『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第11章  権謀術数  39

2008-05-01 07:33:56 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 ピロクテテスの矢で倒れたパリスは、周りにいた兵に虫の息で懇願した。
 『頼む!この俺をイデー山に連れて行ってくれ。頼む。』 彼は、息絶え絶えであった。イデーの山には、今は遠くなった過去に、愛したオイノーネがいる。彼は、無性に彼女のもとに行きたかった。パリスは、オイノーネのところにたどり着いた。彼は、彼女に苦しい息使いで頼んだ。
 『オイノーネ。俺を手当てしてくれ、頼む。頼りたいのは、お前だけなのだ。お願いだ!頼む。』
 彼女は、『うん!』 とは、言わなかった。『私を見捨てて10年の月日が経っている。今更、何なのよ。私は、貴方を許せない、許さない!』 彼に対しての感傷は何もなかった。
 『今頃、何を言っているの!』 と、パリスを相手にしなかった。彼女は、彼の死を、ただただ、静かに看とった。パリスは逝った。
 オイノーネは、泣かなかった。そのあと、彼女自身、自ら自分の命を絶った。
 パリスの死を知った母へカベは、非情の運命に泣いた。涙は、とめどなく頬をつたって流れた。
 パリスの死を知ったヘレンも泣いた。彼女の場合は、自分のあやまちを悔やんで号泣した。


最新の画像もっと見る