『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  178

2014-01-02 08:21:30 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アヱネアスの言葉を受けてオキテスは、テカリオンの顔を見た。
 『テカリオン、俺の話を聞くか』
 『え~え、聞きますとも、聞きますとも』
 『いやいや、まっこと、あれは奇跡以外の何物でもない。今、思うとミラクルだったな、、、、』
 彼は滔々と大漁の様子を目に見えるように語った。
 『なあ~、テカリオン、お前もそうであろうと思うが、海の上の事については、それなりに詳しいと言っていい。それなのに海の深いところは、まさに迷界だ。あのような釣果を得たのは奇跡だと思っている。この俺も知力、体力の限りを注ぎ込んでやった成果だったといえ、それをはるかに超える成果に感謝している』
 『それはそれは、結構でした。いやあ~、いい話を聞きました。こう言っては何ですが、今、私の船に積んでいる荷の中に、最も新しい鉄でできた釣り針があります。それを差し上げたいと思いますが、如何でしょうか。受け取っていただければ幸いといったところです。あの釣り針だったら、釣りあげた魚を取り逃がすことはないと思います』
 『おおっ!そうか、そんな釣り針をくれるというのか、それはありがたい!お前の言葉に甘えていいのか、ちょっとあとが怖いような気もするが。なあ~、オロンテス、お前どう思う?俺たちが使った釣り針は、寄せ集めの釣り針だったからな』
 『まあ~、そういったところでしたな』
 オキテスは、慎重に考えた面持ちで答えた。
 『テカリオン、いいのか、お前の言葉に甘えて、喜んで頂戴する。ありがとう、心から礼を言う』
 テカリオンとの話は一段落した。続いて、パリヌルスがテカリオンに声をかけた。
 『テカリオン、お前、このあとの航海予定はどのように考えている?よければ聞かせてくれ。お前をここに引き止める日数を考えている。今年も残すところ20日余りだからな』
 『私の予定は、ここでの用事を終えれば、北へ向かい多島の海域を東へ、ミレトスに3日ぐらい滞在して、用事を済まし、ミチィリーニに帰る。そういったところだ』
 『そうか、この季節に吹く風に配慮しての船旅といったところか。長くは引き止められないな。まあ~、いいだろう』
 『俺は、明後日には出航する。その頃には、いい風が吹くだろうと段取りしている』
 『判った。明日でも、みっちり打ち合わせをやろう。互いに大事な話もある、それでいいな』
 『おう、それでいい。前向きな話をしてくれよ』
 『判った。ところで、お前たち一行は何人だ。昼めしのことだ』
 『俺たちの事か。そんな気配りせずともよい、昼は準備している。俺たち総員は23人だ』
 『そう言うな。まあ~、昼めしは準備する。心づくしだ』
 『判った。お前の言葉だ。馳走になる』
 二人の話は終わった。


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