で起訴されたとき、裁判をユダヤ人排斥思想の宣伝の場に使ったことによる。思想信条による確信犯を裁くとき、検察の弁舌能力がとても大事になる。うまくいけば、検察の弁舌で社会の差別意識を打ち壊すこともできると思う。公判は公開で被告との論戦の場にしないといけない。

津久井やまゆり園殺傷事件の被告をなぜ精神異常とするのか

2020-01-26 18:05:38 | 津久井やまゆり園殺傷事件


私は津久井やまゆり園殺傷事件の被告を異常な人間とみることに反対である。
被告は、自分より弱い者を目の前から取り除きたがる、どこにもでもいる弱者にすぎない。
意思疎通ができなく不幸な人生を送っている弱者を見たくないのである。
自分も弱者であることを認めたくないだけである。
昔からある、若者によるホームレス殺害事件と同じである。

メディアは、不倫した俳優を倫理に背むくと非難し、けっして、精神異常とは言わない。ところが、根底においてイデオロギー(思想)が絡む殺人犯の場合、正面から批判せず、精神異常と片付けてしまう。

被告の言っていることは、安倍晋三が言っていること、トランプが言っていること、自民党や公明党が言っていることと同じである。

メディアは踏み込んで被告を断罪すべきである。自民党や公明に投票する人間は、心において(霊において)被告と同罪である。

1月24日の横浜地裁第8回公判では、弁護人による被告質問があった。産経新聞のウェブサイトに、その詳しい傍聴記録があるので、以下に引用し、補足説明する。
   ☆   ☆   ☆
 弁護人「今、あなたはどこにいるか分かりますか」
 被告人「分かります」
 弁護人「どこですか」
 被告人「裁判所です」
 弁護人「なんの裁判ですか」
 被告人「障害者を殺傷した事件についてです」
 弁護人「あなたのしたことに間違いはありませんか」
 被告人「間違いありません」
 弁護人「その前に、この裁判について、弁護側がどのような主張をしているか知っていますか」
 被告人「心神喪失、心神耗弱(こうじゃく)による無罪を主張しています」
 弁護人「そのことについて、あなたはどう思いますか」
 植松被告「自分は心神喪失ではないと思っています」
 弁護人「正しい考えに基づいて行動したということですか」
 被告人「はい」
   ☆   ☆   ☆
弁護人は、被告が精神異常であることを立証しようと、被告人質問を続けたが、被告の主張は日本社会のどこにでも見られる「弱者に対するヘイト」である。
被告が殺傷行為をしたときと、考えを変えていなければ、当時、心神喪失でも、心神耗弱でもない。罪を犯すことで高揚していただけである。
   ☆   ☆   ☆
 弁護人「トランプ大統領をどう思いますか」
 被告人「勇気を持って真実を話していると思います。メキシコとの国境に壁をつくるというのも、いいことかどうかは分かりませんが、メキシコのマフィアはとても怖いのは事実です」
 弁護人「真実を話しているというのは…」
 被告人「かっこよく生きていると思います。すべてかっこいいと思いました。かっこいいからお金持ちなのだと思います」
 弁護人「そのトランプ大統領は重度障害者を殺していいと言ってますか」
 被告人「いえ、それは私が気付いた真実だと思います」
   ☆   ☆   ☆
トランプの主張をそのまま受け入れているのではなく、ポリティカル・コレクトネス(PC)に反対していること、すなわち、弱者に媚びないことを、被告人は評価しているのだ。まさに保守本流の考えかただ。
   ☆   ☆   ☆
 弁護人「意思疎通が取れない人はなぜ安楽死しなければならないのでしょう」
 被告人「無理心中、介護殺人、社会保障費、難民などで多くの問題を引き起こす元になっているからです」
   ☆   ☆   ☆
被告の言う「安楽死」は「苦しめずに殺害する」ことで、競馬の馬が骨折すると、人間が日常的にやっていることである。人間が人間にたいしても、75年前には「優生学」や「国民共同体」思想のもとに、「安楽死」を行っていた。ここでは、本人の生きたいという意思が無視されている。
   ☆   ☆   ☆
 弁護人「重度障害者にも親、兄弟がいます。その人たちの気持ちを考えたことはありますか」
 被告人「自分の子供を守りたいという気持ちはわかりますが、受け入れることはできません。なぜなら、自分の金と時間を使って面倒を見ることができないからです。彼らの生活は国から支給される金で成り立っており、家族の金ではありません」
