第２章 トラキアへ １２２

　今朝のアエネアスは、戦いを控えた軍団の統率者の厳しさとは打って変わり、穏やかなまなざしで一同を見渡した。
　『今日は朝から、午後の前半くらいまでは、エノスの砦の領主とポリメストルの砦の件を処理する。パリヌルス、後のことよろしく頼む。それから、浜頭のトリタスを連れて行こうと考えているが、お前の考えはどうだ。』
　『それはいいと思います。道中は充分注意して、気をつけて行ってください。』
　『判った。浜小屋の建造の件だが、はかどっているか。チエックしておいてくれ。それから、我らの砦の建設の件だが、どの辺りがいいか、場所の選定について考えてほしい。また、これは大きな声で言えないことだが、我が軍団の兵力を確かめておいてほしい。また、負傷した者たちの回復具合もチエックしておいてほしい。今日は兵を休ませて、今宵は、浜頭、浜衆たちも招いて、ささやかではあるが慰労と祝勝の会をやろうと思っているが、考えてくれ。今日、イリオネス、アレテスの隊をつれて帰る。宜しくな。』
　『いいですね。皆が喜びます。統領は、私たちの一歩先を歩いていますね。私たちは安心してついて行けます。』
　『おいおいどうした。褒めてくれているのかな。ありがとう。パリヌルス。俺は、君たちを誇れるし、信頼して事を任せられる。大事を為すについて、君らがいてくれていることがうれしい。これからもよろしく頼む。』