地球にあしあと

地球の色々なところに足跡をつけてきました。

カミーノにあしあと 36

2010年12月30日 | Weblog
【36日目】7/31(土) Santa Irene → Santiago
いつもより早めの6:45にアルベルゲを出発。
昨夜同室だったフランス人のジュリアンも一緒に。


7kmほど進んだAmenalでようやく朝食。
バルは巡礼者でごった返しており、注文するのも一苦労だった。

しかもこのバルの従業員女性3人が非常に態度が悪く、客の注文を受け付けない。
注文しようとしても「ちょっと待って!後で!」などと遮り、一向に聞いてくれないのだ。
忙しいとはいえ、商売なんだから普通ちゃんと注文ぐらい取ってくれるのに。
巡礼者は礼儀正しいヨーロッパ人が大半なので、ちゃんと順番を守っている。

そんなわけで、バルのカウンターは注文をしたくてもできずに、イライラとしかし行儀よく待っている巡礼者であふれている。
そこへスペイン人だけが強引に割って入り、強引に注文して、お目当ての品をゲットしていた。

私たちもかなり時間がかかったがようやく朝ごはんを注文。
無愛想な従業員からパンやコーヒーを受け取り、外のテラスで食べる。
他の巡礼者も皆「ここのバル最悪よね」と不満を口にしている。


さて、食事も終わりいざお会計と言う時になっても、やっぱりバルの女性3人は態度が悪く、お金を払おうとする客に対し無視を決め込む。
ルーがかなりがんばってスペイン語で「お会計したいんですけど」と主張したが、「ちょっと待って」と言われ、そのまま放置。
お会計を済ませないことには出発するにもできない。

仕方なく、機会が訪れるのを待つ。
もうここへ到着してからずい分時間が流れてるなあ。
ジュリアンは私たちののんびりペースにはついていけないと判断したらしく、顔見知りの巡礼者を見つけてそのまま彼らと一緒に立ち去ってしまった。


しばらくまわりの巡礼者数人で「どうする?」と相談していたが、結局「ここは支払わずに行きましょう!」と英断(?)
い、いいのか
私たち、なんてったって巡礼者ですよ?
そのうち誰かが「ドイツでは3回申し出て3回無視されたら払わなくていいという決まりがある」とまで言いだし、食い逃げ決定。

置き土産として、スィナが取りだしたものは、以前どこかの教会でもらった教訓みたいなのが書いてある紙。
笑顔がどうとかこうとか言う内容で、わざわざスペイン語バージョンをこれ見よがしにテーブルに残して立ち去る。


あ~、いいんだろうか。
スィナも「巡礼に来て、初めて今日は罪を犯したわ!」とちょっとドキドキしている。
私たちも「追いかけてこられたらどうしよう?」と足早に歩く。

ま、今日にはSantiagoに到着し、「全ての罪が赦される」はずなんで、大丈夫かと思います、たぶん。




昨日まで元気だったマルコスが、今日は股ズレに加え胃腸の調子も良くないらしく、元気なくかなり遅れて歩いてくる。
途中、森の中で休憩しながら、エリザベスに教わったヨーデルをみんなで歌い、通り過ぎる巡礼者たちにお金をせがんでふざけてみる。

大ウケして笑ってくれる人もいれば、頭のおかしい連中を見るような目つきで通り過ぎる人、白けた感じの人、巡礼者の反応も様々だ。




さらに進み、お茶休憩。
最初の朝ごはんのバルで朝食を注文し損ねたトマスがパンを食べ、他のメンバーはコーヒーや紅茶でくつろぐ。







バルに併設されていた売店で、スィナと2人でこっそり隠れてルーへのプレゼントを買う。
先日からルーとスィナがお互いを「魔女」と呼び合ったりしていたことにちなみ、魔女のピンバッジを購入。
ルーとお別れする時のサプライズプレゼントにしようということで、こそっと私のポーチに隠した。


さあ、Santiagoまであともう少し。
「歓喜の丘」と呼ばれるMonte do Gozoの手前で昼食場所を探すが、これと言った場所が見つからない。
通りすがりの村人や馬に乗った人にも聞いてみると、Monte do Gozoまで行くと店があるらしい。

ところで今日はゆっくり後ろからついて来ているはずのマルコスが一向に現れない。
マルコスに歩調を合わせてトマスもずっと後ろにいるようだ。
一緒にランチしようにも、男子2人が全く追いついてこないので、どうしたものか。

そうこうしているうちに、Monte do Gozoに到着してしまった。
遠くに見えるのはSantiagoの町。




そしてここには、ヨハネ・パウロ2世の訪問を記念したモニュメントがある。




男子が来ないので女子だけで記念撮影。





待てど暮らせどマルコスとトマスは来ない。
仕方ないので、そばにあった教会でスタンプを押し、その隣の売店でホットドッグを買って食べながら待つ。
このホットドッグ、冷凍のをチンしただけのやつで、まずい。
まずい食べ物に当たるほどむなしいものはない。


