伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

福島第一原子力を特別委員会で視察

2015年02月17日 | 原発・エネルギー
 いわき市議会東日本大震災復興委員会の原発事故対策分科会で、東電福島第一原子力発電所の事故収束作業の状況などを視察してきました。写真撮影は、様々なセキュリティ対策の外部漏えいを防止するためという理由で禁止されており、東電撮影の写真をいただけることになっていますが先の話。とりあえず言葉だけでお知らせいます。

 今回で事故収束作業の視察は3度目。2012年7月、2014年5月と視察してきましたが、現場が変化していることは感じることができます。

 例えば、汚染水を保管すするタンクからの漏洩事故が起こった時、漏洩防止の堰などが問題になりました。昨年5月には堰を鉄板を使って嵩上げする工事が進んでいましたが、現在は完成。おまけに堰の上に屋根をかけ、雨水がたまらないようにする措置までとられていました。漏水事故をおこしたボルト締めのフランジ型タンクは、溶接型のタンクに切り替えられ、前回も説明にありましたが、現在は外部で作ったタンクを船で運び据え付ける工法もとられ、そのために通路となる道路では、張り出した枝の伐採やヨコ型信号機をタテ型に変更するなど、障害物を取り除く工事も行われていました。

 さらに3号機建屋の上部で露出していたガレキは取り除かれていました。2012年の視察で印象に残り、昨年の視察時のそのままだった、建屋海側の窪地の車両などの津波ガレキも取り除かれたようでした。

 何よりも、2012年にはJヴィレッジからタイペック等の万全な装備が必要だった視察が、昨年もそうでしたが、特別な装備がない軽装で構内入りすることができるようになったことは、線量の低下をはじめ作業環境の改善を実感させます。構内視察バスから降車しない視察では、軽装のままで大丈夫(昨年の視察はそうでした)ですが、今日の視察は事故建屋近くで降車し視察する内容などもあったので、タイペックに2重の靴下、木綿手袋の上に二重のゴム手袋、そして防塵マスクにゴーグル(メガネ着用者はメガネのまま)を着用しての視察となりました。

 さて視察は、第一原発に入り、まず入退去管理棟で線量計を受け取った後、重要免震棟で装備を着用し、バスに乗り込み現場の視察に向かいました。

 最初に高性能多核種除去設備です。ここでは下車して設備の内容を見ました。
 従来の多核種除去設備に比べ、放射性廃棄物の発生量抑制できることから「高性能」が冠されています。フィルターで水の浮遊物の除去とセシウム及びストンチウムの粗取りをした後、7種類の吸着剤を混ぜあわせた吸着剤の入っている吸着塔を通過させて処理するそうです。20基ほどの吸着塔は、それぞれの容量に微妙な違いがあります。なぜなのか質問をすると、それ吸着剤の混合比率を変えてそれぞれの核種に対応ためという説明です。


東京電力Hpより。IAEA査察時の写真で背後の円筒形のものが吸着塔。

 続いて増設多核種除去設備の説明を車内で受けました。これは最初に作られた多核種除去設備(アルプス)につづいて作られたものですが、沈殿槽を通した汚染水をフィルタ、吸着塔と連続して処理する設備です。

 これらの設備で汚染水に含まれる62の核種を除去し基準値以下にできるといいます。しかし、水と同じ性質を持つトリチウムを除去することはできません。

 十分冷えた核燃料を補完する乾式キャスク仮保管設備を車内から見ながら、サブドレン(地下水汲み上げ用の竪穴)浄化設備では下車して施設を見学しました。しくみは多核種除去設備とほぼ同じですが、こちらは汚染度が低い水を扱う設備とされています。トリチウムは同じく除去することはできません。東電はここで処理した水を放水する考えですが、放水にあたっては関係者の理解を十分得た上で実施する旨の説明をしました。


東京電力HPより。

 かつて漏水事故をおこしたH4と呼ばれる汚染水貯蔵タンク群では、鉄板による嵩上げ、タンクのに降る雨を堰の外に放水し、堰に降る雨は堰上部に屋根をかけて堰外に放水する仕組みにしました。堰の外の排水路は太いパイプを埋め込むことで、汚染事故がおこっても排水路を通じて汚染水が海に流れ込まないようにした、などの説明があり、対策後は堰らか水が流れ出す事故は起こっていないと説明しました。

 また雨水受けタンクの検査時に、協力企業の労働者がタンク天板から落下し死亡した事件を受けて、作業を中断し安全点検を実施したこととともに、今回の事故では3人が東電社員1人と協力企業2人の3人で作業をしていたものの、天板での作業は1人で行ったことと安全帯の未使用が事故につながったことから複数での作業や安全措置を確実にとることなどを改めて徹底したこと、また安全点検で把握した問題点については対策を講じ、今後、東電社員が現場に入り、安全な作業をすすめる環境整備につとめる趣旨の説明をしていました。

