★星空日記コリメート風goo★

星や旅などの話題を「ひらい」が札幌から発信。2010年開設。2022年7月にteacupからgooへ引越しました。

冬の札幌市天文台

2023-12-23 06:00:00 | 札幌市天文台
 札幌市天文台の口径20cm屈折望遠鏡目盛環に部品を取り付けるため、12月に入ってから4回ほど天文台を訪問させていただきました。


 12月なのでまだ降雪が多くはないですがとても寒いです。12月20日(水)に撮影。
 日中の公開時間は10時から12時までと14時から16時まで。月曜日の終日と火曜日の午後がお休みです。

 私が天文台を訪れたとき、利用者は外国からのお客様が殆どでした。主に中国、台湾、韓国、シンガポール、タイ、マレーシア、アメリカ、オーストラリアといったところでしょうか。日本人は1割もいませんでした。

 なぜ、お国がわかったのかというと、部品取り付けで私が四苦八苦していると、大勢のお客様が来て天文台スタッフが天体導入しながら説明しているものですから、ついつい私も少しだけお手伝いしました。
 その際、Where are you from ? とお聞きし5ヶ国語別(中国語2種類、韓国語、英語、日本語)で作成されたパンフレットをお渡ししていたからです。


 昼間の天体を導入するため、目盛環のルーペを見ている天文台スタッフのTFさんです。12月20日(水)に撮影。


 降雪時は天文台までの通路を除雪している天文台スタッフのYHさんです。12月16日(土)に撮影。
 公開時間中は、晴れていなくても天文知識が豊富なスタッフが色々な説明をしてくれます。

 夜間の公開は日時を決め年間60回ほど実施しています。2023年現在、新型コロナウイルス対策のために夜間公開は完全予約制になっていますが、そのうち日中の公開のように予約不要になると利用しやすくなりますね。なお、利用は無料です。

 地下鉄駅から徒歩5分という交通の便の良さと、公開時間が長く回数が多いのが札幌市天文台の特徴です。夜空は明るいですが、月や惑星、明るい天体を楽しむことができ、日中でも太陽や星を見ることができる市民天文台です。
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昼間の星を見るため目盛環を改善

2023-12-21 06:00:00 | 札幌市天文台
 札幌市天文台は1958年(昭和33年)9月に開設され、架台が府中光学製で鏡筒部が東京光学製の口径20cmF12アクロマート屈折望遠鏡が1984年8月まで活躍していました。


 上の画像は1984年(昭和59年)10月に更新された2代目の五藤光学研究所製口径20cmF12アポクロマート屈折望遠鏡です。2023年現在、この望遠鏡を使い4人の天文台スタッフが日毎の交代で昼間と夜間の天体導入と説明に頑張ってくれています。

 なお、初代の古い口径20cm屈折望遠鏡は再利用可能なようにきちんと分解整理し、札幌市青少年科学館の倉庫にしばらく保管してあったはずですが、北海道教育大学札幌校へ譲渡したと私の後任者から聞いています。

 1984年の望遠鏡更新の際、口径のより大きな反射望遠鏡の導入をという声もありましたが、反射望遠鏡は保守や調整に難があるほかに気流発生の影響を受けやすいことから、以前と同じ屈折望遠鏡にしたいという私の意見が通りました。

 2代目望遠鏡が設置された1980年代ごろから自動導入の望遠鏡が民生機用として普及し始めたようですが、当時は動作がまだ不安定でした。望遠鏡更新時には自動導入機能を省いた費用分を見え味が良いアポクロマート対物レンズへのレベルアップ費用に充てた経緯があります。なお、アポクロマート対物レンズへのレベルアップ費用はかなり高価です。

 2023年になった現在でも、据付型民生向け自動導入天体望遠鏡の不安定さはあまり変わっていないようです。各地の天文普及を目的とした天文台に設置された自動導入天体望遠鏡が突然自動導入できなくなった場面を何度も見てきました。最悪の場合、長期間使用不能となり閉鎖された施設もあるほどです。
 また、自動導入機であるが故に急な天体導入に時間がかかり、手動導入の方が迅速に対応できる場合も多くみられます。


