ピロクテテスの矢で倒れたパリスは、周りにいた兵に虫の息で懇願した。
『頼む!この俺をイデー山に連れて行ってくれ。頼む。』 彼は、息絶え絶えであった。イデーの山には、今は遠くなった過去に、愛したオイノーネがいる。彼は、無性に彼女のもとに行きたかった。パリスは、オイノーネのところにたどり着いた。彼は、彼女に苦しい息使いで頼んだ。
『オイノーネ。俺を手当てしてくれ、頼む。頼りたいのは、お前だけなのだ。お願いだ!頼む。』
彼女は、『うん!』 とは、言わなかった。『私を見捨てて10年の月日が経っている。今更、何なのよ。私は、貴方を許せない、許さない!』 彼に対しての感傷は何もなかった。
『今頃、何を言っているの!』 と、パリスを相手にしなかった。彼女は、彼の死を、ただただ、静かに看とった。パリスは逝った。
オイノーネは、泣かなかった。そのあと、彼女自身、自ら自分の命を絶った。
パリスの死を知った母へカベは、非情の運命に泣いた。涙は、とめどなく頬をつたって流れた。
パリスの死を知ったヘレンも泣いた。彼女の場合は、自分のあやまちを悔やんで号泣した。
『頼む!この俺をイデー山に連れて行ってくれ。頼む。』 彼は、息絶え絶えであった。イデーの山には、今は遠くなった過去に、愛したオイノーネがいる。彼は、無性に彼女のもとに行きたかった。パリスは、オイノーネのところにたどり着いた。彼は、彼女に苦しい息使いで頼んだ。
『オイノーネ。俺を手当てしてくれ、頼む。頼りたいのは、お前だけなのだ。お願いだ!頼む。』
彼女は、『うん!』 とは、言わなかった。『私を見捨てて10年の月日が経っている。今更、何なのよ。私は、貴方を許せない、許さない!』 彼に対しての感傷は何もなかった。
『今頃、何を言っているの!』 と、パリスを相手にしなかった。彼女は、彼の死を、ただただ、静かに看とった。パリスは逝った。
オイノーネは、泣かなかった。そのあと、彼女自身、自ら自分の命を絶った。
パリスの死を知った母へカベは、非情の運命に泣いた。涙は、とめどなく頬をつたって流れた。
パリスの死を知ったヘレンも泣いた。彼女の場合は、自分のあやまちを悔やんで号泣した。
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