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〈どこまでも、どこまでも/空。どこまでも、どこまでも海…/遠く、空の青、海の青のかさなり。/散乱する透明な水の/微粒子の色。晴れあがった/朝の波の色。空色。水色…〉。
二年前に七十五歳で逝った長田弘さんの『最後の詩集』(みすず書房)の冒頭を飾るのは、「シシリアン・ブルー」と題された鮮やかな詩だ。
〈どこまで空なのか、どこから海なのか。/見えるすべて青。すべてちがう青。/藍、縺iはなだ)、紺、瑠璃、すべてが、/永遠と混ざりあっている…〉。読めば、淀(よど)み濁った心が、青く染め上げられていくようでもある。
空、海、そして地球。その青を、私たちの目は、どんな仕組みでとらえているのか。なぜ私たちは、青を見ることができるのか。名古屋工業大学の神取(かんどり)秀樹教授らはそんな謎に十年がかりで取り組み、世界に先駆けて解き明かしたという。
霊長類の視細胞にある「光センサータンパク質」を調べ上げ、構造を解析した。それで浮かび上がったのは、水の大切な働き。赤や緑を感じるタンパク質では水の分子が一つずつばらばらに働いているが、青を見分けるタンパク質では、三つほどの水の分子が集まって小さなかたまりをつくり、独特の役割を担っていると分かったそうだ。
空の青、水の青を感じるため、私たちの瞳の奥でひっそりと働く水の分子たち。自然がくれた素敵な贈り物である。
〈どこまでも、どこまでも/空。どこまでも、どこまでも海…/遠く、空の青、海の青のかさなり。/散乱する透明な水の/微粒子の色。晴れあがった/朝の波の色。空色。水色…〉。
二年前に七十五歳で逝った長田弘さんの『最後の詩集』(みすず書房)の冒頭を飾るのは、「シシリアン・ブルー」と題された鮮やかな詩だ。
〈どこまで空なのか、どこから海なのか。/見えるすべて青。すべてちがう青。/藍、縺iはなだ)、紺、瑠璃、すべてが、/永遠と混ざりあっている…〉。読めば、淀(よど)み濁った心が、青く染め上げられていくようでもある。
空、海、そして地球。その青を、私たちの目は、どんな仕組みでとらえているのか。なぜ私たちは、青を見ることができるのか。名古屋工業大学の神取(かんどり)秀樹教授らはそんな謎に十年がかりで取り組み、世界に先駆けて解き明かしたという。
霊長類の視細胞にある「光センサータンパク質」を調べ上げ、構造を解析した。それで浮かび上がったのは、水の大切な働き。赤や緑を感じるタンパク質では水の分子が一つずつばらばらに働いているが、青を見分けるタンパク質では、三つほどの水の分子が集まって小さなかたまりをつくり、独特の役割を担っていると分かったそうだ。
空の青、水の青を感じるため、私たちの瞳の奥でひっそりと働く水の分子たち。自然がくれた素敵な贈り物である。