ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『華麗なる刑事』#04

2023-10-16 20:53:21 | 刑事ドラマ'70年代

 
日本テレビ系列で『俺たちの勲章』と『はぐれ刑事』が放映されてから2年が経過した1977年、フジテレビ系列の月曜夜8時枠で4月からスタートしたのが東宝制作による『華麗なる刑事』で、同年11月まで全32話が放映されました。

’70年代初期のトレンドとも言える“挫折の美学”がまだ残ってた『〜勲章』や『はぐれ〜』と違って、この『華麗なる刑事』にそういう暗さというか、ドラマ性はあまり感じられません。

ほぼ同時期、日テレでは火曜夜9時枠で石原プロの『大都会 PART II』がスタートし、『はぐれ刑事』以上にシリアスだった前作『大都会/闘いの日々』から打って変わって娯楽アクション路線にシフトしたのも、決して偶然じゃないでしょう。

つまり、日本という国が異様に豊かで明るかった、あの「’80年代」の足音がいよいよ近づいてきた感じ。

それに加えて『華麗なる刑事』は、どちらかと言えば男性向けのメディアだった(と私は思ってる)テレビのチャンネル権を、いつの間にか女性たちが握ってることにいち早く気づき、内容に反映させた先駆的な作品だったと言えるかも?



それを象徴するのが草刈正雄に加納竜という爽やかイケメン(田中邦衛さんはさておきw)、さらに檀ふみ、沢たまき、梶芽衣子といった“男ウケ”しない(と私は思う)女優陣の起用、そして44マグナムを使いながらも射殺は無く、アクションはあくまでスマートに見せるという演出コンセプト。



いや、置いといた田中邦衛さんにしたって女性人気は凄かった筈で、イケメンとはまた違った“男の色気”がほとばしってます。

要するに、とにかく“華麗なる”男たちを愛でるために創られたドラマであり、それ以上でも以下でもない。言わば女性向けアイドルドラマのはしりかも知れません。




☆第4話『標的は俺だ』(1977.4.25.OA/脚本=田波靖男/監督=児玉 進)

ストーリーは至ってシンプル。米国企業への闇献金が噂される商事会社の幹部たちが凄腕スナイパーに次々と暗殺され、警視庁・南口署の刑事たちが捜査に乗り出します。

で、そのスナイパーの正体がどうやら主人公「ロス」こと高村一平(草刈正雄)がかつてロサンゼルス市警(アジア特捜隊?)にいた頃、愛銃マグナム44で射殺したサムソンという殺し屋の弟子=清宮(三ツ木清隆)らしいと判明。



つまり、キラー清宮にとってディテクティブ高村は死んだマスターのエネミー。これはかえって好都合?

次の犠牲者が出る前に犯行を阻止すべく、高村は自らターゲットとなって清宮を誘い出すのでした。



挫折の美学はどこへやら?って感じだけど、どっちが観やすいかと言えば断然こっちだし、正直言ってレビュー記事を書くのもラクなんですw なにせ華麗なるアクションの魅力は文字じゃ伝えようが無いですから。

イメージビデオのレビューと同じで、切り取った1つ1つの場面を脳内でモンタージュし、若き日の草刈さんや邦衛さんの華麗なる姿を想像して頂ければと思います。



草刈さんの走るフォームは松田優作さんほど美しくはないにせよ、手足が長いだけにやっぱ画になります。サウスポーゆえ射撃スタイルも独特です。

そして相棒のゴローさんこと南郷五郎(田中邦衛)も「子供がまだ食ってる途中でしょうが!」と言わんばかりに大活躍。



殺陣で魅せるタイプじゃない『華麗なる刑事』では珍しいかも知れない、ロス刑事の格闘アクション。



こうしてキメるときはキメるけど、普段の2人はこんな感じ。



過去の記事に再三書いてきたとおり、邦衛さんの味わい深い演技や存在感が羨ましくて仕方ない草刈さんが必死に三枚目を演じ、逆に邦衛さんが二枚目に徹してるのが『華麗なる刑事』の一番面白いところ。制作側は大いに困ったことでしょうw

そんな2人の脇を固める南口署捜査課のメンバーは、上条課長(佐野浅夫)にベテランの田島刑事(新 克利)、そして“坊や”こと真田刑事(加納 竜)。



『華麗なる刑事』のもう1つの魅力として、ロス刑事が駆る“ギャランΛ(ラムダ)”を筆頭とする、華麗なる三菱カーたちも挙げられるかも知れません。第29話では“フォード・マスタング・マッハ1”との対決も見られました。



さらにゴローさん専用車のランサーセレステ1400GL、“城西署の女豹”こと三杉刑事(梶 芽衣子)が愛用するランサーセレステ1400GSL等、私は詳しくないから解んないけど、お好きな方には味わい深いラインナップかも?