 弁護人「それでも、愛情をもって接している家族もいるんですよ」
 被告人「気持ちはわかりますが、他人の金と時間を奪っている限り、守ってはいけないと思います」
   ☆   ☆   ☆
 被告人「安楽死には家族の同意があればいいと思っていましたが、できない人もいると思いました。本人は意思疎通が取れないので必要ありません。問題は家族の同意です。愛している家族はきっと同意できないと思います。でも、金と時間を支給されている限り、それは違うと思うんです」
 弁護人「家族が愛していても死ぬべきだということですか」
 被告人「その通りです」
 弁護人「ヒトラーの影響はありますか」
 被告人「ありません。安楽死のことを思いついてから、ヒトラーのことを知ったからです。ユダヤ人の虐殺は有名ですが、障害者のことは知りませんでした。障害者を虐殺するだけなら間違っていなかったと思います。ただ、虐殺した障害者の中に軽度の方が含まれていたらそれは間違っていたのかもしれませんが…」
   ☆   ☆   ☆
 弁護人「安楽死を認めると世の中はどうなると思いますか」
 被告人「生き生きと働ける社会になると思います。仕事をしないから動けなくなり、ボケてしまうと思います。仕事をすることが重要です」
 被告人「働けない人を守るから、働かない人が生まれるんだと思います。国から支給された金で生活するのは間違っています」
 被告人「日本が借金だらけで、財政が苦しいことを知ったからです。お金が欲しくて、世界情勢を調べるようになりました。そうしたら、テレビやインターネットで国の借金のことを知ったんです。安楽死させると、借金を減らせると思いました」
   ☆   ☆   ☆
まさに、安倍晋三や自民党が言っていること、「一億総活躍」や「自助の原則」と同じではないか。
   ☆   ☆   ☆
 弁護人「(重度障害者を殺害すると)事件前、何人ぐらいの人に話したのですか」
 被告人「50人ぐらいはいたかと思います。半分以上の方に同意や、理解をしていただいたと思います」
 弁護人「それは、どういう反応をみて?」
 被告人「一番笑いが取れたからです。真実から笑いが起きたと思っています」
   ☆   ☆   ☆
被告の言っていることは、本当だと思う。日本社会の現状はこんなものである。
検察の調書では、少数だが、被告の発言から危険を察知して、津久井やまゆり園に連絡し人々がいる。これを無視した園側にも本件の責任があると思う。
   ☆   ☆   ☆
 弁護人「少し繰り返しになるが、あなた以外の人から事件について『こうしろ』と言われたことは」
 被告人「ありません」
   ☆   ☆   ☆
この質問は、被告に幻聴があったという言葉を弁護人が求めてのものである。
   ☆   ☆   ☆
 弁護人「あなたは何かほしいものがありましたか」
 被告人「お金です」
 弁護人「お金を得るためには何をすればいいですか」
 被告人「人の役に立つか、人を殺すかです」
 弁護人「殺すとはどういう意味ですか」
 被告人「詐欺をしたり、覚醒剤を売ったり、安い賃金で働かせたりすることです」
 弁護人「安い賃金で働かせるというのはどういう意味ですか」
 被告人「正当な報酬ではないということ。搾取するということです」
   ☆   ☆   ☆
 弁護人「環境については」
 被告人「深刻な環境破壊による温暖化防止のために、遺体を肥料にする森林再生計画に賛同します」
 弁護人「遺体とは」
 被告人「人間の遺体です。捕まってから考えました」
 弁護人「人間の死体をこういうことに使うのは…人間であればよいのですか」
 被告人「はい」
   ☆   ☆   ☆
東日本では土葬という習慣もあり、「遺体を肥料にする森林再生計画」だけで、被告が精神異常だとは言えない。弁護人は、被告に異常な死体愛好があるという裏付けのために、この質問をしたのだと思う。

被告は、思想信条にもとづく確信犯で、正面切って弾劾すべきである。明日から始まる、検察によるレベルの高い被告人質問に期待したい。

津久井やまゆり園殺傷事件公判で私たち社会の偏見・不正を裁け

2020-01-24 23:31:34 | 津久井やまゆり園殺傷事件

きょう、1月24日、津久井やまゆり園殺傷事件の第8回公判があった。
本来、きょうは第10回公判になるはずだった。
すなわち、1月22日23日の公判が取り消しになったのである。