ホットドッグを食べていると、次々と到着する巡礼者たち。
多くの人はここにあるアルベルゲに泊まり、明日の朝早くにSantiago入りする予定のようだ。
私たちはこのままSantiagoへと入る予定。


馬に乗ったカウボーイみたいな数人がやってきた。
すごいなあ、と思ったけど、ルーが一言「見せびらかしね」とバッサリ。

確かに…。
確かに奴らは「俺らかっこいいだろう?」的なパフォーマンスを繰り広げている。



ずい分待ってようやくトマスとマルコス到着。
どうやら彼らは途中の店で食べて来たようだ。


さあ、いよいよSantiago入りしましょうか。
みんなでSantiagoへ向かう後ろ姿を撮りっこする。












Santiagoは大きな町で、町へ入ってからカテドラルまではかなり遠い。
すでに道はアスファルトとなり、車が行き交い、レストランやビジネスビルが建ち並ぶ都会の様相。

あともうちょっとでカテドラルのある旧市街エリアなんだけど、ここに及んでまたバルへ入ってしまう私たち5人。
巡礼達成の前祝いとして、ビールなどで乾杯しませう。
私はまたクララ(レモンジュース+ビール)を飲む。




股ズレはつらいが、ホッとした表情のマルコス。





お酒も入り、ご機嫌に向かうカテドラル。
しかし、上り坂もあり意外としんどい。

お土産物屋さんが立ち並ぶ通りを抜け、石のアーチの階段を降り、16:00頃ついにカテドラルの前のオブラドイロ広場へ到着。



が、これと言った感動もない。
ああ、着いたなって感じ。
カトリック信者であるはずのスィナでさえ、「特に感動はないわねえ」と。


周りで他の巡礼者たちが大いに盛り上がって記念撮影しまくってるので、とりあえず私たちも撮っておこうか。









あと、カテドラルの建物はすばらしいと思うので、自分で撮った写真とルーがもっとうまく撮った写真を交えてどうぞ。














記念撮影が終わったら巡礼事務所へ。
私たちが到着した時は20~30人並んでいただけだったので、それほど待たずにクレデンシャルにスタンプがもらえた。

ここで到着を証明するスタンプをもらい、巡礼証明書を発行してもらうわけだが、先に聞いていた話では巡礼目的によりもらえる証明書の種類が違ってくるらしい。
宗教的理由あるいは精神的理由での巡礼についてはラテン語で書かれた正式な巡礼証明書、それ以外の理由であればスペイン語で書かれた到着歓迎書とかいうやつ。

私は「スピリチュアル目的」と答えようと心の準備をしていたのだが、なぜか全く質問されなかった。
窓口で呼ばれると、用紙に名前や出身国を記入し、次に巡礼目的に印をつける欄がある。
担当のおじさんは日本人とみるや「コンニチハ」と声をかけてきた。
そして私が記入用紙に記入している間に勝手にラテン語の方の証明書にささっと名前と日付を書き込み、記入用紙から顔を上げた時にはもう「はい」と渡された。

え?これで終わり?
おじさんは「終わりだよ。サヨナラ」と。
あ、あまりにあっけない。

普通、巡礼目的を聞くと共にSarria以降は1日2個以上のスタンプを押しているかどうか、クレデンシャルを厳密にチェックするはずなのだが…。





スィナは一応巡礼目的を聞かれたそうだが、わりとすんなりもらって戻ってきた。
ふと見るとルーが手間取っているようだ。
くるっと後ろを振り向き「ねえ、どっちの証明書かって聞かれてるんだけど、なんて答えたらいいの?」と。

「宗教的理由ならそっちのラテン語のやつで、その他の理由ならもう1個のスペイン語の方だよ」と教えてあげると、横からスィナが「あら~、そっちのスペイン語の方がデザインが素敵じゃない。そっちにしなさいよ」と。
え?デザインの好みで選んでいいんですか?