そして忘れちゃいけないレギュラー女優陣。まずは少年係の巡査にして南口署のマスコット的存在の、青井 空(檀ふみ)。



“南口署の生き字引”と呼ばれて嬉しいのかどうか分からない、署長よりも偉そうに見える園山巡査部長(沢たまき)。



実はシリーズ後半に5回登場するだけのセミレギュラーだけど、第三の“華麗なる刑事”として強烈なインパクトを残した“女豹”こと、城西署刑事の三杉理恵(梶 芽衣子)。



以上の女優陣が「男ウケしない」と書いたのは決して悪口じゃなく、チャンネル権を握ってる女性視聴者たちに嫌われないことが何より大事。

ところがそんな中、青井巡査の同僚婦警に扮した大塚悦子さんだけ「おっ、可愛い!」「この人は男ウケしちゃうのでは?」と思ったもんで調べてみたら、なんと本作での共演がきっかけで後に草刈正雄さんの妻となり、ダンサーの紅蘭さんやモデルの草刈麻有さんを産むことになるお方じゃないですか!



↑言うまでもないでしょうが左側の人です。

童顔ながらもボインぼいぃぃ〜ん!なボディで男性誌のグラビアを飾られた“グラドル”のはしりで、その結婚を後押ししたのは誰あろう、草刈さんの大親友らしい勝野洋さん! テキサスがロスの人生に多大な影響を与えたとはよく出来た話じゃないですか?

というワケで今回のセクシーショットは檀ふみさんでもなければ梶芽衣子さんでもなく、ましてや沢たまきさんでもない、草刈正雄夫人の大塚悦子さんです!


 

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『はぐれ刑事』#01

2023-10-16 20:40:20 | 刑事ドラマ'70年代

かつて、純情派じゃない『はぐれ刑事』というドラマがあったことをご存知でしょうか?

1975年(昭和50年)秋シーズンに全13話が放映された『はぐれ刑事』が“日本テレビ火曜夜9時のアクションドラマ”の系譜や“バディもの刑事ドラマ”の系譜から除外されがちなのは、主役のお二人(平 幹二朗&沖 雅也)にそれぞれジェンダーに関する疑惑があったから?

だとすればまったくバカげた話だけど、多分そうではなく、当時大ヒット中だった『太陽にほえろ!』を代表とする刑事ドラマの“型”からあまりにかけ離れた内容に視聴者がついて行けず、なんとなく“別もの”と認識しちゃったせいじゃないでしょうか?

少なくとも私は当時見向きもしなかったし、10年ほど前にCATVで初めて観たときもどう楽しめば良いやら戸惑い、続けて視聴する気になれませんでした。

ところが今回、『傷だらけの天使』に『俺たちの勲章』と日テレ“岡田晋吉ユニバース”のバディものを連続レビューした流れで、あらためて観直してみたら実に味わい深い!

制作は俳優座映画放送&国際放映だけど岡田プロデューサーも企画に名を連ねておられ、それだけでクオリティーの高さは保証されたようなもの。

逆に、その“志しの高さ”こそが仇になったんじゃないかと今は思ってます。ある程度レベルを落とさないとテレビ番組はヒットしない。古今東西、その法則は不変なんでしょう。

ちなみに本作の後番組が石原プロモーション初のテレビ作品『大都会/闘いの日々』で、一般的に“日テレ火曜9時のアクションドラマ”はそこが起点とされてます。




☆第1話『銃弾』(1975.10.7.OA/脚本=尾中洋一/監督=小野田嘉幹)

舞台は東京の下町・浅草。そして事件の発端は、おみやげ屋で働く若い女=まゆみ(桃井かおり)が、浩太郎(橋本 功)という同棲相手がいながら嶋本(磯部 勉)というハリソン・フォードそっくりな声をした男と1晩だけチョメチョメし、それがバレたせいで勃発した痴話喧嘩。



モデルガンの規制がまだ緩かった、当時ならばあり得そうな改造ピストルを浩太郎が持ち出したもんで、目撃者が通報して台東警察署・捜査課の刑事たちが現場に駆けつけます。



が、時すでに遅く、ハリソン・フォード声の嶋本を射殺した浩太郎は、今にもまゆみと心中しようとしてる。

温情派のベテラン刑事=風間史郎(平 幹二朗)は、血気盛んな新米刑事=影山健三郎(沖 雅也)に援護を命じ、ひとりで飛び込み、まずはまゆみを保護します。

で、浩太郎にピストルを捨てるよう説得するのですが……



ものの弾みで浩太郎が引金を引き、同時に影山ら刑事たちも一斉に発砲!

