モールス音響通信

明治の初めから100年間、わが国の通信インフラであったモールス音響通信(有線・無線)の記録

電信競技会(その2)

2017年10月06日 | モールス通信
◆電信競技会(その2)

戦後は一般の混乱とともに技両の面でも著しい低下を示したが、電信再建は利用者の信用獲得にあるとの見地から、この方策の一端として競技会による技両向上が強く望まれ、あわせてこれにより沈滞した職員の士気の高揚を図ることとなった。

このため昭和22年には当局に参加選手部内122名、運輸、内務両省、各新聞通信社から13名を迎えて早くも第1回全国競技会が行われた。このときの選手年齢層を昭和15年の際と比較すると、平均29歳は変わらないが36歳以上が15年の8%に対して22%と約3倍増、26歳から35歳が前回の72%に比べ、34%と半数以下に減少している。

以後、全国大会はこれに対する現業局段階、通信局段階の各予選とともに毎年開催されている。競技種目の内容については、サービス提供上の措置に関連して、29年の全国大会種目に和文タイプ二人組電話、電報配達等の4種目が追加されるとともに、欧文タイプ音響、和文ブザー、和文無線現波タイプ受信及び和文鍵盤さん孔の4種目が除かれている。
競技会種目<29年種目の新規開始年>
昭和15~29 和文タイプ、欧文タイプ、和文印刷さん孔
昭和22~29 和文タイプ二人組音響
昭和24~29 和文タイプ高速度
昭和26~29 内国和文受付
昭和27~29 国際受付
昭和29   和文タイプ二人組電話、和文印刷貼付受信、電報配達、和文中継交換印刷さん孔

なお、競技問題は普通辞をもって記載した模擬電報を用い(国際受付競技は英語を使用し暗語も可)、競技時間は受付競技は20分間、配達競技については25分間、通信競技については10分間、その他は送受各5分間とした(電信競技要綱)。

別に23年8月、当局で行われた最高記録電信競技会における和文通信で、1分間142字※(中島松太郎)、欧文通信で同様158字(山火茂吉)、タイプ受信では和欧文とも140字(和文内藤秀夫、欧文野口善作)、和文印刷さん孔で321字(有馬武夫)などが記録された。
(注)音響通信ではこの1分間142字が、公式の記録では、私が知り得た最速の記録です(増田)。

当局と大阪局との間で親善の目的を持った東西対抗の競技会は昭和26年3月にその第1回が大阪で行われ、以後年1回の開催で当局と場所を交替して続けたが、32年度をもって中止となった。

全国競技会は公社発足とともに改めて昭和27年10月、第1回として始められたが、内容は従来のものと変わることなく、毎年1回名古屋、東京、大阪などで開催された。

このように競技会は、これらの予選を含めて年中行事として毎年活発に開催されてきたが、昭和33年は種々の事情からこれを中止し、その後は隔年開催となった。(注)

(注)33年の競技会中止後、隔年開催となって記録は終わっている。その後の開催については、調べたが不明のままです(増田)。

<参考>

◆第4回電信競技会全国大会

手元に昭和30年10月21日に名古屋商工会議所で開催された第4回電信競技会全国大会の模様を伝える日本電信電話公社報があります。以下その概要です。

1)競技種目~29年度と同じ11種目
2)通信局対抗総合成績の優勝は中国通信局で、総裁杯を授与。
3)各種目の参加者氏名と得点が掲載されている。
4)大会委員長講評、会長(靭勉公社副総裁)あいさつ、公社総裁(梶井剛)式辞が掲載されている。

◯大会委員長講評(抜粋)
本大会は、部内、郵政省、日本国有鉄道、国際電信電話㈱その他官公庁、新聞社、主要会社等より選出された全国のエキスパート延241名のもとに実施された。

競技の成績を総括的にいうと新記録は部内11種目中8種目に上り、主要8種目の失格者は平均22%で従来に比べ著しく減少したばかりでなく、得点も全体的によく非常に優秀な成績だった。
1、印刷通信は、現在全そ通数の約60%を占めているばかりでなく、将来、電報自動中継化の拡充とともにますます増加してゆく極めて重要なもので、従来に比し非常に優秀な成績だった。
①貼付式印刷機械通信のさん孔、貼付受信とも第1位は新記録(1分間のさん孔速度332字)だった。
②中継交換方式印刷機さん孔は、昨年度始めて競技種目に加えられたもので、昨年は機械化実施の7通信局の7名であったが、本年度は全通信局からの参加があった。第1位の成績は新記録(1分間のさん孔速度309字)だった。
2.音響通信は、電報そ通上閉める割合は、漸減のすう勢にあるとはいえ、なお全そ通数の27%を占める重要なものである。その成績の第1位はこれ亦新記録(2人組合音響通信において1分間128字)であった。
3.電話通信の競技方法は、電報取扱局相互間の送受方法によったが、電報通信は、電報局相互間だけでなく、公社直営局の全受付の54%を占める電話発信、配達電報通数の35%を占める電話送達に関係する重要なものである。これ亦第1位は新記録(1分間134字)だった。
4.国内和文電報受付(略)
5.国際電報受付(略)
6.電報配達は、電報の送達過程の最終段階として、電報を迅速、正確に受取人に配達するばかりでなくお客との応待態度においても常に公社を代表する者であるとの自覚のもとに職務を遂行しなければならない。従って、配達競争の審査では配達作業の適正だけでなく、応待態度、言葉づかいなど受取人との応待についても十分審査した。(略)
7.各通信局の総合成績は、24年度以降東海、東北通信局が交互に優勝していたが、今回は中国通信局の優勝となった。
8.官公庁、新聞社、主要会社等参加の各競技は、総体的な得点は従来のものより高かった。

◯会長あいさつ(要旨)
電報・電話サービスの良否は、政治、経済および文化活動を左右するといっても過言でなく、電気通信事業が公共の福祉に寄与するところは極めて大きい。
本年は、終戦後満10年に当る。終戦当時戦禍のためその半分近くを失った電気通信事業も、今や量、質両面において戦前を凌ぐ復興を遂げた。昭和29年の電報サービスの速度と正確度は、それぞれ普通信で平均所要時分が48分、平均誤びゅう率が1万字当り12.5字で、終戦前後前後を通じ最良の成績を示すに至っている。

これはもとより国民各位の支援によることは勿論であるが、事業に従事する職員の不断の工夫と努力による結果で、特に取扱局皆の尊い汗の結晶である。

しかしながらこの程度の成果に決して満足することなく電報を利用する人達の立場になって、更によりよいサービスの提供に努力を続け、電報を少しでも早く送達し、また、たった1字の誤りでもそれによる損失は決して小さくないことを忘れず、電報の使命の重大さをさらに強く認識し、最善を尽くさなければならない。電報の取扱に従事される者の通信技倆の良否は、そのまま電報サービスの良否を左右する。

本日第6回目の電信電話週間における最大行事の一つとしての、電信競技会全国大会において、全国2万4千の電信職員から選抜された者が、電報取扱の正確性と迅速性について優秀な技倆を競うのは、そのままわが電報サービスの生産性の最高水準を表象するもので、意義深い。

本大会に郵政省、日本国有鉄道、国際電信電話㈱、をの他諸官庁、諸会社等の代表選手の参加により、名実ともに、わが国の電信の祭典にふさわしい大会にすることができた。

選手は日頃の錬磨した優秀な技倆を十分に発揮した。事業進展の象徴となる本大会が、明日への飛躍と発展の契機となることを期待、切望する。

◆出典 東京中央電報局史(昭和33年12月1日)東京中央電報局編集 
    財団夫人電気通信協会発行






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