『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  998

2017-03-29 07:48:58 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ドックスが戦闘艇の試作艇に講じた2つの工作及びパリヌルスの衝角構造の形状の効果は、新しい意図をもって建造する戦闘艇を奇しくも科学的根拠不明のままの画期的な船としていた。
 戦闘艇は、風力効果の向上を目指した帆面積の拡大と風ハラミをよくした縫製工作、鋭角的な形状のレッジバウではなく船首に起きる波の抵抗を減殺するバルバスバウ的効果の衝角構造、船体後方の渦の発生を少なくする衝角構造体の末尾の流線形状工作で風力および漕力をもって航走する性能の向上した船として出来あがっていた。
 打ち合わせ会議は続く、パリヌルスは、一同と目を合わせる。
 試作艇に試乗しての感想、講評は出尽くした感じが場に漂っている、そのように感じたパリヌルスは場を見回して口を開いた。
 『試作艇の試乗感については、天候および海上の状況、条件におけるものであって、多様な条件下における感想並びに講評は、レテムノンへの新艇納入航海を終えてのち、改めて、話し合いの場を設けようと考えている。次は、この戦闘艇のこの部位の構造をこのようにしたらということについて一同の意見を聞きたい』と言って場を見渡し話を続ける。
 『ここをこのようにしたらとか、思いついたことがあれば言ってほしい』と言って、場の者たちと目を合わせた。
 オキテスの手が上がる。
 『おう、オキテス隊長!』
 オキテスが立ちあがる。
 『昨日の試作艇の航走で俺が感じたことを率直に言うとだな、艇尾の櫂舵は、両舷に設ける必要がないと考えられる。櫂舵の水切り部を大きくして左舷もしくは右舷の1座であればいいと考える。俺の考えとしては艇尾の中央に舵座を設ければいいのではないかと船を考えるときに考えている。この際に船尾中央に舵座1座の船を造ってみたいと思っている。また、この際だ、この試作艇でやってみたいとも考えている。これは実験であり、これからの船はそのようになると考えられることであろうと思っている』
 『おう、それは大胆であり、すごい発想だな。今日の午後、それについて考えてみようではないか。とりあえず、試作艇の櫂舵1座の方法を講じる、これは決定とする、ドックス船棟梁、即、取り掛かってほしい』
 『了解しました』
 ドックスが返事を返す。
 パリヌルスが頃合いを知るために太陽の位置の高さと方角を見て確かめる、会議続行の時間的余裕を測った。
 『ほかに意見はないか』と場を見渡す。
 『統領、軍団長、いかがですか?』
 アエネアスがイリオネスと目を合わせる。
 『おう、パリヌルス、今の俺には、これといった意見はない。軍団長、どうだ?』
 『私ですか、私も統領と同様、今はありません。パリヌルス、次の議題に進んでくれ』
 『解りました。では、次の議題へ進む。議題は、レテムノンへの新艇納入航海について、一同に説明する』


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