そして飛び交った何発かの銃弾のうち1発が、あろうことか風間の胸に命中してしまう!



その直後、浩太郎は自分で自分を撃って自殺しちゃう。一斉射撃しながら誰も犯人に当てられなかった刑事たちがヘボ過ぎますw

が、たぶん現実はそんなもの。飛行中のヘリからショットガンで敵の拳銃だけ弾き飛ばす団長がファンタジー過ぎるだけ。



皆が慌てて風間に駆け寄る中、影山は呆然と立ち尽くします。なぜなら彼は、後に七曲署で活躍するスコッチ刑事ほど射撃に自信がなく、しかも、撃った瞬間に眼をつむってしまった自覚があるから。

まさか、オレの撃った弾が……!?



もちろん、初回でいきなり主人公が死にやしません。風間は、遠のく意識の中で同僚刑事たちにワガママを言います。



「し、新藤外科へ連れてってくれ」

「新藤って、あの新藤か? ヤブだぞ、あいつは」

刑事たちにヤブ認定されてる外科医とは、風間と幼馴染みの町医者=新藤保太郎(田中邦衛)。



「保太郎……やられちゃったよ。タマ入っちゃった、タマ」

「なあに、タマの1つや2つ」

そう言いながらも保太郎は、レントゲン写真を見て弾丸の摘出をためらいます。



「どうして抜かないんですか?」

「黙ってろよ、若造」

そんなに難しいオペでもないのにと、助手の大辻医師(火野正平)がいぶかりますが、保太郎は相手にしません。理由は火野正平だから……ではなく、風間の肺スレスレで留まってる弾丸のサイズが気になったから。



保太郎から連絡を受け、風間&影山の上司である滝川課長(小沢栄太郎)も顔色を変えます。

なぜなら、死んだ浩太郎が使った改造ピストルは22口径で、刑事たちが使ってる制式拳銃(当時のドラマだと大抵MGCハイパト)は38口径。

そう、風間の体内に残ってる弾丸は38口径なのでした。



現在のところ、影山以外の刑事たち(望月太郎、片岡五郎、伊東辰夫ほか)の弾丸は現場で回収されており、影山と浩太郎の弾丸だけが1発ずつ行方不明。

つまり、風間の体内から弾丸を摘出する=それが38口径であることを明かせば、影山がパイセンでバディの風間を誤射したことも確定してしまう!



「ホシの弾は22口径だそうだ。オメェらのはいくつだ?」

「ええ?」

「警察官の口径だよ」



「38口径……!」

「オレは抜いてもいいよ。シカゴ帰りの凄腕なんだからよ」

「…………」

「どうした?」

「抜かんよ、弾は」

「そうか」

風間にせよ滝川課長にせよ、恐らく気にしてるのは警察のメンツじゃない。影山健三郎という有望な若手のキャリアを潰してしまうことを、未来を託すベテランとしてはどうしても避けたいんでしょう。

けど、影山をよく知らない鑑識課長(地井武男)にそんな情は通じません。



『太陽にほえろ!』じゃ入れ違いだったスコッチ&トシさんの“夢の共演”なのに、事態の不自然さをズバズバ指摘され、影山のモヤモヤもどんどん増していきます。



保太郎に尋ねても「知らんでいいの。そのほうがラクなの」とか「夜になったら眠るんです」とか「子供がまだ食ってる途中でしょうが!」とか言いながら口を尖らすばかりで埒が明かない。

そして、事件現場をこっそり探索し、行方不明だった浩太郎の弾丸(すなわち、風間に当たったのが影山の弾丸であることを示す証拠)をついに見つけた滝川課長は……



その事実を闇に葬ることを決意するのでした。王道の『太陽にほえろ!』だと絶対にあり得ない作劇です。

そうとも知らず、影山は何とか事実を知ろうと奔走するも何も掴めず。当事者である先輩と上司と、主治医までグルになって隠蔽を謀ってるんだから、そりゃ何も出て来やしませんw