 札幌市天文台の20cm屈折の赤道儀架台の極軸南端には直径275mmの立派な極軸目盛環(赤経目盛環)が付いています。
 手動導入機であれば、目盛環はファインダーで見えない天体を導入する際に活躍します。極軸目盛環の最小目盛は時角の2分(=角度の0.5度)で、バーニヤ(副尺)を使うと時角の10秒(≒0.04度)までルーペを使って読み取れます。

 望遠鏡の仕組みを理解しているスタッフであれば、目盛環を使うと昼間の星も導入できます。札幌市天文台では昼間の公開時間帯に太陽・惑星・明るい恒星をスタッフが導入し説明をしています。天文台スタッフ4人とも極軸目盛環の時角目盛で昼間の星を導入しているとのこと。
 最近は天文アプリで簡単に地方恒星時と導入天体の時角が求められ、恒星時駆動しない極軸目盛環の赤道儀が多いことから赤経目盛で導入するスタッフを見かけなくなりました。



 口径20cmクラスの調整良好な望遠鏡を使えば昼間でも明るい星を簡単に見ることができます。晴れていれば昼間でも、はくちょう座の有名な二重星「アルビレオ」の主星(3等級)はもちろんのこと伴星(5等級)も見られます。(私の体験上、口径20cm屈折望遠鏡だと昼間でも透明度がよければ6等級の恒星がギリギリ見られます。)


 ところで、札幌市天文台の極軸目盛環(赤経目盛環)がクランプしても僅かにスリップするようだと天文台スタッフからお聞きしました。
 検証の結果、スリップ現象がほんの僅か発生することを私も確認しました。スリップする最大量は時角目盛の1分=角度にして0.25度ほどのようです。

 スペーサーを介しているとはいえ、クランプを強く締めると目盛環が僅かに回転してしまうことからクランプを強く締められず、クランプが緩いとちょっとしたことでスリップが発生してしまうようです。目盛環を横から押さえる単純なネジ固定方式だと目盛環の偏心が発生することからメーカーではこのような精密構造にしているはずですが、クランプする際の位置合わせ微調整が難しいようです。

 夜間の天体導入時には目盛環にそれほど頼ることがありませんが、目盛環のスリップが少しでもあると昼間の恒星を導入する際、視野内に導入できたとしても視野内をキョロキョロと探すことになります。
 この望遠鏡で最近多用されている接眼鏡は8mm〜24mmのズーム接眼鏡で、低倍率側だと100倍0.5度の視野です。スリップ角度が0.25度もあると視野から外れてしまうかもしれません。できるだけ視野中央に天体導入するためには極軸目盛環のスリップ防止が必要でしょうね。

 1984年の望遠鏡更新を担当した私の責任も感じたことから、目盛環のスリップ防止と目盛環位置の微調整ができる装置を勝手に作り提供することにしました。


 手持ちのアルミ部材で作ってみると、ボルトだらけのスリップ防止装置になってしまいました。メーカー品の目盛環部品に穴あけ加工すればもっとシンプルに作れるのですが、部外者の私が目盛環本体に加工を施すことを避けました。


 12月20(水)に札幌市天文台を訪問し、スタッフの了解を得てからスリップ防止部品の取り付けをさせてもらいました。なお、スリップ防止部品は強力な粘着テープで目盛環の底板に固定しているだけなので、いつでもスリップ防止部品を取り外しできます。
 とりあえず、14時ごろにテレスコープイーストの位置で「こと座のベガ」を導入し、目盛環を調整固定しました。使い心地はどうでしょうか。



 ところで、長年各地の天文普及施設をいくつも見学させてもらった体験から言わせてもらうと、大事なのは望遠鏡や施設といったハード面ではなく、人材育成といったソフト面が最も大事です。人材育成を疎かにした施設の衰退をいくつも見てきました。