なぜ、取り消しになったのかを、メディアは報道していない。横浜地裁はその理由を明らかにしていない。

かってに私が想像すると、1月22日の公判前のJNNとの面会で、被告が、「自分は当時 心神喪失であったのではない、それで無罪や減刑を求めていない、弁護人を解任したい」と述べたからではないか。弁護人が、急遽、8回目に予定されていた被告人質問の延期を地裁に申し出たのではないか。

メディアには経緯を調べて明らかにしてほしい。

とにかく、きょう、第8回公判が、被告と弁護人とが対立したまま、始まった。
裁判は 真実にもとづいて おこなわれるべきで、弁護人は、被告の意志を無視して、刑を軽くするための法廷戦術に走るのは許されない、と私は考える。
被告は弁護人を解任すべきである。あるいは、弁護人は辞任すべきである。

弁護人は、「被告が事件当時、大麻精神病などの精神障害だった疑いがあり、心神喪失や耗弱の状態だったとして無罪か減刑を主張」しているという。

「精神障害」を、現在、日本精神神経学会では「精神疾患(mental disorders)」と呼んでいる。
mental disordersの多くは情動の不安定をひきおこすものであり、心神喪失状態に陥るものではない。また、乱射できる自動小銃を持っていないかぎり、心神喪失状態で大量殺人はできない。たとえば、酒で酔っぱらった人が、この人を殺すべきか否かを問いながら、選択的に殺すことはできない。

「大麻精神病などの精神障害だった疑い」という曖昧な表現で、弁護人が「無罪か減刑」を勝ち取れるはずがない。「など」とか「疑い」ではなく、「大麻精神病だった」ことを証明しなければならない。

「大麻精神病」という診断名は確かにある。アメリカ精神医学会(APA)の診断マニュアルDMS-5では、次の診断基準をかかげている。

A.以下の症状のうち1つまたは両方の存在
 (1) 妄想
 (2) 幻覚
B. 病歴、身体診察、臨床検査所見から、(1)と(2)の両方の証拠がある。
 (1) 基準Aの症状が、薬物中毒または離脱の経過中またはすぐ後に、または大麻に曝露された後に現れたもの
 (2) 含有された物質・医薬品が基準Aの症状を作り出すことができる
C. (省略)
D. その障害は、せん妄の経過中にのみ起こるものではない。
E. (省略)

AからEまでがすべて満たされたとき、「大麻精神病」という。
被告に継続的な「幻覚」があったという話しは聞いていない。また、被告が、意思疎通の取れない障害者を安楽死させれば「(日本の)借金が減り、みんなが幸せに生活できる」と思ったことは、「妄想」ではない。単に「信念」である。
「妄想」とは、誰もが共有できる客観的「事実」に反する認識を言う。自分の意思にともなう「思想信条」がいかに極端であろうと、それを「妄想」とは言えない。

したがって、弁護人の主張が裁判で通るはずはなく、形式的に被告を弁護しているふりをしているだけである。

それよりも、(1) 被告の主張が現在の日本にある1つの「思想信条」であり、それが許されないなら、そういう「思想信条」をもっている人々すべてをも平等に裁かないといけないとするか、(2) 人を大量に殺したからといって、その実行犯を殺すことはできない、牢に閉じ込めて自分の行為を悔い改めさすべきだ、とするかが、弁護人の取ることのできる弁護であると思う。

1月24日の公判での被告の主張をここでまとめてみよう。

「(裁判で)責任能力を争うのは間違っている。自分は責任能力があると考えています。」
事件の1年ほど前から「社会に役立つことをしてお金を得よう」と考えた。
やまゆり園職員として働き、利用者の家族が疲れ切っていると感じていた。
日本の財政が借金だらけだと知り、「重度障害者がお金と時間を奪っている」と思った。
「(重度障害者が)無理心中や介護殺人、社会保障や難民といった多くの問題を引き起こしている」。
「働けない人を守るから、働かない人が生まれる。支給されたお金で生活するのは間違っている」。
意思疎通の取れない重度障害者を安楽死させれば「(国の)借金が減り、みんなが幸せに(ぜいたくな)生活できる」と思った。
障害者を殺害すれば人の役に立ち、お金がもらえると考えた。
 