周りはそれで良くても影山自身は、まっとうな人間であるがゆえに苦しみ、酒に溺れます。

そんな影山に、“ラリパッパのお京”と自ら名乗るボインぼいぃぃ~ん!な酔っ払い娘(ホーン・ユキ)が絡んできます。



「あんたさ、眼つむって撃ってたじゃん」

「!?」

そう、あのとき現場に居合わせたお京は、すべてを見ていた。きっと若くてハンサムな影山に眼を引かれたんでしょう。

すぐさま呑み屋から逃げ出した影山を、ボインぼいぃぃ〜ん!とお京は追いかけ、つきまといます。



「小汚い町だよな、浅草ってとこは。オレは絶対、ジュクかブクロに移ってやるんだ」

ジュクは新宿、ブクロは池袋のことでしょう。七曲署は新宿にあるから望みは叶うワケです。



「ふふ、変わってらぁ、あんた。いいじゃん、此処も」

「許せないんだよ、あんなヤツらの為に……未練たらしい男、いざとなりゃ尻に帆かけて逃げる男、騙される女……小汚いんだよな、どいつもこいつも」



「騙されるからいいんじゃんか」

「…………」

下町=人情味にあふれた温かい場所っていう、固定されたイメージを完全否定しちゃうセリフを主役が言っちゃうのも凄い!

回が進むにつれ意識が変わっていくにせよ、現在ならコンプライアンスとやらで絶対NGでしょう。



「朝だね……タバコちょうだい」

「……オレな、生身の人間を撃ったの初めてだったんだ。ざまぁねえよな」



「……デカってさ、ほんと好きじゃないんだよな。カッコ悪くて」

「…………」

「だけど最高にカッコよかったよ。眼つむって撃ったアンタ」



つまり、それが人間らしい人間ってことでしょう。お京は影山のルックスだけに惹かれたワケじゃなさそうです。



味わい深いこの第1話の中でも、特にこの影山とお京のやり取りが良かった!

それはホーン・ユキさんのおっぱいがチラチラするからじゃなく(それもあるけど)、きっと本作が“刑事ドラマ”じゃなく“人間ドラマ”であることを最も端的に示したシーンだからだと思います。

