伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

稼働する原発からのトリチウム放出と科学的性質について国民的規模で説明するのが先では

2020年02月01日 | 原発
 小委員会での議論では、トリチウムの処分について、当初、
1)地層注入
2) 海洋放出
3) 水蒸気放出
4) 水素放出
5) 地下埋設
の5案を示した。

 次の段階では、
1)海洋放出
2)水蒸気放出
3)海洋放出と水蒸気放出のミックス
の3案が現実的な選択肢と示し、そして今日の新聞報道では、次のような内容を示した。

 「第一原発処理水」「海洋放出の利点強調」と題した記事だったが、「前例のある大気への放出と海洋放出を『現実的な選択肢』とした上で、監視体制構築など海洋放出の利点を強調した上で、監視体制の構築など海洋放出の利点を強調した政府への提言を大筋で了解した」としている。つまり、小委員会としてはトリチウムの海洋放出にお墨付きを与えようとしているのだ。


第一原発構内のタンク群(出典:東京電力ホールディングス)


 この経過に、非常に違和感を感じる。今日の新聞でもそうだが、この小委員会の了承事項には、県内関係者からは「風評対策徹底」を求める声が上がったという。また漁業者は、これまでの努力を台無しにする行為と反発の声を上げたという。「苦しみながらようやくここまで来た。勝利水を海に流してしまえば、またゼロから風評とたたかうことになる」(福島民報)と訴えたという。当然のことだろうと思う。

 私は、個人的には何が何でもトリチウムの放出に反対するという立場ではない。原発事故の後、間もない頃だったと思うが、事故関連記事の文末に、事故前の原発からもトリチウムの放出がされていたという記載を読んだ。目からうろこ。基本的に運転中の原発から放射性物質は外に出ていないと思い込んでいたのだ。その後、2014年4月23日に国・東電の出席のもと開かれた東日本大震災復興特別委員会で、地下水バイパス計画で汲み上げたトリチウムが1,500bq以下の地下水の放出計画に関する質疑で、事故前の管理目標22兆bq に対して大気中に2兆bq、海洋に2兆bq(いずれも年間)のトリチウムを排出してきた事実が説明された。

 この時、結局、40年間の運転の中で放出を続け、それでも直接的な健康被害が確認されないので安全だと考えているのだろうから、国や東電自ら国民にそのこととトリチウムの科学的知見などを説明すべきで、漁業者などに同意を迫ることで決定権があるかのように誤解させ、結果的に放出に反対する住民と漁業者などを対立させることは問題があるーーたしかこんな趣旨で指摘したことを思い出す。

 他の放射性核種の基準値以内までの除去が大前提に、トリチウム水を放出するにしても、まずは、放射性物質やトリチウムに関する科学的知見と原発を運転してきたことにまつわる歴史的な事実を国民的な規模で共有することが、風評被害を生み出さないための国や電力会社の責任で、そのことに十分に取り組まないままに、放出方法を絞り込んでいくやり方は、結局、反発を招いて問題の解決を遅らせることにつながると考えるのだ。

 以前、原子力規制庁だったと思うが、トリチウムについて国民的に説明しなければならない旨の取り組みを説明し、昨日のテレビのニュースでも「事故前の原発からも排出されていた」とする報道をした。報道関係でトリチウムの放出について1言触れることは増えているように思うが、それが国民的に情報共有を図ったことにはならない。ありそうなのが、県内の報道では取り上げているのに、全国的には取り上げられていないということだ。県内では原発事故からの復興に関する報道は細かくされていても、全国的には復興に関わり生じる問題や事故ばかりが報道される結果、風評被害が拡大するという現象も体験してきたところだ。被災地とそれ以外の地域では、異なった空気が醸成されてしまっていたのだ。

 こう考えると、国や東電は、放射性物資やトリチウムに関する科学的知見の普及と稼働する原発からはトリチウムを含む各種放射性物質が基準値内で日常的に放出されている事実と経過を、大上段に構えて本格的に国民に普及を図る取り組みが必要なのではないだろうか。

 これがないままに放出方法の検討を先行してすすめても、誰も納得しないだろうし、問題解決を遅らせるだけだろう。

 報道を読んで、あらためてこんな思いを強めた。


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