『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  845

2016-08-13 09:36:38 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 二人は昼食を忘れて話し合っていた。意義のある話は充実した内容であるといっていい、互いに満足を胸に抱いた。アヱネアスが言葉をかける。
 『遅くなったが、父上、昼めしを食べましょうや』
 『おう、いいな!』
 昼食の場を囲む、向かい合って食べる、簡単したての食事、場には話し合いの残心がこもっていた、
 『久しぶりの二人でとる食事だな』
 アンキセスがつぶやきながら酒杯を持った手を伸ばしてくる、酒を注ぐアヱネアス、二人は遠い昔に過ぎ去った日を想い出しながら、パンをうまそうに食した。食事を終えて、アヱネアスは浜へと歩を運ぶ。
 新艇が日に日にカタチを整えて仕上がっていく。今日も来訪者が来ている、見慣れぬ風体の者が新艇に見入っている。
 アヱネアスはいぶかしんだ。彼らはクレタの者ではない、話し合う言葉が聞きなれた言葉ではなかった。いぶかしみを深めるアヱネアス。
 『おい、オキテス、あれを見ろ!アイツらの話す言葉が聞き取れない。誰か聞き取ることのできる者がいないか』
 『風体を見たところクレタ人ではないようですな。クリテスを呼びましょうか?』
 『おう、そうしてくれ』
 オキテスは、傍らで作業をしている者に声をかける。
 『おう、5番艇の建造の場にいるクリテスを呼んできてくれ』
 『判りました』
 間をおくことなく姿を見せるクリテス。
 『おう、クリテス、頼みだ』
 『はい、何でしょう?』
 アヱネアスが声をかける。
 『アイツらの話していることが解らん。お前が聞いて、解るか、ちょっと、そばで聞いてみろ』
 『はい、判りました。やってみます』
 クリテスは統領から指示を受けて、新艇をはさんで向かい側に立つ、作業をするふりをして、耳をを傾ける。
 耳にする彼らの話声、彼は、デロスのアポロンの神殿で聞いたことがある言葉だと思い出した。
 クリテスは、彼らに話しかけようか、かけないでおこうかと迷った。言葉を解することができない、声がけをあきらめた。彼は、場を離れ統領のもとへと戻ってくる、復命する。
 『統領、彼らは、エルトリア人が使う言葉を使っています。話している内容については私にはわかりません。私にできるのは挨拶ぐらいです』
 『そうか、解った。『海の民』ではないのだな。人数はどれくらいだ?』
 『『海の民』ではないようです。身なりもそれなりに整っています。人数は15人くらいのようです』
 『そうか、自由にさせておこう。聞かれたら、クリテス、お前はここにいて、要望があれば、相手をしてくれ』
 『はい、判りました。私は向こうの新艇のそばにいます』


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