テレビ視聴者(ことに刑事ドラマのファン)が求めがちな“理想的ヒーロー”がここにはいない。そりゃ従来型の系譜から“はぐれ”ちゃうワケです。

だから影山は、真相なんか知る由もないまゆみを署に連行し、意味のない取調べを繰り返すという醜態まで晒します。



「アンタにはアンタの言い分ってものがあんだろう? それを聞かせてくれって言ってんだよ。そうでなきゃいつまでも吹っ切れないからさ。なあ!」



「だからあ! なんで死ぬのぉ? なんで撃つのぉ!? ねえ、なんでぇ!? 浮気したんじゃないんだもん! そういうのじゃないんだもん!」



かおり節が炸裂したところで風間が、胸に弾丸を食い込ませたまま帰ってきます。

「テメエに腹立てて、ヒトに当たる奴はクズだぜ?」



急所にはギリギリ達してないとはいえ、鉛弾には毒があるから生きちゃいられない筈だけど、わたしゃ医者じゃないので何とも言えません。

とにかく風間は胸に爆弾を抱えたまま、捜査という激務を続けていく。自分の為じゃなく、生意気な後輩の為に。

そこがこのドラマの肝であり、描かれるのは“事件”じゃなくて“人間”。謎解きもへったくれもありません。



取調室から解放されたまゆみは、影山のライターを借りて、1枚の写真を焼却します。それは一晩だけチョメチョメした嶋本とのツーショット。



みやげもの屋で働いてると、よく観光客が一緒に写真を撮ろうと言ってくる。大抵はその場かぎりの交流なのに、嶋本だけは撮った写真を送ってくれた。

「みやげもの売場ってさ、毎日通過されるだけの暮らしじゃない? なんか、あの写真を持ってるとさ、何かが私を待ってるみたいなさ……そんな気がしたのよね」



「だからね、嶋本さんと会った時さ、とっても嬉しかったけど……浮かれたけどさ、好きとか嫌いとか、そういうのじゃなかったのよね」



「だから浮気したんじゃない。そういうのも浮気?」

「どこまでがホントで、どっから先がウソだなんてことはさ、簡単に決められることじゃないんだよ」

「痛い?」

「まあな」

「ごめんね」

ゴメンで済めばほんと警察は要らないワケだけど、風間は笑って許しちゃう。撃ったのは彼女でも浩太郎でもないしw



「その胸の弾は……オレの弾じゃ?」

「自惚れんなよ。お前の弾が当たるほど、まだモウロクしちゃいねえよ」



「川だよ、川ん中。お前のへなちょこ弾はさ。どうしても探したかったら、一生かけて川でもさらえ。そのうち分からあ、刑事ってもんがさ」

謎解きどころか、犯人を逮捕するシーンもなく第1話が終わっちゃう。あの勝新太郎さんのカルト作『警視ーK』でさえ「投げ手錠」という見せ場があったのに!

そういうクライマックスがあるのが当たり前で、それを見せるために刑事ドラマが存在すると我々は思い込んでますから、そりゃ戸惑うワケです。

けど、腐るほど刑事ドラマばかり見倒してきた、今の私には痛いほどよく解る。たまには王道からかけ離れたことをやってみたい創り手の気持ちも、それを実際にやらせてもらえた昭和という時代がいかにクリエイティブだったかってことも。

10年ほど前は楽しめなかった純情派じゃない『はぐれ刑事』だけど、レビュー続行中の『太陽にほえろ!』ではスコッチが退場しちゃったことだし、これからおいおい観て行こうかと思ってます。



この作品を彩るレギュラー女優陣は、新藤医師の嫁さんの妹でナースの美智子を、そして翌々年には『太陽にほえろ!』でスコッチの元婚約者を演じる、夏純子さんと……



滝川課長の若妻=淳子を演じる、浅茅陽子さん。



そしてボインぼよよ〜ん!な“ラリパッパのお京”こと、ホーン・ユキさんです。


 

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『俺たちの勲章』#01

2023-10-01 21:48:03 | 刑事ドラマ'70年代

『傷だらけの天使』が萩原健一さんの『太陽にほえろ!』卒業記念作ならば、1975年の4月から9月に全19話が放映された『俺たちの勲章』は松田優作さんの『太陽〜』卒業記念作。いずれも日本テレビ&東宝のタッグによる“青春アクション”ドラマです。

デビュー作『われら青春!』を終えたばかりの中村雅俊さんが相棒役ゆえ、後に『俺たちの旅』や『俺たちの朝』等へと連なる日テレ「俺たちシリーズ」の1作目と思いがちだけど、あちらは『ゆうひが丘の総理大臣』等も手掛けたユニオン映画の制作ですから、別ラインと捉えた方が良いかも?

一方、沖雅也さん主演の『俺たちは天使だ!』は東宝の制作ゆえ、『太陽にほえろ!』というドでかい幹から東宝(アクション系)の俺たちシリーズと、ユニオン映画(青春ドラマ系)の俺たちシリーズとに枝分かれして行った感じですね。

何にせよ、それら全てを企画された岡田晋吉プロデューサーの巨大「ユニバース」であり、優作さんと雅俊さん、そしてメインライターの鎌田敏夫さんはまさに、その象徴とも言える存在。

岡田さんが自作ベスト1に『俺たちの勲章』を挙げておられるのはきっと、“アクション”と“青春”の象徴たる御三方が揃った「集大成」との自負がお在りだからなんでしょう。

ちなみに初回ゲストは関根恵子(現・高橋惠子)さん。前回レビューした『傷天』#19のマカロニ&シンコに続いて、ジーパン&シンコの再会となります。




☆第1話『射殺』(1975.4.2.OA/脚本=鎌田敏夫/監督=澤田幸弘)

まずは横浜・相模警察署の捜査第一係に所属するハミダシ刑事=中野祐二(松田優作)の“アクション”シーンで物語は幕を開けます。

阿藤快をリーダーとする若者3人組が、売上金を狙って管内のスケート場を襲撃するらしいとの情報を得た中野は、あえて誰にも知らせずに彼らを待ち伏せ、犯行に及ぶのを見届けてから愛銃マグナム44をぶっ放し……



