伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

事故原発の処理水海洋放出判断の方向が首相から示された

2021年04月08日 | 原発
 処理水の処分の方向性は、菅首相が、全国漁業協同組合連合会会長と福島県漁連会長と面会した際に示されたという。首相は「専門家の提言を踏まえ決定したい」と発言したという。

 昨年2月に、政府小委員会は海洋放出や大気放出が現実的とする報告書を公表しており、海洋放出の方向で判断しようとしている見られる。13日にも、関係閣僚会議を開き判断する意向のようだ。

 もちろん、面会した連合か会長と県漁連会長は、こうした首相の意向に対して、あらためて反対の立場を表明したという。当然だろう。

 私自身、昨日来の報道を聞きながら、では政府は、この間いったい何をしてきたのだろうか、という思いを強めている。

 私自身は、以前から現職当時の市議会でも、ブログでも考えを表明しているが、処理水の海洋放出は何が何でもだめという立場ではない。国の基準値内とは言え、運転されている原発からは放射性核種が環境放出され、事故をおこした東電福島第一原発からも海洋と大気にあわせて年間4兆ベクレルのトリチウムが放出されていた。国の管理基準は年間22ベクレルだったという。

 と考えると、原発の運転開始から40年以上にわたって、何らかの放射性物質が放出された海洋で育った水産物を食べ続けてきたし、直接の健康被害も聞いたことがないという現実を見れば、十分に値が小さければ放出に問題がないと考えざるをえない。

 しかし、処理水を放出すれば福島県産の買い控えや福島の印象悪化など、深刻な風評被害を招きかねない。この問題を克服していくためには、原発のメルトダウンというショッキングな事故の関係で、放射性物質に必要以上に不安な印象を広く受け取っている国民に、あるいは世界に対して、問題がないということを説明し、理解と納得を広める責任が、国と東京電力にはあるだろう。問題は、原発事故後、こうした対応を国と東電が基本的にサボタージュしてきた点にある。私はそう考えている。

 現実に、昨年、小委員会の報告公表を受けていわき市議会と資源エネルギー庁の文書により質問の中で、同庁が示した国民に対する説明の機会は、基本的に福島県民が関わるような場に止まり、国民に向けて積極的に理解と納得を得るとはほど遠い者だった。報告公表を受けた関係産業や自治体、住民との意見交換の中でも、国民や世界に向けた説明が求められていたと思う。

 しかし、私が知らないだけかもしれないが、これまでのところ、こうした取り組みを積極的に進めた形跡は見えない。テレビ、新聞などあらゆるメディアを通じて、また説明会の開催など直接の説明も含めて、全国的規模で積極的に開催して、国民に説明し、理解と納得を広げる。こうしたことをせずに、とにかく海洋放出ありきで処分を判断するなど、原発事故被災地の住民・関係者の声を踏みにじるものでしかない。

 どこかの局が稼働する原発の周辺で、稼働原発からの放射性物質放出の受け止めを取材して報道をしていた時に、釣り人が〝放射能が出ているのは知っているが、基準内であれば問題ないでしょ〟という趣旨の回答をしていた。この報道でも、国・政府が原発からの放射性物質の放出も含めた、処理水に関する説明を進めることを求めていたと思う。

 私が、市議現職の時に、資源エネルギー庁と東電の担当者を招いた東日本復興特別委員会で、「事実を包み隠さず公表するようお願いします」と説明を求めたのは7年前のこと。



 その時から、ほぼ、こうした取り組みが進められず、この間、同様の求めが広く被災地の関係者等からわき起こってもされていない現実は、非常に残念に思う。あらためて政府には、まずやるべきは広く国民、また世界に対して、処理水の安全性も含めた事実の説明と理解・合意を広げることだと求めたい。


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