「人民の、人民による、人民のための政治」で有名なアメリカ合衆国大統領エイブラハム・リンカーン。彼の若い頃は、人の悪口を書いた手紙をわざと道端に落として人目に触れるようにするような、性格の悪い人間だったそうだ。性格の悪さが災いして決闘を申し込まれたこともある。しかしそのことがきっかけで、人を非難することをやめたリンカーン。例え悪いことでも一つ一つの生きてきた証が、一人の歴史的にも有名な人物を形成していった。
『丁稚のすすめ』を書いた秋山利輝さんは、愛情を持ちつつ丁稚を叱りながら育てていった。『人を動かす』の本に紹介されている内容では、相手が悪くても褒めて長所を引き出すことに成功している。どちらがいいのかはまだわからないけれど、この本は人間の心理を理解するのに大いに役に立った。特に相手が間違っていたとしても、“誤りを指摘しない”という点は心に留めておきたいと思った。間違っている人に対して、その誤りを指摘しても、相手は怒って話を聞かなくなり、逆に指摘した人に対して反感を抱いてしまう。人間とは自尊心が高い生き物であり、また自分は間違っていないと常に考えている生き物でもあるからだ。
この世の中、無人島に一人で出かけて行かない限りは、人間死ぬまで誰かと関わって生きていかなければならない。ならば人間関係を最悪にするよりは、少しでもいい関係を保ちたいと願っているだろう。その為に人間の心理を知ることは、生きていく上で役にたつと思う。この本を読んで家庭関係においても、ちょっとしたことに気をつけるだけで良好な関係が気付けることがわかった。どうしてとても簡単なことなのに、今まで気付かなかったのだろう。そしてどうしてすぐに人間は忘れてしまうのだろうか。
この本の目次で特に読んでみて参考になるのではと思う項目を列挙しておこう。
第一部 人を動かす三原則
重要感を持たせる
人の立場に身を置く
第二部 人に好かれる六原則
笑顔を忘れない
名前を覚える
聞き手にまわる
心から褒める
第三部 人を説得する十二原則
議論をさける
誤りを指摘しない
第四部 人を変える九原則
まずほめる
遠まわしに注意を与える
命令をしない
顔をつぶさない
付 録 幸福な家庭をつくる七原則
口やかましくいわない
あら探しをしない
ほめる
礼儀をまもる
『人を変えようとして、相手の心の中に隠された宝物の存在を気付かせることができたら、単にその人を変えるだけでなく、別人を誕生させることすらできるのである。』
自分の心の中にある宝物の存在。
自分で気付くことが出来ない人もいる。
例えば情熱。
それを心の中に灯すことが出来る人間は神にも等しい。