有無を言わさぬ一方的な暴力で、あっという間に全てを解決しちゃうのでした。素晴らしい!w



もちろん上司の野上係長(北村和夫)にはこっぴどく叱られるけど、そんなのは日常茶飯事。

ところが今回、全身から“青春”オーラを発する見慣れぬ男がクレームをつけて来ました。



「あなたはなぜ、事件を未然に防ごうとしなかったんですか?」

「ああ? なにが?」

「時間は充分あった筈です」

「オマエなにが言いたいんだ?」

「あなたが適切な手を打っていれば、あの3人は犯罪者にならずに済んだかも知れないと言ってるんです」



「だけどね、犯罪者を捕まえんのがオレの仕事なんだよ」



「犯罪者を1人でも増やさないことも、刑事の仕事だと思います!」

スリーピースの背広に身を包んだその男の名は、仙台の所轄署から転任して来たばかりの爽やか刑事=五十嵐貴久(中村雅俊)。

この2人の名前(祐二と貴久)が後に、『あぶない刑事』の主役コンビ(タカとユージ)へと受け継がれることになる。『あぶデカ』はセントラル・アーツの制作だけど岡田Pも企画に名を連ねてますから、同じユニバースに属する作品と言えます。

「あっそう。ま、それはそれでいいんじゃないの? あんたの考えからいけば、あのチンピラたちにスケート場を襲うのやめてくれませんか?って頼めばいいんだ。なるほどね」

「…………」

「だけどさ、スケート場を襲うのはやめるかも知れないけど、代わりに銀行襲うかも知んないよ?」

「!!」

そう、強盗を企てる阿藤快みたいなヤツらに、正論なんか通じやしない。五十嵐は刑事の理想像かも知れないけど、中野みたいに規格外な刑事もいないと凶悪犯とは渡り合えない。

だからこそ2人が一緒に行動し、互いの長所を学んで成長していくワケだけど、時は’70年代。先発の『傷だらけの天使』がそうであったように「青春」すなわち「挫折」ですから、そうは上手くいきません。

ただ、テーマが挫折であってもタッチは明るく、その見やすさも『傷天』と(引いては全ての岡田ユニバース作品と)共通しており、中野と五十嵐の対立はウェットじゃないし長引きません。

そのあと中野のいきつけである和風スナック「あすか」で昼食を共にする頃には、同じ劇団「文学座」の先輩・後輩である2人の独特な連帯感が伝わって来ます。(ちなみに上司役の北村和夫さんも文学座の大先輩)



気っ風のいい「あすか」の女主人=香子にはやはり岡田ユニバースの常連だった結城美栄子さん。そして人手不足だから仕方なく雇われてる店員「人手不足ちゃん」こと健次には、プライベートでも優作さんと親しかった佐藤蛾次郎さんが扮してます。



さて、中野と五十嵐にコンビ初のミッションが下されます。横浜で暴力団員が次々に殺された事件の凶器と思われる拳銃が、甲府で使用されたから「捜査協力してこい」と野上係長は言うのでした。

「またいつもの厄介払いですか」

「うるさい、私が行けと言ったら文句言わずに行けばいいんだ!」



中野のツッコミはまさに図星で、実は五十嵐も正義感が強すぎて融通が効かない厄介者ゆえ、なるだけ地方に出張させるべく中野と組まされた。

横浜を拠点としつつ、こうして2人がよその所轄に「とばされて」アウェイな状況下で捜査する、地方ロケを主体とした構成も『俺たちの勲章』の大きな特長。一方に『太陽にほえろ!』というスタンダードがあるがゆえの変化球です。



そんな2人に同情しつつ「無駄遣いしちゃダメよ」と出張費を手渡し、お尻を触られて「いやん、エッチ!」と頬を赤らめるのが事務員=雪子(坂口良子)のお仕事。何から何まで現在じゃあり得ない描写です。



資料室の生き字引き=宮本室長(柳生 博)と……



その助手を務める職員=上野原(山西道広)も数少ない2人の味方。柳生さんは雅俊さんの、山西さんは優作さんの主演作でいつも脇を固める名バイプレーヤー。



そして中野がいつも仕事の合間にデートする謎の美女は、本職ファッションモデルの鹿間マリさん。最終回に至るまでセリフは一言も発しません。

で、甲府に着いた2人は……



ただでさえアウェイなのに、たまたま入った店のラーメンが口に合わず「甲府の食い物は不味いっスね」なんてわざわざ言ったもんで、地元警察の島貫キャップ(中谷一郎)をいきなり怒らせます。

