伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

首相が責任果たすべき。その通りと思う

2021年04月23日 | 原発
 処理水の海洋放出決定は、専門家による小委員会が、陸上保管等5つの対応方針から、より現実的な対応として空中か海洋放出とした報告書を受け手のものだった。この報告に関して国が開いた各界からの意見聴取会では、県内の産業関係者や自治体関係者から、反対あるいは、国として国民や世界に向けて情報発信と安全等に関する説明を広く進める多数の意見が出されていた。その中での一方的決定だった。

 この決定後も、漁業関係者をはじめとした多くの産業や県民などから放出に反対する声が上がり続けている。この中、県は5つの内容で意見書を国に提出した。その内容は、
(1)関係者に対する丁寧な説明
(2)汚染水発生量の抑制と浄化処理の確実な実施
(3)正確な情報発信
(4)万全な風評対策と事業者支援
(5)放射性物質トリチウムの除去技術に関する継続的な検討
となっている。

 ただ海洋放出の是非については、処分方法は「政府と東京電力が当事者」として、論評しない姿勢を続けている。しかし、今日の報道では、処理水処分について「状況が整っているとわれわれは考えていない」と記者団の取材に応じて答えたとされている。事実上、現在の状況が続くなら、放出を是としない立場と理解した。

 私もそのように思う。私自身は、国が安全と考え処分方法を海洋放出とするならば、放射性核種を排出してきた原発の歴史、トリチウム放出の安全性などを国民と広く共有し、理解と納得がその前提として必要との考えをとってきた。ところが、最初に、担当者レベルに要望した7年前の時から、こうした取り組みが本格的に実施されることもないままに時が過ぎ、小委員会の報告、そして国の海洋放出決定となっている。国の対応は問題が大きいと言わざるをえない。

 県知事がいう「状況が整う」というどういうことだろうか。もちろん、国に提出した意見書の項目がみたされることだろうが、数日前の報道だったと思う、19日の定例会見に関する報道で、風評に関し「賠償があるから損害を与えても良い、との前提でスタートするのは逆だ」とのべたとされていた。〝損害を与えない環境作りが先にある〟という意味なのか、単純に〝風評被害があるから賠償がある〟という順番の話なのか、記事の脈絡から捉えにくかったので、県のホームページで、定例会見の映像を見て確認をした。知事は次のように発言していた。

 「本来、賠償がないように風評対策を徹底することが最優先と思う。賠償があるからと損害を賭けてもいいという前提でスタートするのは逆だと思う。事業者にとっては、マーケットで適正価格で取引されるのがベストだ。処理水が動いたとしても、そそも風評が生じないようぬするのがベストだと思う」

 だいたいこんな感じだ。つまり、知事及び県の頭の中にあるのは、風評被害への賠償は次善の策で、本来、風評被害を起こさない状況を作り出すことに腐心すべきということのようだ。ただし、知事は処理水の対応は、国と東電が決めるものとしているので、2年後に予定されるであろうと海洋放出には異議を唱えていない。私の報道等での知事の物言いからの理解では、2年後に向けた風評被害が起きない環境作りの国の取り組みを見て、その上で、海洋放出の環境の是非を判断しようということなのだろう。

 今朝の報道では、首相官邸で内堀知事と会談した菅首相は、国内外の理解情勢などについて「責任と覚悟をもってしっかり臨んでいく」としていたという。一方、知事は、海洋放出に反対する県民の声や不安を伝えた上で「首相が全面に立って責任を果たすことが重要」と訴えたとされている。全く同感だ。

 反対の声の多くは、風評被害に抗して、この10年間、営々と取り組みを積み上げてきた県民・関係者の努力を、処理水の海洋放出が突き崩してしまうことに主眼があるだろう。そもそも風評被害が起きない環境となれば、県民・関係者の反対する前提もなくなってしまうのではないか。

 7年前にモニタリング井戸からくみ上げ水のトリチウムを1,500ベクレル未満にして放出する計画案を策定した東電は、廃炉作業を進めるためと漁業者に計画の受け入れを求めた。結果、決定権がゆだねられ漁業者に放出を不安視する人々から厳しい視線が集中することになった。本来事故を起こした国と東電に寄せられるべき視線が、被害者でもある漁業者をせめる視線として注がれてしまったのだ。

 だからこそ、トリチウムの放出が安全と考えるならば、国と東電の責任で、その安全性を国民に説明して理解と合意を広げることを求めた。あの時からしっかりと進めていれば、今とは違った事態になっていたものではないか。結局、この間の国・東電の取り組みの多くは、ホームページ上への掲載や福島関連の催し物、場合によっては県内の催し物での説明にとどまっていた。本格的な情報発信と説明は、これまでされてこなかった。

 反対する声の中には、トリチウムが体内の水素と置き換わることによる被爆等への不安、大型タンク設置と小型タンクからの切り替え、モルタル固化をした上で原発構内への陸上保管を求める声などがある。こうした声に、国として明確に答えていくことが必要だろう。国は、まずは、この間の取り組みの不十分さを反省し、ただちに国民と世界に向けた説明の取り組みを始め、風評が起きない環境を作り出すために最大限努力すべきだろう。

 こうした取り組みが、県民の願いにしっかり応える道筋になるのではないか。そう思う。


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