 次に向かった4号機建屋の山側では、サブドレンの確認と凍土遮水壁の施工状況を確認しました。ほぼ1m間隔で透水層下の泥岩層まで打ち込まれた鉄管の中を冷却材を循環させ、周辺の土を凍結することで氷の壁を築こうとするものです。4号機付近で行われた凍結実験では、土が凍ることが確認されています。本来は3月までに工事を終え、3月から凍結を開始する予定でしたが、海側で凍土遮水壁の前提となるトレンチ(電源や海水配管を通すためのトンネルで、人が通ってメンテナンスができるようになっている)内の汚染水の除去が遅れていることから、凍結開始の時期ははっきりしていませんでした。

 これとは別に海側に鉄板を深く打ち込んだ海側遮水壁が講じられています。汚染された地下水が海に流出しないよう設置されたものですが、まだ完全に閉じられてはいません。凍土遮水壁で山側から流れる地下水を遮断しなければ、地下水位が上昇し建屋が浮き上がるなどの問題が生じかねないためです。凍土遮水壁が完了後、海側遮水壁も閉じるための工事を行うといいます。

 ちなみにこの付近の線量は50μsv(マイクロシーベルト)程度。再びバスに乗り込んで、3号機に向かうと線量が増加し、210μsvに達します。2号機3号機の間から海側に向かいましたが、ここではさらに線量が増大し最大422μsvが告げられました。2号機海側では111μsv、1号機海側で74μsvと3号機を離れると徐々に低下しました。本来は5号機、6号機に向かう予定でしたが後戻りし、再び3号機と2号機の間を通過して山側に向かいましたが、この時の最大値が594μsvでした。通り過ぎて50mも離れているのか高台に上がっているところでは15.3μsvまで低下。周辺は水の浸透を防ぐために地表にモルタルが吹付施工してありますが、それにしても距離の2乗に比例して線量が低下するという放射線の特性を実感しました。また2012年の視察時は3号機付近で1,000μsvを測定しましたが、それに比べて今回の計測値は低い値になっています。場所が少しずれているのでその関係があるかもしれませんが、線量が確実に低下していることを実感しました。

 構内視察はそこで終了です。重要免震棟に戻って装備を解き、小野第一原発所長のあいさつと質疑を行いました。ここでは労働者の安全対策について質疑を行いましたが、小野氏は「技術を持った労働者が雇用されてくることから、初めての仕事ということはないと考えており、ただ第一原発の現場に慣れていないということが事故につながりかねないと考えており、今後は現場を再現した施設で実働訓練をできるようなことも考えている」という趣旨の回答がありました。技術がない労働者についての疑問があったことから、集荷不良の面はありましたが、時間の関係で質疑は終わり、入退去管理施設に移動し、預かった線量計で被ばく線量を確認しました。構内にいた概ね2時間の被ばく線量は20μsvでした。

 ここからjビレッジに戻り、WBCで出発時同様に内部被ばくを検査。異常なしの確認をして、同施設の会議室で石崎復興本社代表が出席のもと、質疑が行われました。



 ここでは委員の一人から、汚染水浄化後の海洋放水計画に関して、漁業者にとどめずに広く関係団体を含め市民に説明をすることが必要との質疑がありました。石崎代表は、「風評被害が発生すれば賠償することにしているうえに、漁業者に説明している内容はホームページや別の県民会議等でも説明しているので、今のところ考えていない」としていました。説明責任のあり方としてはどうなのか、と思う回答ですが、この回答は東電の一貫した姿勢です。

 汚染処理水放水の責任は事故をおこした東電と国にあります。本来放水が実施された際の責めのリスクは両者に寄せられるべきです。しかし、東電自らが広く住民に説明をしないことによって、放水を不満に考える方からの責めが放水を了承した漁業者に向けられかねません。東電が漁業者(他に行政経験者に説明しますが)だけに直接説明するあり方が、東電や国が住民の責めのリスク回避に見えてしょうがありません。

 私は第一原発での小野所長との質疑の関連で、多重下請け構造での結果、東京電力と直接契約関係のない未経験労働者の安全対策に関して、一つは上下の関係なく注意できる環境を作ること、もう一つは形骸化しているKI活動(問題点とやるべき事を洗い出し)を本格的に行うことで問題点をつぶしていくことを説明しました。

 全体として時間が短く、3月定例会には東電と国出席のもと委員会を開催することが決まっており、引き続き調査を続けることを確認し、この日の視察は終了しました。

 現場を視察して、2年半年前、9ヶ月前と確実に外観上の第一原発は事故の復旧がすすんだことを実感できます。またさまざまな問題への対応がされてきていますが、事故収束への本格的な歩みや汚染水対策はまだまだこれからどう展開するのか、予断を許さない状況があるということもあらためて思いました。収束作業にしっかりとした予算を確保を求め、人材の確保をすすめることも大切だという思いを深めました。


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