「甲府をバカにするなっ!💢」



そりゃ確かに2人が悪いw お陰で仲間外れにされ、何ひとつ情報を教えてもらえない中、中野と五十嵐は意外に地道な捜査で大きな手掛かりを掴みます。



それが関根恵子さん扮する、一見平凡な専業主婦の由美子。



横浜で数人のチンピラを殺した犯人(若い男らしい)は、どうやら彼女に会うために甲府を訪れ、公衆電話からその自宅に連絡した。そこで通りかかったパトロール巡査に職務質問され、とっさに銃を乱射して逃げたのでした。

けれど由美子は資産家の息子と結婚したばかりで、犯人のことは何も知らないと言う。



『太陽にほえろ!』では日本の連ドラ初となる女性刑事、『傷だらけの天使』ではちょっとおバカな水商売女、そして今回は清楚な奥さんと、若くして多彩な役柄をソツなくこなす関根恵子さんは、やっぱり大した女優さんです。



さて、近くに掘っ立て小屋を見つけた中野と五十嵐は、これまた地道に由美子を張り込みます。

青春のほろ苦さを描くにはリアリティーが必要不可欠で、そこは『太陽にほえろ!』もしっかり守ってました。現実の警察組織はどうこうってリアリティーじゃなく、人間の描き方に関するリアリティー。岡田Pのポリシーですよね。



で、犯人=修(富川澈夫)から再び連絡を受け、由美子が動き出します。どうやら2人はかつてチョメチョメな関係で、あるチョメチョメな事件をきっかけに由美子が姿を消し、修はその行方をずっと探してた。

修(オサム)っていう役名が『傷だらけの天使』の萩原健一さんと同じなのはたぶん偶然じゃなく、オマージュというか「楽屋落ち」みたいなもんでしょう。



そしてデパートの家具売り場で密会する、修と由美子。

「私、もう、あなたと関係ないのよ」

「分かってるよ、分かってる」

「あの人たちを殺してくれって、頼んだワケじゃないわ」

「お前のために殺したんじゃない、オレ自身のために殺したんだ」

どうやら修の殺しは復讐代行。もし、前回レビューした『傷天』#19のラストで修か亨が殺しを完遂してたら、きっと同じ末路を辿ったことでしょう。



↑ジーパンとシンコのキスシーンじゃありません。修を捕まえに来た中野を必死に止めようとする由美子は、どうやら修が嫌いで姿を消したワケじゃなさそうです。

「バカだよ、あんたっ!」



そんな由美子を突き飛ばし、中野と五十嵐は修を追跡します。

一般市民の軽トラやバイクを平気で強奪しちゃう『俺たちの勲章』の追跡シーンはどこかユーモラスで、そこにも生真面目な『太陽にほえろ!』との差別化が感じられます。



その道中、銃砲店に押し入って3丁の猟銃を奪った修は、山中の建設現場へと逃げ込むのでした。



追跡シーンだけじゃなく、銃撃戦の描き方も『太陽〜』とは随分違います。きっと、この第1話を観た人のほとんどが、これから展開する中野と五十嵐のやり取りを一番よく憶えてるんじゃないでしょうか?



まず中野が、五十嵐に援護射撃を命じて突っ込んで行くんだけど、五十嵐は安全装置を外すことを忘れて1発も撃てず、中野が慌てて戻って来る。

「オマエ、なんで撃たないんだよ!?」

「だって弾が出ないんですよ!」

「じゃあ分かった、オレが援護するからオマエ行け!」

「そんな、オレが撃たれたらどうするんですか!?」

「イチかバチかやってみろよ!」

「そんなメチャクチャな!?」

で、五十嵐が決死の覚悟で突っ込んで行くと……



中野がタバコを一服し始めてw、今度は五十嵐が慌てて戻ってくる。



「アーチッチ、アッチ!」

「どうして撃ってくんないんですかあーっ!?」

「ああ、悪い。ここからじゃ届かないんだよ」

「冗談は顔だけにして下さいよ!!」

優作さんが考えたアドリブかと思いきや、タバコで一服しちゃうくだりは脚本にもしっかり書かれてたみたいですw 『あぶない刑事』の時代ならともかく’70年代でこの描写は相当「攻めてる」んじゃないでしょうか?

さて、この辺りで地元警察が駆けつけて来て、2人は逮捕を急ぎます。

見よ! 岡田ユニバースの“アクション”を象徴する、優作さんのこのフォーム!



絶妙な手足の長さとそのバランス、しなやかさと俊敏さ。ただ斜面を駆け上がってるだけなのに超絶カッコいい!

「走る姿を“世界一”美しく見せられる俳優」って岡田さんが仰るほどのもんかどうかは判らないけど、確かに少なくとも日本のスター俳優で優作さんよりカッコ良く走る人は見たことありません。

それに比べて“青春”担当の雅俊さんは……w



この場面は(優作さんとの対比で)わざとカッコ悪く演じてるにせよ、普通に走る姿を見ても雅俊さんの動きは相当ダサい!

以降、いろんな刑事物でいろんなコンビが『俺たちの勲章』を意識してたけど、バランス的に最も近かったのは『太陽にほえろ!』におけるブルース(又野誠治)&マイコン(石原良純)かと思います。特に良純さんは雅俊さんのダサさを忠実に……どころか数倍濃い味つけで再現されてました。まったく無意識にw



閑話休題。修を説得させるつもりだったんでしょう、地元警察はこの修羅場に由美子を連れて来ました。

それで余計に逆上した修が猟銃を撃ちまくり、1人の警官が被弾して倒れる姿を見て、たまらず由美子は駆け出します。



「やめて! もう何もかも! やめて!」



それこそ、由美子と心中したがってる修の思うツボ。修が彼女に猟銃を向けて、中野がマグナムを構え、五十嵐がダッシュします。



そしてタックルを受けた由美子が、五十嵐もろとも斜面を転がり落ちていく!



女優さんがやるにはあまりに危険なスタントだけど、ちゃんとご本人が演じておられます。そこが昭和アクションドラマの凄味!



間一髪! いや、ほぼ同時に中野と修が発砲し、修が斜面を落下していきます。

致命傷を与えたのは明らかに中野のマグナムだけど、よく見ると修は自分自身の腹に銃口を向けており、中野は結果的に彼の自害を阻止したことになる。



死んだ修は、由美子に電話した公衆ボックスに、ツーショット写真を半分に破いた片方(由美子が写ってる側)を残してました。それで彼女への想いを断ち切ったつもりだったんでしょう。

「忘れて欲しかった……忘れて欲しかったから私、オサムちゃんの前からいなくなったのに……」

かつて由美子は、横浜でデート中にチンピラたちに絡まれ、修の眼の前で輪姦されてしまった。修はその復讐を果たし、彼女に別れを告げるために甲府を訪れ、いずれにせよ自殺する気だったんでしょう。

「死にたかった……私も一緒に死にたかった!」



泣きじゃくる由美子を見て、五十嵐も思わずもらい泣き。中野はただ黙って、引き裂かれたカップルの写真をさらに破いていくのでした。

中野と五十嵐はいったい、何をしに甲府くんだりまで来たのか? 初回からいきなり、なんともやるせない結末。これが’70年代を象徴する「挫折のドラマ」なんですね。

けど、救いもありました。地元警察の島貫キャップが、帰りの電車に乗る2人をわざわざ見送りに来て、由美子が旦那さんの待つ家にちゃんと戻ったこと、そして2人に伝言を残したことも教えてくれます。

「彼女、泣いてくれた刑事さんによろしくって言ってたぞ」

さらに2丁のラーメンを岡持ちから取り出し、「これが甲府の味だ」とニッコリ。このへんが『太陽にほえろ!』と共通する希望のスピリット、言わば「岡田イズム」なんだと私は思います。

恐らく松田優作さんはもっとクールでハードな刑事を演じたかった筈で、その欲求が翌々年の『大都会PART2』でようやく満たされ、刑事役に一旦ピリオドを打つことになったんだと勝手に推察してます。



そんなワケで、『俺たちの勲章』も基本的には“挫折”のドラマで、主役の2人が奮闘するも為す術なく、キレイな女性が不幸のどん底に落ちてくストーリーが大半を占めてます。

が、松田優作のアクション、中村雅俊の青春、そして鎌田敏夫の残酷が一挙に楽しめる贅沢さは、他じゃ味わえません。

以降、篠ひろ子、浅茅陽子、三浦真弓、金沢碧、真野響子、夏純子、そして五十嵐淳子(この共演をきっかけに雅俊さんと結婚)etcと続いていくゲスト女優陣の豪華さも含め、岡田ユニバースを代表する1本として見逃せない名作です。


 

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