浜床のふろしき

尾道市因島から日常を記します

認知症高齢者数について

2012年09月01日 | 福祉

824日に厚生労働省が発表した資料(『認知症高齢者数について』)によれば、平成24年の認知症高齢者数は推計305万人とされています。

この数は65歳以上の人口の約10%となりますので、10人に1人が認知症を有していることになります。

因みに85歳以上では4人に1人が認知症を有していると言われています。

 

ただ、「認知症」の基準というのが難しいため、今回の調査では介護認定調査における「認知症高齢者の日常生活自立度」というものを使った上で、その基準のⅡ以上の人数を算出しています。

当然ながら、認知症を有しながら介護認定を受けていない人は含まれていません。

 

しかしながら、「認知症高齢者の日常生活自立度」と言われても、高齢者福祉に携わっている人でなければ、よく分からないと思われますので、数字だけが独り歩きすることも考えられます。

 

因みに「認知症高齢者の日常生活自立度」というのは下記の表を参考にしてもらえればと思います。

 

ランク

判断基準

見られる症状・行動の例

何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している

 

日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少みられても、誰かが注意していれば自立できる

 

 

a

家庭外で上記Ⅱの状態がみられる

たびたび道に迷う、買い物や事務、金銭管理などそれまで出来たことにミスが目立つなど

b

家庭内でも上記Ⅱの状態がみられる

服薬管理が出来ない、電話や訪問者の対応などひとりで留守番ができないなど

日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さがときどきみられ、介護を必要とする

 

 

a

日中を中心として上記Ⅲの状態がみられる

食事、排泄、更衣が上手にできない・時間がかかる、やたら物を口に入れる、物を拾い集める、徘徊、失禁、大声・奇声をあげる、火の不始末、不潔行為、性的異常行為等

b

夜間を中心として上記Ⅲの状態がみられる

ランクⅢaに同じ

日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁にみられ、常に介護を必要とする

ランクⅢに同じ

著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患がみられ、専門医療を必要とする

せん妄、妄想、興奮、自傷・他害等の精神症状や精神症状に起因する問題行動が継続する状態等

 

 

現在、認知症サポーター養成や啓発活動などを通じて、認知症を有する人たちが自宅で暮らしながら日常生活を送れるようにしていこうという取り組みが進められています。

もし、こういった取り組みによって社会が認知症の人たちを受け入れる体制が整っていけば、認知症を有する人も、そして家族の人もずいぶんと救われるのではないでしょうか。

 


36℃の言葉

2012年06月07日 | 福祉

新聞の広告欄に「36℃の言葉。~あなたの体温を、伝えてほしい。~」 と載っていました。

おそらく、殆どの人は目にしたことすら意識していないかもしれません。

日本福祉大学が10年前から行っている高校生福祉文化賞エッセイコンテストのテーマです。

僕自身が福祉関係の仕事をしていることもあり、また出身大学の行っている企画でもあり、気になるコンテストです。

本当に身近な「人とのふれあい」や「家族」、「暮らすまち」などにスポットをあてて高校生がエッセイを書いていますが、過去の作品などを見てみると、つい自分の暮らしと比べてしまいます。

「介護が必要だから・・・」「障がいがあるから・・・」そんな理由で福祉が必要とされているのではありません。

人が人と関わって暮らしていく中で、誰しもが誰かに支えられているのだと思います。

息子が高校生になったら、ぜひ応募させてみたいと思います。


認知症

2011年12月16日 | 福祉

「痴呆」から「認知症」へ呼称が変わった時は、どれほど浸透するのか心配しましたが、テレビや新聞の影響も大きいのか、ずいぶんと浸透したことを感じています。

もちろん、僕の周りには福祉に関心を持っている人が多いため、「認知症」の浸透度も高いのかもしれませんが・・・。

さて、こうして「認知症」と呼ぶことに慣れてくると、今度は間違った使い方をする人が出てくるのも事実です。

先日のことですが、仕事でケアマネージャーの方と話をしていて、こんな会話をしました。

ケアマネージャー「新規の方で、ショートステイを利用したい方がいるのですが、大丈夫ですか?」

僕「それではその方のことを伺いたいのですが、まず男性ですか?女性ですか?それから要介護度と身体の状態なども教えてもらえますか?また希望の日程があれば、併せてお願いします。」

ケアマネージャー「女性の方で要介護2です。杖での歩行が可能ですが、一人では転倒する危険性があるので、付き添いが必要です。トイレも自分で行こうとするのですが、失敗することもあるので、リハビリパンツを使用しています。食事はセッティングすれば自分で食べられます。認知はありません。特に希望日は無いのですが、まず2~3日間くらいから利用したいのですが・・・。」

僕「認知が無いということは、認知症自立度はどれくらいですか?それに注意しないといけないような行動がありますか?」

ケアマネージャー「いえ、認知は無いので、特に問題ありません。」

この会話を聞いて分かった方がいらっしゃるでしょうか?

