伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

議場にどよめき・新病院建設の市長発言に

2013年10月24日 | 市政
 9月の市長選挙で清水敏男市長となり初めての定例会、いわき市議会10月定例会が開会しました。今日は初日提出分議案の提案説明などが行われましたが、その内容を聴いていて苦笑せざるをえない場面もありました。

 提案説明の中で市長は、市政運営についての自らの基本的な考え方に触れました。「『生まれ育ったふるさとを良くしたい』という強い思いを心に留め、常に市民の皆さまの目線に立ち、市内各界各層の方々の様々な意見を十分にお聞きしながら、清潔で公正な市政運営に努めてまいります」としながら、「ふるさといわきの力強い復興と再生を一日も早くなしとげられるよう、全身全霊をかけて市政運営に取り組む」としました。ぜひ言葉通りのご活躍を願いたいところですが、幕開けから様子がおかしい。

 どこがおかしいかというと「私が特に市民の皆さまとお約束してきた主な事項について、基本的な考え方を申し上げる」として触れたいくつかの問題にありました。

 週明けには清水市長になって初めての一般質問が行われます。私も10月29日火曜日午前10時50分ごろから質問を行いますが、市長の提案説明の中で私の質問にかかわる、原発事故と県内原子力発電所をすべて廃炉にする問題、市街化区域の見直し、そして新病院の建設問題などがありました。

 原発事故について清水市長は、「県内に立地するすべての原子力発電所の廃炉は当然」としながら、汚染水への抜本的な対策、市除染実施計画に基づく除染の推進、内部被ばくや農産品の検査体制の一層の充実強化をはかることなどを強調しました。ここらは原発事故被災地のいわき市長なら当然と言えば当然の発言です。

 質問ではさらに一歩進んで、原発を含むエネルギー政策への考えをただすことにしています。さて市長はどういう立場を表明するのか。

 これまでにのいわき市の立場は、原子力発電所に依存しない社会を望む立場でした。清水市長は選挙時の「清潔・公正・市民本位のいわき市政をつくる会」のアンケートに「国の専管事項であり、原発を有する地元と国が話し合って決めることであると思う」と答えています。この立場は原子力に依存しない社会というこれまでの市の到達点からは、はるかに遅れた到達点です。しっかりした立場に立っていただけるよう質していきたいと思います。

 二つ目の市外化区域の問題です。市街化区域は公共投資を優先する区域となりますので、その区域を拡大することは維持すべき公共施設が増えるなど、将来のまちづくりと本市財政に大きく影響することになります。

 人口増の中ならば必要なことになるでしょうが、現在も、そして将来に向かっても人口の減少局面が続きます。現在は原発事故からの避難民がいわき市に暮らしています。しかし、国はこうした方々を地元に帰還させる考えですので、現実に帰ることができるかどうかは別の問題として、避難をされた方々がいることをもってしても人口が減少局面にある現状は変わらないので、過大な市街化区域の拡大には問題があります。

 また清水市長は、町外コミュニティ、いわゆる仮の町は分散型で受け入れるとしてきたこれまでのいわき市の方針を変え、分散型でも集中型でも構わないとしています。住民の帰還が進めば集中型で大きく開発した区域もやがてはゴーストタウンになりかねず、こうした側面も含め市街化区域の拡大には慎重な検討が必要だと思います。

 そして三つ目の新病院建設問題です。この部分の報告を聞いた議場はどよめきました。まず選挙中の新病院建設計画に関する清水市長の発言などを拾ってみます。

 「ベッド数を減らすことの是非を含め、新病院のあり方を再検討する」(朝日新聞、9/6)
 「今は耐震工事をしているので、拙速に建設する考えはない。病院経営の形態をまず決めてから建設に入るべきだ」(いわき民報、9/9)
 「まずは病院の形態を見直し、内容を固めた上で新病院建設を考えるべきです」(福島民報、9/10)
 「総合磐城共立病院は耐震工事が進められており、すぐに壊す必要はない。経営形態を含めて再度検討する時間がある」(福島民友、9/10)

 私自身、いわき背年会議所の立候補予定者の公開討論会で、「耐震工事をやっているので急ぐ必要はない。どんな病院にするのかが先」という趣旨の発言をしっかり聞きましたが、これらの発言には、急いで建て替えず、時間をかけて計画の練り直しという考えが明確に表れています。

 ここで新病院建設事業をめぐる状況を説明しておきましょう。 
 地方自治体立の病院を建設する際、国や県からの補助制度はないため、市の一般財源で作らなければなりません。今度の計画は200億円を超える建設費が想定されていますので、これだけの借金をした上で時間をかけて返していかなければならず、これが病院経営を圧迫したり、一般財源を圧迫する原因になりかねませんでした。

 ところが震災後、渡辺前市長のもとで県との協議がすすみ補助金78億円を受けることができることになりました。ところがこれは2015(平成27)年度までを期間とする復興財源を活用した「福島県地域医療復興事業補助金」だったために、その期間以降の補助金活用については不透明だという状況があるのです。

 仮に事業が遅れれば補助金を使うことができなくなる恐れがあります。そうするとその分も含めて市民が負担することになっていくわけで、事業を遅らせることは市民にとってマイナスとなりかねないという問題があるわけです。

 こうした立場から一般質問で取り上げることいしていたのですが、提案説明の中ではこう発言しました。

 「市民のみな様に、将来にわたり、安全・安心の医療を提供していくため、高度・先進医療や救急医療などの更なる充実を図る必要があることから、またとない福島県医療復興事業補助金を有効活用して新病院建設に取り組むべきものと、直ちに判断いたしました」
 「当面、病院事業管理者の持ち、現行の地方公営企業法の全部適用を維持し、経営改善に向けたさらなる取り組みを進めていくことといたしました」

 結局、見直しはほとんどないということなのでしょう。
 私は現行計画に基づき早急に事業をすすめるべきという立場からの質問でした。そうするときょうの提案説明での発言は、質問のめざすべき到達点ともいえるものです。結果としてはオーライということでしょう。

 ただこのことは良く考えてみたい。選挙中の発言は市民に対する公約です。その公約が支持されて当選してきたのに、何の議論もないままにその発言をかなぐり捨ててしまう。これでは選挙は何だったのかが問われてしまうことになります。

 公約しても、公約が活かされない政治になってしまう。政権についた民主党が国民の支持を失い、政治に対する不信を広げる結果になったことを彷彿させます。選挙の時に熱弁をふるった口の端も乾かないうちに、自ら全く違う地点に立ってしまったビン病院建設問題。病院建設から見ればオーライでも、政治家の品性としてそのあり方は問われなければならないでしょう。

 市長の真意はどこにあったのか、またその真意はどこにあるのか。通告との関連で困難もありますが、質問の中でできるだけ迫ってみるよう努力したいと思います。

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