高齢者福祉の現場にいると様々な高齢者と出会います。そのうちの一人にこんな方がいます。
明治生まれで、もう100歳になろうかというその女性は認知症のため、同じような話を何度も繰り返します。それこそ、自宅から施設までの車の中で何十回も。
僕はそれを聞きながら相槌を打つのですが、嫌な思いをしたことがありません。
なぜなら、彼女は絶対に人の悪口を言わないのです。息子を褒め、嫁を褒め、施設の職員を褒め、僕まで褒めてくれるのです。
辛い思いもたくさんしているだろうに、彼女が悪口を言ったのを聞いたことがありません。
あの姿こそが悟りの境地なのかもしれません。