結局ルーはスィナの助言に従って、歓迎証明書をゲットした。
しきりにうらやましがるスィナ。
そこでうらやましがるって、なんか違う気がするけど…。


さらにルーが「ねえ、こんな筒売ってるみたいだけど、買った?」と聞いてきた。
見ると卒業証書を入れるような筒を手にしている。
そういえば筒を売ってるとは聞いていたが、私らは窓口の人から何も言われなかった。
「買ってない。欲しい欲しい!」と言うと、筒はルーがプレゼントしてくれた。
1個1ユーロ。



この後マルコスは自分の家に帰宅。
残った4人でアルベルゲを探す。

地図を見て、カテドラルから近いConvento San Franciscoという、教会に併設されているアルベルゲへ。
なんとそこには、あのハビエルが
グリンゴは近くの公園で草を食べているそうだ。

その他にも、以前Tosantosのアルベルゲで一緒になった、黒い犬を連れたスペイン人の巡礼者や、Grañonのアルベルゲでオスピタレラをしていたイタリア人のアニータにも再会。
いや~、嬉しいな


さて、アルベルゲは教会系なのでちょっとめんどくさい感じだった。
「今夜集いをやるから是非参加してね」と誘われ、また、「これを日本語に訳してほしい」と、祈りの言葉が書かれた紙を渡される。
私、クリスチャンじゃないから、こういうの翻訳するって難しいんですけど。

さらにはオスピタレラやシスターは、ニコニコして何度も抱きしめてくれる。
通りすがりにも意味なく抱きしめられ、こちらは「?」である。



Santiagoに到着したものの、日常の動作はいつもと同じ。
まずはシャワー。

急がなくてもいいのに、なぜかいつも通り5分ぐらいでシャワーを浴び終えてしまった。
まだ人が少ないので、せめて洗濯は焦らずゆっくりとやった。
あーあ、白いTシャツ、何回かオレンジ色のシャンプーで洗濯したので色移りしてしまっている。
もうどんなにこすっても色が落ちない。
これはFinisterreで燃やそう。



いつものルーティーンを済ませたら、再び町へ。
韓国人のカユンやスヤンにも出会う。
ピーター&マリア親子、キムの姿など探してみるが、見かけなかった。

オブラドイロ広場の反対側、キンタナ広場には長蛇の列ができていた。






「これ、何の列だろうね?」と言いながらとりあえず並んでみる。
たぶんカテドラル内見学の列だと思われる。

スィナが「家から持ってきた石を最後にSantiagoに置いて帰らないとね」というので、「ああ、そうだ。私が3つ持ってきた石の最後の1個が残ってるわ」と言うと、「カテドラル内に置いて行きなさいよ」と。
え?置くってどこへ?

「どこでもいいから、こっそりカテドラルの中のどこかに置きなさい」だって。
いいのかなあ~?

大阪の住吉大社から持ってきた「五大力」の石。
最後の1個「力」と書かれた石を手にとって眺めていたら、ふと思いついた。
「これ、ルーにあげるわ」

なぜなら、ルーの名字は「パワー」だから。
すっかり忘れてたけど、急にひらめいてルーにあげるとすごく喜んでもらえた。
ついでに石を入れて来たお守り袋も一緒にあげた。

うんうん、本当はSantiagoに奉納するつもりだった石だけど、これでいいと思う。
ルーと一緒にアイルランドへ行っておいで。
そしてルーに力を与え続けてあげてね。


ずい分並んで、ようやくカテドラルの中へ。
なんだか訳がわからないけど、警備員にせかされるままゾロゾロと歩く。
ふと見ると何やら見覚えのある後ろ姿が…。

あ、もしかしてこれ、聖サンティアゴの像やん

慌てて後ろからハグしたが、警備員が鬼の形相で「立ち止まらず先へ進め!」と観光客をせかしているので、本当に一瞬だけだった。
お祈りとかする暇もナシ。

サンティアゴにハグしつつ見た前方は、ミサの真っ最中。
聖職者たちがこっちへ向かって歩いて来ているのが見えた。
そう、サンティアゴ像はカテドラル中央の祭壇の真ん中にあるのだ。
こっち側からミサの風景を見れるって新鮮。

大混雑の中、あれよあれよと教会の外へ押し出される。
ふー、大変だな観光地も。
ああ、でもこれですっかり罪が赦されたよ。(たぶん)



今日はカテドラル見学だけで、明日の正午のミサに出席することにした。
ちょうど日曜日だし、ボタフメイロ(大香炉)も見れるんじゃないだろうか。



さあさ、無事巡礼完了を祝うディナーへ行きましょう

Santiagoは観光地なので、レストランがたくさんある。
どこも巡礼を終えてホッとした表情の巡礼者たちでにぎわっている。
あちこちでドンチャン騒ぎあり、パレードのようなものもあり、にぎやかだ。

どのレストランがいいのか分からないけど、とりあえずテラス席がゲットできたレストランへ。
せっかく巡礼を終えてもまだ巡礼者らしい行動から抜け出せず、10ユーロのディナーを。

ワインでかんぱ~い
ガリシア州は海産物と白ワインが有名らしいので、私は白ワインにしてみた。






目の前ではパフォーマーたちが音楽を演奏したりしている。




そこへ1人のバイオリンを弾くおじさんがいたので、スィナが「私の好きな曲演奏してくれないかしら」と。
「私が好きなのはパッヘルベルの『カノン』だよ」と言うと、スィナの目が輝き「ほんとに?!
その曲はまさに私の大好きな曲よ!息子の結婚式でも使ったの!やっぱりあなたとは何か通ずるものがあるわね!」と大喜び。