じつは、同じように、私のような老人にたいしても「死ねばよい」と日本社会の一定層が考えている。それを財務省が煽っている。横浜市の公立中学校では、夏休みに税務署の公募作文を生徒全員に書かす。私のNPOで指導している子どもの一人が、「日本は若い世代の1人が老人3人を養う社会になるので、年寄りは早く死ねばよい」と書いた。確かに、財務省はそう受け取られることをウェブサイトに書いている。

隠れトランプのように、被告のような意見の持ち主が日本の社会に存在しており、なにかの拍子に表にでてくる可能性が常にある。

どうすれば被告の「思想信条」を裁けるか、あるいは、どこまで、被告の「思想信条」を裁いてよいのかが、今後の公判の課題である。
少なくとも、「日本が借金をしているのは、障害者や老人がいるかではなく、政権維持のため、保守政治家が支持基盤の企業家にお金をばらまいているからだ」と検察は被告に言うべきではないか。

[追記]
弁護人がよく精神疾患を心神喪失の根拠とする。これはやめてほしい。
そのような行為が、精神疾患に対する偏見を生む。そして、精神疾患の人間が生きていく場所を奪うことになる。
じっさい、軽い精神疾患者が共同で住むグループハウスを建てようとすると、地域住民の反対運動が起きて建てられなくなる。
事実は、精神疾患患者は犯罪を行う確率は健常者より少ない。そして、グループハウスには精神疾患患者をケアする担当者が同居する。
にもかかわらず、地価が下がる、子どもに危害が加えられる、と住民は反対の罵声を浴びせる。

津久井やまゆり園殺傷事件の被告が弁護人を解任したい

2020-01-22 21:17:50 | 津久井やまゆり園殺傷事件

きょう1月22日で津久井やまゆり園大量殺傷事件の公判は8回目となる。今週の月曜日から弁護側の陳述がはじまっている。

この中で、けさの30分のJNNの面会で、被告が弁護人を解任したいと言った、とTBSが報道した。被告は、自分が大麻で心神喪失だったと主張してはいない。謝罪の気持ちを表したいから小指をかんだ、と言ったという。

最近、刑を軽くするための法廷戦術を優先させる弁護人が多い。ゴーンの特捜事件でも、大津の園児殺傷事件でもそうだ。そうではなく、弁護人は被告の主張を代弁するのが原則である。

裁判では、第1に、事実の認定である。第2に、それが社会的に許されるのか、許されないのかである。第3に、犯した行為につりあう刑罰はなにかである。

本件の被告は、殺傷した事実を認めているので、どのような意味で謝罪しているのかも、焦点になる。

「重い障害者は社会にいらない、不幸をもたらすだけだ」と主張しているのは、被告だけではない。だから、本殺傷事件は、本施設を利用していない、多くの他の障害者にたいしても、大きな恐怖を与えた。この裁判は、「重い障害者を殺害することが社会正義である」を裁かないといけない。被告が心神喪失だから、異常だから、過激だから、で済ませてはいけない。

きのうの公判で、弁護側が3人の医師の調書を読み上げたという。

毎日新聞 《2016年2月に措置入院した。2人の医師が「大麻精神病」「妄想性障害」などと診断しており、その調書も読み上げられた。》

時事ドットコムニュース 《一方、措置入院の際に被告を診察した医師の調書も朗読され、大麻による気分高揚が妄想の拡大に影響したと指摘した。》

産経新聞 《診察した医師の一人は、植松被告を「大麻精神病」と、「非社会性パーソナリティー障害」と診断。植松被告の「障害者を抹殺する」という思想は「被告の人格に根付いていると考えられる」としながらも、衆院議長に手紙を差し出すという行動に、大麻が影響を与えた可能性があるとの見方を示した。》と書く。

これだけでは、弁護側の主張はわからないが、医師の調書からは、「障害者を抹殺する」という思想は、「大麻」によって引き起こされたものではないとも読める。「大麻は気分の高揚に影響した」だけである。

私の経験からも、妄想には それなりの根拠がある。多くの場合、何らかの社会的通念が反映している。被告が措置入院になったとき、正常を装い、病院から出てきたと友人に語っているのを聞くと、「精神異常」だから、「過激思想」だから、では済ませられない。被告は自分を支持する人たちがいるとみている。

