私の客が運転していた車が、信号待ちで停車していたタクシーに追突した。後部座席には往診に向かっていた医者と看護師が乗っており、運転手はなんともなかったが、このふたりがムチウチになってしまった。
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実際、看護師は2ケ月の通院で全治し、彼女には治療費の他におよそ70万円が支払われた。ここで、看護師に支払われた金額を聞いた医者の目の色が変わってしまった。おそらく、医者である自らの立場を利用して、多額の保険金がもらえると錯覚したのだろう。医者は13日間入院し、さらに144日間通院した。そして、とんでもないことを要求してきたのである。
「仕事にならないから退職する。退職金代わりに1600万円支払ってくれ」
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「1600万円から、少しくらいならまけてあげてもいいですよ」
調停の場で、医者が雇った弁護士は恥ずかしげもなく言ってきたが、私は頑として譲らなかった。
ちなみに、このときは完全に私ひとりで取り仕切っていた。
保険会社のSC社員は、誰ひとりとして調停の場に行くことさえしなかった為である。
だが、私は粘り勝った。最終的に弁護士も手を引き、医者の理不尽な要求が通ることはなかった。
「吉田とかいう代理店がひとりで頑張りやがった」
医者はしばらくそのような恨み節を連発していたという。世の中そんなに甘くないのだ。
示談交渉人 吉田透
去年自分が起こした物損事故。
保険会社や相手方の対応に疑問を持った私は、保険会社と任意保険の見直しをしたくなった。
でも、車の保険について詳しく書かれている本が見つからなかった。
そこで見つけたのが、示談交渉人 交通事故の恐るべき舞台裏という本だった。
保険に入る時の年齢条件の大切さ・自転車に乗った加害者であるおばあさんがいなくなる事故・代車費用特約・代車は通院用ではない・保険屋という仕事・事故が起こった時の目撃者の確保。
色々なパターンがこの本には書かれていて、とても役にたった。
車を運転していて、一度も事故を起こしたことがないという人もいれば、大きな事故を起こす人もいる。
毎年事故を起こすような人は、保険料が多少高くなったとしても、今回のようながめつい医者や弁護士も存在しているので、吉田さんのような知識と経験がある代理店を選んだ方がいい。
生きていると、とても不条理なことに出くわすこともある。
がめつい医者のように、いきなり「退職金代わりに1600万円支払ってくれ」といわれ、ハンマーで頭を殴られるような衝撃を受けたり。
周りに味方がいなくて、一人で頑張らないといけない時もある。
でもそれに取り組んでいる間は、どうにかしてそれを乗り越えようと試行錯誤を続ける。
今まで発揮されていなかった能力が開花する。
問題が解決した後には、成長した自分と貴方がそこに存在しているのだろう。