僕とケアマネージャーの会話は噛みあっていません。

なぜなら、ケアマネージャーが言っている「認知が無い」は「認知症が無い」ということなんですよね。

認知=心理学等で、人間などが外界にある対象を知覚した上で、それが何であるかを判断したり解釈したりする過程のこと。


実地指導

2011年08月11日 | 福祉

今日は介護保険の実地指導がありました。

対象は短期入所生活介護(ショートステイ)と通所介護(デイサービス)で、相談業務(面談・契約を含む)と介護支援専門員(ケアマネージャー)をしている僕は、まさに主演男優なわけで、なかなか忙しい一日でした。

とは言っても、実地指導は普段している業務が適正に行われているかどうかを確認するだけなので、特別な何かがあるわけではありません。

だから、約1ヶ月も前から実地指導があることが分かっていても、書類の不備があるかどうか確認しただけで、準備らしい準備もしていないのです。

それでも、やっぱり行政の指導員が来て、書類をチェックして色々と聞いてくるので、普段とは違うリズムに疲れてしまいました。

結局、大きな改善指導はなく、無事に終わりました。

良かった、良かった。


介護マーク

2011年02月09日 | 福祉

興味深い記事を見つけました。

全国初「介護マーク」というものです。以下は記事を抜粋しています。

認知症患者の介護で異性のトイレに入るときなどに誤解されないよう、静岡県は「介護マーク」を策定した。介護中を示すマークを作ったのは全国初。認知症患者を介護する家族から「一見して介護していると分かるようにしてほしい」との意見をもとに作成したもので、すでに他県から引き合いがあるなど、全国的にも注目を集めている。

数年前、足も少し不自由な妻は、サービスエリアで女性トイレから出られなくなってしまった。男性は大声で叫びながら妻を助けるため女性トイレに入ったが、出てきたとたんにけげんな顔で見られたという。「犯罪者だと思われたようでした」と男性は悔しさをにじませた。

窮状を訴えた男性は介護マークの策定を喜び、「男性介護者には女性とは違う悩みがある。トイレへ入るのもマークがあれば認めてくれたり、買い物でもすんなり売り場に入れるようになればいい」と普及に期待していた。

たしかに車椅子の人や麻痺がある人などの介護は傍から見ても介護中であることが分かりますが、認知症の人の介護は一見しただけでは分かりません。

介護をする人を支えるモノが出来るのは良いことです。


エンディングノート

2010年12月18日 | 福祉

久しぶりのブログ更新になります。この間に色々と考えさせられる出来事があったので、今回は重い話題です。

エンディングノートをご存じですか?名前を書いた人が死んでいくという、あのノートではありません。

誰しもいずれは死を迎えます。その死を迎えた時に自分の考えていたことをどのように周囲の人間に伝えるのか、それは多くの人が思い悩むことでもあります。従来、それは遺書・遺言として残されてきましたが、「堅苦しいことはしたくない」「面倒くさい」などの理由から敬遠されがちなのではないでしょうか。

そんな意見から遺書・遺言を現代風にアレンジしたのがエンディングノートと言われるものです。

いったい何が違うかというと、エンディングノートには残しておくべき事柄が項目ごとに分かれており、記入しやすくなっているのです。さらには「死」だけでなく、突然の事故や病気で意思を発することが難しくなった場合でも、書き込んでおくことで周りの人が本人の意思を酌むこともできます。

たとえば、「財産目録」には、銀行口座の暗証番号や登録印を記載しておいたり、相続のことを書いたり、あるいは「死亡後について」には、埋葬方法や連絡すべき関係者などを記載しておいたり、臓器移植の意思を書いたりできます。

もちろん、様々な形のエンディングノートがあるので、自分に合ったものを見つける必要がありますが・・・。

自分の考え・想いを伝えるため、そして残った者を悩ませないためにも一考の余地があるのではないでしょうか。


冬支度

2010年11月10日 | 福祉

冬支度
立冬を過ぎ、冷たい風が吹く季節になりました。

高齢者が暮らす施設としては、衣類や布団、暖房器具などとともに必要な冬支度が、予防接種です。

今年は新型インフルエンザも含めた3種混合だそうです。

そろそろマスクも必要かな…?


施設は増やせるのか?