 この点、札幌市天文台の古典的な望遠鏡を活かしてくれているのは4人のスタッフの熱意と努力だと私は感じています。これからも親切で丁寧な天文普及業務を担っていただきたいと願っています。
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古い書籍を探した後の花見

2023-05-31 06:00:00 | 札幌市天文台
 古い天体暦を見て調べたいことがあり、札幌市天文台を訪問してきました。

 札幌市天文台では、天体暦のひとつである「ロシア暦」が毎年購入され、開台した1958年以降1980年ごろまでの数十冊が保管されていたはずですが、書棚に見当たりませんでした。
 天文台の管理は1981年から札幌市青少年科学館が行なっていますので、科学館の書庫を以前に見せてもらったことがあります。科学館でも「ロシア暦」が見当たらず、どうやら廃棄されてしまったようです。残念。

 天体暦というのは、GPS装置などが発明される以前は天体の位置を測ることで航海の経路を確かめるための必携書籍でした。海洋国家であれば国が威信を持って編纂発行し、日本では海上保安庁が2010年まで発行していました。太陽や惑星の毎日の位置など(動きが速い月に限っては1時間毎の位置など)が精密に計算され、数値の一覧表だけが掲載された数百ページの分厚い書籍です。
 代表的な天体暦として、フランス暦(1679年に初版)、イギリス暦(1767年に初版)、ドイツ暦(1776年に初版)、アメリカ暦(1855年に初版)、日本=天体位置表(1942年に初版)、ロシア暦などが発行されていました。詳しくは、「天体暦」でサイト検索してみてください。

 なぜ、札幌市天文台で日本や欧米の天体暦ではなくロシア暦を毎年購入していたのか不思議ですよね。
 私の推測ですが、その理由として、①ソビエト連邦(ロシアも含む)の書籍を扱うナウカ社の取次店(支店?)が1950年代から札幌市の北海道大学の近くにあったこと ②ロシア暦が比較的安価だったこと ③1958年の開台時から天文台技師だった林耕輔さんの北海道大学農学部在籍時における第二外国語がロシア語だったこと が挙げられると思います。

 探していた書籍はありませんでしたが、せっかく天文台に来たので望遠鏡の外観を撮影させてもらいました。
 日中は10時から12時まで、14時から16時まで太陽・金星・明るい恒星などをスタッフが手動導入し、観客にお見せしています。入場は無料で予約不要です。

 望遠鏡の説明看板に「口径比 F12」とか「ドイツ式赤道儀」というやや専門的な字句が説明なしで書かれているので、どうせなら天文マニアさん向けに「口径20cmアポクロマート対物レンズ」という字句も入れておくのはいかがでしょう。ちょっと専門的すぎますかね。
 なお、夜間の公開もありますが、コロナ禍が続いている2023年5月の現時点では完全予約制が継続されています。

 天文台からの帰り道、中島公園内にはライラック(リラ)と遅咲きの桜が咲いていました。


 ライラックです。とてもいい香りがします。5月17日(水)に撮影。


 天文台がある岡田山の裾野に咲いていた遅咲きの桜です。
 5月17日の時点だと、自宅の近隣の桜はすでに散ってしまっているので、桜とライラックの競演が見られるとは思っていませんでした。
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2023年GWの初日に札幌市天文台を訪問

2023-05-03 06:00:00 | 札幌市天文台
 札幌市天文台は観測室リニューアル工事のため、2023年3月13日(月)から3月24日(金)まで臨時閉台中でした。
 リニューアル後の札幌市天文台がどうなったか気になり、4月29日(土)の午前中に訪問してきました。


 中島公園内の小高い丘、岡田山に設置された札幌市天文台です。1958年から65年間ここで天文普及活動を続けてきた札幌市所有の施設です。
 2023年の札幌は、例年よりも2週間ほど早く桜が満開となり、中島公園の桜も見事でした。曇りがちの天候だったのが残念。


