私が心霊写真やら衝撃映像を見たがったりすると、女房は私を悪趣味扱いする。スリルを味わう遊戯施設を乗りたがったりすると、呆れたりされるが、恐怖疑似体験を求める人間の心理いや真理を覗いてみよう。これもかなり前に学習したことである。
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【恐怖心と快楽】
恐怖とは生存本能と結び付いたこ根源的反応で、生きて行く上で必要不可欠な感情であるのは想像に易い。
危険な要因の接近を一早く察知し、回避する行動を起こす必要が生じるのは言うまでもない。。
第一のルートは五官を通じて得た情報を直接、視床下部に伝え、大脳辺縁系にある扁桃核に送られる道筋である。あらゆる生物が持つ危険認識システムであるようだ。
危険を認識すると、素早い危険回避行動をとらなくてはならない。
すると扁桃核はそのすぐ下にある反射的行動を司る視床下部にその信号を送り、視床下部は交感神経を通じて、自動車のターボを働かすように脳の活動を活性化させる。脳の活動を活性化するために必要なのが脳内覚醒物質ノルアドレナリン(noradrenaline)であるのは学んだことがあるだろう。
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第二のルートは五官を通じて得た情報が視床下部→大脳新皮質→視床下部→扁桃核と信号が送られる道筋である。ここで瞬時に分泌されるのが、アドレナリン(adrenaline)である。これは先のnoradrenalineと構造が似てはいるものの、高等動物にのみ存在する第二の興奮剤であるという。
このadrenalineは大脳活動を活性化させることによって、危険回避活動の最中に、「(外敵の)攻撃パターンを見る」「より安全そうな逃走路を探す」などの論理的思考を可能にさせる。
が、このnoradrenaline、adrenalineは興奮物質であるため、心臓に急激な収縮が発生ショック死することがあるらしい。
さらにadrenalineは心身に強い覚醒状態をもたらす。たとえば戦争に徴兵され、生きるか死ぬかの激しい銃撃戦の最中、時として怯えよりも、強烈な興奮をおぼえながら戦いに望んだといった報告がなされているがこれはランナーズハイと同じと考えてよい。
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この興奮状態はなぜ発生するのか。実は恐怖の元adrenalineを生み出すのは快感物質と言われるドーパミンであるそうだ。
このドーパミンがA-10(エーテン)神経から脳内に広く分泌されると快感が得られる。ところが脳を活性化させるnoradrenalineも恐怖の感情をつくるadrenalineも元をたどると、このドーパミンから作られている。快感物質から恐怖を生み出す機能は人間にしかない特別なものという。
本能のままに行動し、生きている動物達には戦うために必要なnoradrenalineと逃げるために必要な恐怖を生み出すadrebnalineが存在するだけ。ところが人間の高度な脳がもたらす恐怖とは快感物質ドーパミンがベースとなっている。と同時にnoradrenaline、adrenalineへと変化して行くという。
そして人間は、恐怖を感じたことにより、興奮物質adrenalineを精神的快感物質ドーパミンにすり変える能力があるのだそうた。そしてドーパミンは脳内に深い満足感や幸福感をもた
らすのであるからおどらあきだ。
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つまり人間の“恐いもの見たさ”の正体はこのドーパミンによる至福感を得ようとする人間だけの欲求といえるわけだ。
ところが平穏無事な状態が続くとドーパミンの分泌量が減ってしまう。人間がつくり出した安全システムが快感物質の分泌を減らしているみたいだ。
大昔、人間は弱肉強食の社会で、死の恐怖と共に生きなければならなかったが、社会という安全システムを作り上げ、猛獣に襲われることも、疫病や飢えの恐怖も、苦しむことがなくなった。だが、その恐怖の消滅によってドーパミンを分泌する機会を失い、分泌量が減ってしまったそうだ。
そして理由も判らない漠然とした不安感が生まれてくる。そこで人間はそんな時、恐怖の疑似体験(simulated fear)を求めるようになったから皮肉なものだ。
一方世の中には恐がりな人と、恐いもの知らずの人がいる。この差はいったいどこからうまれるのか。
哺乳類の恐怖心を左右する遺伝子としてFyn(フィン)遺伝子(Fyn gene=フィンジーン)が明らかになったという。これは恐怖心の制御に関るらしい。大脳神経細胞の連結部分のシナプスに多く存在し、これを除去すると神経細胞内での情報伝達が極端に減少し、強い恐怖心を抱くことにがマウスの実験等で確認されているという。またこのFyn遺伝子の働きは生まれつき決められているという。
確かに恐がりの傾向は遺伝によって形成されるが、これらをこれらをコントロールして積極的な正確を作り上げることも可能だそうだ。
人は成長過程で環境から刺激を受け、大脳皮質を発達させる。すると恐怖心を生み出す扁桃核との情報のやり取りがスムーズに行われるようになる。つまり多くを経験することで生まれつきの傾向は克服できるという。またFyn遺伝子活性化させるメカニズムも明らかにされつつあるらしい。
それはFyn遺伝子の機能に関するCNRファミリー分子群が発見された(CNR family Maleculer group)。シナプスの先端に位置し、神経細胞同士を結び付ける。いわば糊の役目をする。このCNR分子は脳の発達により、Fyn遺伝子と結合。その働きを活性化させ、恐怖心を克服させる高度な情報処理が可能になるという。
さらにヒトにおいてはFyn(遺伝子)の機能を高度に制御するシステムが考えられている。恐怖心の制御を高度に行えるということがヒトのチャレンジ精神につながっている可能性があるという。
あ~長かった。