2010年10月23日 | 福祉

厚生労働省の調査によれば、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)に入所申し込みをしている人が42万人を超えているそうです。(平成2112月現在)←調査方法に疑問は残るけれど・・・。

その内の約半数の人が在宅で生活しており、また約半数の人が病院や他施設で生活している現状があります。

僕が勤める施設でも待機者が270名を超えています。定員が54名で、実際に入所するのは年間に10人前後ですから、多くの方が利用できないまま他施設に行かれたり、お亡くなりになられたりします。

では、施設を増やせば良いのではないか?という話になりますが、実際には様々な問題があって難しい状況だと思われます。

まず一つ目に介護従事者の問題が挙げられます。

昨年の介護従事者の処遇改善交付金の報道により「介護」の仕事がメディアで大きく報じられました。しかし、それは給与の低さだったり、仕事内容の大変さだったり、離職率の高さだったりとか、負の面を取り上げて、だからこそ賃金アップを・・・と言ってしまったことにより「介護」の仕事は大変だぞと日本国民に思われてしまったところがあります。

実際に、介護福祉士やホームヘルパーを育成する専門学校や機関の定員は大きく割り込んでしまい、閉校してしまうところもあると聞きます。またせっかく介護福祉士の国家資格を取っても福祉業界とは全く違った仕事に就く人も多いと聞きます。

都会では、定員数80床の施設が職員不足により70床しか稼働できないといった状況が起きているのも現実です。

つまり、施設を増やしたからといって、そこで働く人が集まらなければ成り立たないのです。

二つ目に介護保険料の問題が挙げられます。

40歳以上の人は介護保険料を各保険者(殆どの場合、市区町村)に収めています。そして、その保険料(50%)と公費(50%)によって、介護保険が運営されているのです。

そうすると、施設を増やすということは、それだけ出費も多くなるので、当然のことながら保険料も上がります。

65歳以上の人一人あたり4160/月(平成22年度全国平均)と言われている介護保険料をまだまだ上げないと施設を増やすのは難しいのが現状なのです。ただでさえ、将来の生活に不安のある人たちから、強制的に高い保険料を徴収するのは理解が得られにくいでしょう。

他にも問題はありますが、結局のところ施設を増やしたからと言って、問題解決にはならないだろうということです。


フットケア

2010年09月17日 | 福祉

本日付の新聞に「爪切り事件 元看護課長に逆転無罪」なる記事が載っていました。

簡単に内容を説明すると、2007年6月に北九州市の病院に勤める看護師が認知症の高齢者の爪切りをして出血させたことによって、「虐待」として大きなニュースとなり、傷害罪を問う裁判となりました。そして、2009年3月には懲役6ヶ月、執行猶予3年の有罪判決が出されていました。

さて、この「虐待」ニュースが流れた時に、世間はこの看護師をバッシングしました。しかし、看護協会は「適切な看護行為」として発表しています。おそらく医療・福祉の現場で働く人たちでフットケアの知識のある人なら、この「虐待」報道にはビックリしたことでしょう。

個人的な見解を書かせてもらえば、白癬菌や巻爪などで爪の管理が必要な方の場合、ケアのために深爪にしたり、厚い爪を薄く削ったり、或いは爪を剥いだりすることが必要になることがあります。その行為を虐待だと言われては困ってしまいます。その状態を放置する方がよっぽど虐待だと思うけど・・・。

とりあえず、この度の裁判で無罪判決が出たので、一安心ですが、今後どうなっていくのか気になるニュースです。


人材

2010年09月10日 | 福祉

今年も大学生が実習に来ています。社会福祉士養成カリキュラムが変更する過程にあって、僕も社会福祉士の実習を受け入れるための資格をとりましたが、実際のところ、通常業務をこなしながらの指導は大変なものです。

実習受け入れを始めて7~8年経ちますが、なかなか手応えのある学生はいないもので、酷い時は「今すぐ帰って!」と叫びたくなる学生もいました。

さて、今回の学生ですが、可愛い女の子(15歳年下ですからね)で、とても一生懸命に学んでくれています。もちろん、勉強不足だし、視野の狭さも感じるし、物足りないところも沢山あるけれど、なにより高齢者や家族の話を一生懸命に心を傾けて聴くことが出来るという、一番大切なモノを持ち合わせています。

きっと家族に大切に育てられて来たんだろうなと感じます。

まだ挫折・失敗体験をしていなくて、どれ程のメンタル面の強さがあるのか分かりませんが、おそらく彼女のような人材がソーシャルワーカーとして働けば、戦力になると思います。

あと4日間の実習をやり遂げて欲しいと思います。