津久井やまゆり園殺傷事件の公判報道に望むこと

2020-01-17 21:30:42 | 津久井やまゆり園殺傷事件

津久井やまゆり園大量殺傷事件の公判は、1月8日が初公判で、きょう17日で第5回公判になる。予定では、25回の審理が開かれ、第26回公判の3月16日に判決が下される。

今のところ、遺族の処罰感情の報道はあるが、なぜ、人を殺していけないのか、また、被告は何を考えているのかの報道がほとんどないように見える。裁判員裁判というが、傍聴席数が限られていて、関心をもっていても、公判の様子が、見えてこない。民主主義社会では、公判が誰からでも見えるようにしないといけない。

その点で、ジャーナリズムの責任は重い。公判に参加しなくても書けるような記事ではダメだ。努力してほしい。

そのなかで、社会活動家、雨宮処凛の初公判報告は評価できる。

《植松被告の入廷に私は間に合わなかったので、その顔や表情を見ることはできなかった。しかし、見た人は一様に「ものすごく緊張している様子だった」と印象を語った。》
《重度障害者を「心失者」と勝手に名付け、日本の財政を救うために事件を起こしたのだとうそぶいていた植松被告は、法廷で裁判長に「ここまで理解できましたか」「事実と間違いありませんか」などと聞かれるたび、蚊の鳴くような弱々しい声で「はい」と答えた。》

被告は反省しているのだろうか。この態度の変化はどこから来るのだろうか。

雨宮は、被告は弱い者に強気でふるまい、権力など強い者の前ではひれ伏する「権威主義的」人間だろうと推定する。すなわち、反省してはいないと言う。

一方で、雨宮はつぎのようにも言う。

《裁判を傍聴して思ったのは、事件前、想像以上に急激に植松被告の精神状態が悪化していたことだ。》

これは、弁護側の冒頭陳述を聞いて、雨宮が感じたことである。公判で被告自身に語らせ、それを聞いて判断するしかない。最近は、刑を軽くすれば弁護側の任務を果たしたと考え、法廷戦術に走り、被告の意思を無視する弁護士が多い。これは避けてほしい。裁判長の判断で、被告に陳述させることができるはずだ。

第3回目の公判で、同被告の幼なじみで園の同僚の調書が読み上げられたが、これを報道しなかった新聞社があった。この調書は、重要な問題提起をしている。

時事ドットコムニュース《同年4月ごろ(殺傷事件の3ヵ月前)、措置入院から退院した植松被告と再会した際も、被告は共感を求めるように「実際、利用者要らなくね?」「豚とか牛殺して食うでしょ。重度の障害者も会話できなければ動物と一緒じゃん。金かけるの無駄じゃね?」と真顔で話した。危険を感じ、上司ら2人に相談。防犯カメラだけでは効果がないと伝えたが、事件を防げなかったと無念さを明かした。》
毎日新聞《不安を感じた職員が上司らに相談し、鍵を付け替えるなどして侵入を防ぐように求めていた。職員は調書で「防げなかったことが本当に残念でたまりません」と話している。》

上司の対応で事件を防げたのではないか、ということだ。

では、なぜ人を殺してはいけないのか。

モーセの十戒のひとつに、「人を殺してはいけない」(『出エジプト記』20章13節)というのがある。しかし、モーセは自分に背くものを殺す。モーセに従う者どうしでは「殺しあってはいけない」という教えである。

では日本の憲法はどうなっているのか。
憲法13条 「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」
第31条 「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」

憲法第13条では、「公共福祉に」反すれば、殺してもよいことになる。私は、これを現憲法の欠陥である、と考える。

本件の被告は、障害者は不幸をつくることしかできないとし、犯行予告の手紙を衆院議長に送りつけ、そして本当に事件を起こした。逮捕後も、重度障害者を「心失者」と勝手に名付け、日本の財政を救うために事件を起こしたと言い張っている。

条件なしに、人は人を殺してはいけない、と私は思う。人はたがいに対等なのである。かってに、他人を生きる価値がないとして、その生命を奪ってならない。障害者だけでなく、死刑囚や敵国人も殺してはならないのである。

ぜひ、検察はどういう論理で被告を弾劾するのか、または、被告はそれにどう反論するのか、公判に参加できない者のために、丁寧な報道を望む。