普段は忘れているのだけれど30年前の6月、市内の住宅街でサリンが散布され、容疑は第一通報者の男性に向けられた。
散布現場は私の勤務先から200メートルほどの距離だった。
男性は松の木に群がる毛虫を駆除するために、自分で調合した強力な薬剤を散布したらしい。
勤務先では医療機器に関連して科学検査用のガラス器具も扱っていたから、刑事さんが、ガラス器具の納入先、店頭での購買者について聞き取り調査に見えたことを覚えている。
後は容疑者の自供を待つだけと思われていた。
しかし半年後、東京で発生した地下鉄サリン事件により、真相が暴かれた。