いや、有名な曲なんで好きな人多いと思いますけど…。

そこでスィナが「あの人にリクエストしてきてよ。私、あの曲弾いてくれるなら5ユーロ出すわ」と。
私は子供のお使いのようになり、曲名を書いた紙きれを持ってバイオリン弾きのおじさんのもとへ。

おじさんはうなづくと『カノン』を弾きだしたので、目の前に会ったバイオリンケースに5ユーロ札を入れて席へ戻った。
一度に5ユーロと言えば、大金じゃないですか。
がんばってよ、おじさん。

が、このおじさんの『カノン』下手くそやん

スィナと2人で「ちょっと、ちょっとぉ。何あの演奏?あの人あんまりカノン弾き慣れてないじゃない。5ユーロも入れて損したわね。とんだペテン師じゃん」と、巡礼を終えて清らかな身になったことも忘れ、悪態つきまくってしまった…。


その後、4人でワインを飲みながら巡礼のベストモーメント、ワーストモーメント、ファニエストモーメントなどを話し合っていると、マルコス登場。
わ~い、来てくれたんだ。




シチュエーションとは全く関係ないけど、ここでせっかくなのでルーの「変顔」を披露。




せっかくマルコスが来てくれたけど、私たち今夜もアルベルゲなので門限が…。
しかも教会系のところだから厳しそう。

「なんでこんな時に門限のあるアルベルゲに泊まるんだよ~。今夜は広場でイベントとかやってるのに」とぶつぶつ言うマルコスに謝りつつ、慌ててお会計を済ませてレストランを後に。

アルベルゲへ戻るには広場を横切るのが早いが、案の定今夜はライブがあるらしく、人、人、人で埋め尽くされている。
賢明なトマスは最初からそこを通るのを諦め、遠回りして帰ると言ったが、バカな女3人は「大丈夫!なんとか通り抜けて見せるから!」と手をつないで群衆の中へ。
場所取りで座ってる人たちに「すいませ~ん、すいませ~ん、通りま~す」と声をかけながら、時折誰かの足を踏んだりして「あ、ごめんね!」と言いながら、どんどんと人ごみの中に割り込んで行った。

ちょうど広場の真ん中あたりまでたどり着いた時、そこに柵が設置されていて通り抜けできないことが判明。
ええ

どどど、どうしよう?

仕方なく、また周りの人たちに迷惑をかけながら、3人で手をつないで元来た道をバック。
どうにかこうにか群衆から抜け出し、暗い夜道をアルベルゲに向かってダッシュ。
急げ~





必死に走ってゼエゼエ言いながらアルベルゲの前に到着すると、そこには鍵を持ったシスターが仁王立ちしていた。
トマスとその他2~3名門限に遅れたらしき巡礼者と共に。
たぶんトマスが私たちがもうすぐ帰ってくるからと頼んで待っていてくれたらしい。

すいません…。
怒られはしなかったが、無言のシスターに肩を抱かれ、アルベルゲの中へ誘導される。
全員入ったところで、門が閉まりガチャリと鍵がかけられた。


あ~、やばかったねえ、と話していると、オスピタレラが集いへの参加を促し始めた。
え~、こんな時間から嫌だな。

ルーはきっぱりと断り、私はそそくさとトイレへ逃げ、どうやらスィナは連れて行かれたようだ。
大丈夫かなあ、スィナ、かなり酔っ払ってたのに。

ほとんどの巡礼者は集いへ参加したようで、部屋に残っているのはほんの数名。
ルーが「あなたは信仰深い人?」と聞いてきたので、「一応それなりに信仰心はあるけど、かといって特定の宗教を信じるには至っていない」と答えると、ルーも「私もそうよ」とのこと。
よかった。

ベッドでゴロゴロしていると、23:00頃になってようやく集いが終わったらしく、みんなが戻ってきた。
スィナが私のベッドに座り、「集会では『カノン』の演奏があったのよ。あなたが参加しなかったから聞けなかったのが残念で泣いたわ」と2度も言い、ハグしてきた。

お酒も入っていたし、聖地へ到着した夜の集いで感傷的になっているのだろうか。

その後今度はルーのベッドに行き、長々と何か話をし、また泣いていた。
ルーがスィナの背中をさすっていた。



聖地巡礼を果たしたけど、これまでと特に何も変わらない感覚で、アルベルゲのベッドで就寝。

巡礼が終わった実感は、ない。



















本日の歩行距離:約24km
本日の歩数:32,596歩