伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

東海第二発電所(原発)で避難所収容人数を過大算出・・信じられない話

2021年02月01日 | 原発
 報道によると、東海第二発電所で重大事故が起きた際の広域避難計画で、避難所の収容人数が約1万8千人分過大に見積もられていたいう。2018年時点の話だ。「トイレや倉庫など『非居住スペース』の面積も含めて算出していた」ことが原因で、茨城県は「過大見積もりを公表しないまま関係自治体と調整を進め、現時点でなお計6900人分が不足している」というのだ。

 避難計画は、福島第一原発が事故をおこした後に、原発から30キロ圏内の住民を圏外に避難させる避難計画の策定が義務づけられたもので、いわき市では福島第一、福島第二の重大事故を想定した避難計画をすでに策定している。当然に茨城県でも策定を進めてきたのだろうが、避難先が不足していて、かつ、それを認知して2年が経っても6,900人分が不足しているとは驚きだ。しかも、その事実をこれまで公表してこなかったという。

 計画が不十分な状況の中で、もし原発から放射性物質が大量に流出するような事故が発生したらどうなるのだろう。避難する住民に混乱が生じることは論を待たない。私の住む福島県とは別の行政組織ではあるが、茨城県の対応には大きな問題意識を感じてしまう。

 行政ではそんなことが起こっていたようだが、同時に原発そのものにも問題が生じているようだ。

 東海第二発電所は、稼働から40年が過ぎた原発だ。しかも、東日本大震災では地下に設置されていたディーゼル発電機に浸水し、かろうじて生き残った1基で発電するという綱渡りで事故を免れていた。40年を超える原発は、以前の原子力政策なら廃炉になるところだ。しかし、近年、さらに延長して20年間使うこともできることにされてしまい、東海第二発電所は、原子力規制委員会に再稼働を申請し、20年間の運転延長が認められている。

 運転のためには安全性を高めるための工事が必要になるが、東海第二発電所を運営する原電とゼネコン3社の契約交渉が、開始から2年以上妥結せず、2022年12月とされる工事の終了予定が延びる可能性があるというのだ。

 交渉が長引いている原因は工事費の見積額に乖離があること。原電は、約1,740億円としているが、ゼネコン側は2,500億円以上としておりかけ離れている。津波浸水から原発を守る防潮堤でも、900億円前後と見積もるゼネコン側に原電が減額を要求し、拒否されているという。

 最近、東日本大震災の余震が増えているように実感している。災害はいつやってくるか分からないという現実を踏まえれば、安全対策工事の遅れは由々しき事態と言えるだろう。ましてやいわき市は、近い市南部は東海第二発電所から50kmにある。ほぼ同等の距離がある福島第一原発の事故でも、放射性物質で汚染されるなど、市民生活を混乱に陥れた現実を見れば、対岸の炎としても置けないだろう。

 そもそも日本のエネルギー政策は、原子力から脱却することが求められている。今日の報道で、高濃度の核のゴミの最終処分場を受け入れる意思がない自治体は、全国で8割に及ぶとされるアンケート結果の記事があった。受け入れ先を確保できなければ処分できない。そのゴミを増やし続けることは愚の骨頂としかいいようがない。だからこそ、原子力に頼るエネルギー政策から抜け出し、再生可能エネルギーの開発と、エネルギーを安定して使えるようにするための仕組みの開発も含めて、再生可能エネルギーをエネルギーの中軸に据える政策に変えていくことが求められていると考えている。

 同時に、原発を廃炉にするにしても、すぐになくなるわけではない。このため各原発の安全性を高めることは、再稼働、廃炉問わずに喫緊の課題となる。これが遅れているのだから、いわき市に住む私にとっても由々しき事態と言わざるを得ないのだ。

 東電第一原発事故から10年が経とうとしている。その影響は市民の生活に影を落としている。いわき市を離れて生活する人々もいるし、汚染物質の搬出作業が続いている。また、農畜水産物等への風評被害も続いており、廃炉作業に向けた汚染水の処理水の処理という問題で、またぞろ不安を拡大させている。

 こうした体験を踏まえても、二度とあのような事故は起こって欲しくないし、万が一の備えは万全に整えてほしい。記事を読みながら、そんな思いが脳裏をよぎった。


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