 10時過ぎに中に入ると、1984年に更新された五藤光学製の口径20cmF12アポクロマート屈折望遠鏡で太陽を観望中でした。対応している天文台スタッフ林さんの丁寧な対応が相変わらず見事です。GW中の来客者増に備え、札幌市青少年科学館職員の本田さんが応援で案内業務をしていました。

 床が張り替えられていました。最初、絨毯?かと思いましたが、防水タイプの床材でした。天文台スタッフさんが自ら行う掃除が楽そうです。
 リニューアル工事で内壁の壁が塗装し直され、天文台スタッフ4人が手作りしていた展示パネルも更新されていました。今回のリニューアルではドームの張り替えが見送られたそうです。

 月曜日や火曜日の午後を除き、日中は太陽、金星、明るい恒星などが観望できます。
 年間計画に従って年間60日ほどの夜間公開日が設定され、2023年4月時点では予約制で観望可能です。コロナ禍が落ち着けば以前と同じように夜間公開も予約不要の観望に戻ると思います。

 私が滞在した1時間ほどで来台した50数人の観客のうち、半数以上が外国の方でした。

 帰路は中島公園内をゆっくり歩き、5分ほどで地下鉄中島公園駅へ。
 公園内は、GW初日で大勢の人で賑わっていました。子供連れのファミリー、花々の写真を撮るカメラマン、和服を着ながら散策する外国の方、ボートを漕ぐカップル、犬を散歩させる熟年夫婦など春爛漫といった風情でした。

 この中島公園、札幌の繁華街ススキノを北側に控え、夜空が街明かりで光害が酷く、一時は郊外へ天文台の移転計画が持ち上がったと聞いています。他都市の事例では最初から夜空が暗く交通の不便な郊外に設置する例が多いようです。

 しかし、市民が気楽にフラッと立ち寄れる市民天文台として、利用者数が毎年1万人以上もある数少ない天文台としてこれからも中島公園のままで100年以上存続して欲しいと強く願っています。

 単に施設の存在の長さが大事なのではなく、地道な天文普及活動をマンパワーが継続していることに意義があります。その施設を活かすために日々努力している天文台スタッフさん4人の丁寧な市民対応に頭が下がります。
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札幌市天文台の内装工事

2023-03-20 06:00:00 | 札幌市天文台
 札幌市天文台は、観測室の内装工事などのため2023年3月13日(月)から3月24日(金)まで臨時休台中です。


 2022年4月に札幌市天文台訪問した際、1984年10月に更新された2代目の口径20cmF12アポクロマート屈折望遠鏡を撮影させてもらいました。

 ところで、2023年3月の内装工事開始の前に、天文台スタッフのYさんから私に問い合わせがありました。


 「内装工事に際し、望遠鏡をカバーで覆ったのですが、これで合ってますか?」という問い合わせでした。(画像はYさん提供)
 1984年の望遠鏡更新を担当したのは私なのですが、望遠鏡カバーのことは完全に忘れていました。大変失礼いたしました。

 望遠鏡カバーは五藤光学さんの特注品です。東京都府中市の志村シートさんが製造し、1984年8月21日に五藤光学機械課さんへ納品されていることが、見せてもらった添付書類で確認できました。

 添付書類に書かれていた納品日の1984年8月と、2代目望遠鏡を初公開した1984年10月とは時期的に重なり、私が札幌市天文台業務を所管していた時期です。つまり、私が望遠鏡カバーを受け取ったことは間違いないようです。
 齢を重ねると記憶がどんどん消えていきます。(笑)

 大型望遠鏡をすっぽり覆うカバーまで購入時の付属品としている五藤光学さん、さすがですね。

 望遠鏡カバーを天文台の中から探し出し保管してくれたのは天文台スタッフのHさん。工事に備えカバーをかけてくれたり、普段から望遠鏡を丁寧に大事に扱ってくれている口径20cm屈折望遠鏡は、私の娘(息子?)みたいなものと私は勝手に思っています。天文台の4人の優しいスタッフの皆様、ありがとうございます。
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