【 「労働ビッグバンと再チャレンジ支援」という名のペーパーが経済財政諮問会議で議論されている。民間議員4氏が連名で提案したものだが、これほど強引でバランス感覚に欠ける主張も珍しい。これが実現すればわが国の貧富の格差はさらに広がるに違いない。
ペーパーは前文で「複線型でフェアな働き方を実現させ働く人ひとりひとりが『働くことへの誇り』を持てるようにし、同時に企業活力を増強させるよう関連制度を包括的に見直す必要がある」とうたっている。一見公正であるようだが、真の狙いはそんな生易しいものではない。
現に中心的役割を果たしている八代尚宏氏は「日本のような正社員と非正社員との身分格差は賃金の年功制や過度の雇用保護から発生している。仕事能力にかかわらず雇用が保護されている正社員の既得権の見直しが重要である」と主張している。つまり、労働の規制緩和の名のもとにさらに労働者の非正規化を推進しようという狙いなのだ。
これは労働現場の実態を全く無視した議論である。規制が緩和されれば「転職の自由度」が高まり、より効率的な労働市場が確率するというが、それは働くものが経営者と対等の立場に立ってこそ可能なのだ。しかし、現実は天地の差がある。そのために労働者に団結権が、経営者と対等に交渉できる道が開かれたのである。そして、労使交渉で勝ち取ってきたのが労働関係の規則なのだ。
ビッグバンがまかり通れば経営者は正社員をもっと解雇し、コストの安い非正規社員を増やすであろう。そうなれば労働者の生活は低下し、子供を産むことも難しくなる。極端に言えば、社会崩壊へつながる契機となりかねない。実現を阻止するよう労働組合の奮起を促したい。 (邦) 】
12月13日付『毎日新聞』 経済欄コラム「経済観測」である。
極めてまっとうな意見というか、今日の日本の労使状況に危惧を抱きつつ述べられていると思う。
日本国憲法、労働基準法、教育基本法が機能していれば何とか国民の生活はぎりぎりのところで守られるのではないか。と思ってきたが、すべての面で危うくなってきた。
権力を縛る法律はすべて換骨奪胎し、形骸化し、骨抜きにしようとしている。
労働者が国を背負う。労働者が生き生きと明るく生きてこそ国である。
日本が近代国家として存続しうるかどうか、瀬戸際であろう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます