『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  236

2014-03-25 07:38:37 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オロンテスは、二人の顔を見つめて厳しい口調で言葉を吐いた。
 『パンは、粉の出来具合が命なのだ。いいパンを焼く、全て、この第一段階の粉の出来具合にかかっている』
 『いやいや、全く、もって君の言うとおりだ。物を作る、物を造るということは大変なことであると判っている。まったく大変なことなのだ。オロンテス、お前は大変に苦労をしている。それが判るだけに、今のお前の事が、、、だ』
 『判ってくれるか。俺は、常に思っていることは、今やるべきことに自分の持っている全てを尽くす、その一言しかない。必ず報われると信じている』
 『お~お、それだ。感心、感心!』
 『その気脈をいいカタチで一同に通して事をやる。おのずといい結果となる。自分が手をかけられない、その分を気脈を通していく、むつかしいことだが真の心が通じる』
 『これはこれは、オロンテスからいいことを教わる。ありがとう』
 『人手がいるようであったら、この手を貸す。どうだ?』と言ってオキテスは両手を差し出した。
 『おう、ありがとう。いまは、充分に足りている』
 『ところで明日の事だが、俺たちも同行するがかまわんか?』
 『いいとも、こっちからもそう願いたいことだ。うれしい』
 『それについて打ち合わせておきたい』
 『判った。あちらへ行こう』
 三人は連れ立って打ち合わせの場に移った。三人の話はまとまった。
 『では、そういうことでいいな』
 オロンテスは作業の場へと戻り、二人は広場への道をたどった。二人は口を利くことはなかった。明日という波乱の日を控えた静けさが漂っていた。

 この集落に居住している者たちの中で朝一番早いのは、『自分を除いてほかにいない』とオロンテスは思っていたがそうではなかった。浜に来てみてそれが判った。
 今朝は、気が張っている。オロンテスは、飛び起きた。丑三つ時を少し過ぎた真夜中である。彼は、集落の中を通り過ぎて、広場を駆け抜けた。一目散に駆け抜けた。クレタは暖かいと言えども、今は初冬である、それなりの冷気の中を浜へ走った。浜辺には20人余りの男たちが朝行事を終えて、列を整えてセレストスの話を傾聴している。
 オロンテスはその風景を目にした。彼らはオロンテスに気づいた。オロンテスのほうに体を向けて、一斉に口をそろえて朝の挨拶を叫んだ。
 『棟梁っ!おはようございます』
 彼らの声は闇のしじまを切り裂いた。
 オロンテスは、驚いた。驚いている場合ではないと自分を律した。
 『おう、おはよう!俺は朝行事を済ます、ちょっと待ってくれ』


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