『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  406

2014-11-18 07:08:13 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼は、出来あがっていた全ての風風感知器を容赦なくぶっ壊した。この仕事に携わっている者たち全員を集めて事の次第を説明した。彼らは、風風感知器の製作を再び一から取り掛かった。
 『モノづくりとは、このようなものか』オキテスは心の片隅で述懐していた。
 イリオネスは、キドニアからの帰途のニケの船上で思案していた。思案の一つは小麦の仕入れに関する交易人テカリオンからの『請求はいかほどか?』これが見えていない、その不安が気持ちをふさいでいた。二つ目は、何とかなるであろうという安堵感の存在を感じていることであった。そのための思考、手段は講じてはいるが、その思いが瞬時にヒックリ返る。700人余りの大所帯である、食べて残るとは考えにくかった。
 現状について脳を搾った。乾いたぞうきんである、滴る知恵はいかほどもない、じれったかった。今の我々一群は、『1人の稼ぎで10人が食べている勘定になるな』稼働状態を冷静に見つめた。稼働を現在の倍にすれば、何とか生きていける境地がそこにあるのではないかと思われた。もしもだ、稼働がなかったら、どうかと考えた、背すじが凍った。イリオネスは不安を心中に秘した。
 帰りのやや強めの向かい風の中をニケは、風に抗って波を割った。風に飛ぶ飛沫は、遠慮せずに船上の者たちの体を濡らした。
 イリオネスはオロンテスに声をかけた。彼はそうせずにはおれなかった。
 『オロンテス、ちょっと聞く。パンを売りさばき始めて、一カ月くらいだな』
 『はい、そうです』
 『始めたころより、売りの実績の推移ははどうか、いくらか増えているか?』
 『そうですね、この仕事を始めた頃は、1日の販売個数が、100個から110個くらいで、売れ残りのロスを発生させないという考えで仕事を続けてきました。ここ10日間の実績を振り返ってみますと、1日の販売個数が130個くらいとなっています』
 『そうか。まあ~、いい調子と言えそうだな。判った。了解した』
 それを聞いて、イリオネスは、未来を計った。それも明日か、明後日か、ごく近い未来をである。
 『獲らぬ狸の皮算用か。オーバーラン、売れ残りの許容を計って生産を増やしてみるか。そして売る、売れる工夫だ。売れ残りを発生させにくくする』
 彼は、その策の構築を決意した。
 『それにしても、一民族所帯はでっかい、一日全員が食べるパンが1000個、売るパンが130個。売るパンと食べるパンの数を比べて採算をとるには売るパンの数をどれだけにするか?』
 彼はこれについて懸命に考えた。この時代において、この答えは算出できたであろうか、それは定かではない。『答えは?』であった。