阿吽は、サンスクリット語の「ア(口を開いて発声)」と「フーム(口を閉じて発声)」のことで、それぞれサンスクリット語の最初と最後の字だそうです。日本語の五十音も「あ」と「ん」は最初と最後ですが、それは、サンスクリット語の文字表が参考にされてつくられているからだそうです。密教では、「阿」は一切の根源を、「吽」は一切の帰着を象徴する文字だそうです。
仁王(仏性寺 栗崎町1984)
阿吽といえば、まず、仁王が頭に浮かびます。口を開いた阿形(あぎょう)像が向かって右側に、口を閉じた吽形像が向かって左側に置かれるようです。写真は水戸市の指定文化財である、像高140cmの山門の前に立つ石像仁王像です。元禄7年(1694)につくられたものだそうです。徳川光圀の死去は元禄13年(1700)ですから、その晩年のことのようです。
狛犬(水戸八幡宮 八幡町8-54)
狛犬のほとんどは阿吽の形を取っているようです。写真は、水戸市指定文化財の室町時代につくられた、木像の狛犬です。かつては全体に彩色してあり、歯には金箔がはられていたようです。
稲荷の狐(千束稲荷神社 酒門町4192)
稲荷神社には、普通の神社の狛犬のかわりに、狐を置くところが多いようです。宝珠や巻物などを持った狐が多いようですが、写真のような、狛犬の形にならったのでしょう、阿吽の形をした狐も少しはあるようです。
鬼瓦(定善寺 酒門町363)
鬼瓦にも阿吽形がありました。定善寺の本堂向かって左側の鬼瓦は、口の両脇は開いていますが、食いしばっているようで、上側の歯だけが見えて下側の歯は見えませんので吽形なのでしょう。右側は、上下の歯が見えていますので、阿形なのでしょう。近くの宝蔵寺(谷田町633)の鬼瓦も歯の様子が同じです。
備前焼狛犬(常磐神社 常磐町1-3-1)
神社の背後に置かれている備前焼の珍しい狛犬です。これは明治8年に現・小美玉市の信徒が奉納したものだそうです。明治7年に常磐神社は今の地に社殿がつくられたそうなので、そのお祝いに太々神楽と共に奉納されたようです。