伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

秋田市、藤里町の会派視察を議員だよりの記事にしました

2018年08月08日 | 市議会
 先だっての秋田市と秋田県藤里町での会派研修について、8月12日付議員だよりの記事にまとめました。裏表、両面の記事なります。

 もともとの文章は、7月26日の本ブログに書いたものを書きなおしたものですが、元の文章は、読み直してみると、書きなぐりに近く、不正確だったり、分かりにくい文章もありました。今回の記事は、その点から見ると、文章も整理され、各段に分かりやすくなったと思います。

 試しにご一読を。



実態把握が大事
会派視察研修で学んできました
秋田市・秋田県藤里町


 市議団は、23日から25日の日程で、秋田市と秋田県藤里町で、視察研修を実施しましたので報告します。


アンケート調査力に子どもの貧困対策推進――秋田市


 秋田市のテーマは、子どもの貧困対策で、「秋田市子どものみらい応援計画~子どもの貧困対策~」の策定過程と概要について説明を受けました。
この計画は、2014年1月に施行した「子どもの貧困対策の推進に関する法律」と同年8月に策定された「子供の貧困対策に関する大綱」を受けて策定されたものでした。盛り込まれた具体的事業は、おおよそどこの自治体でも取り組んでいる事業ですが、これらを計画の施策の柱に沿って整理し位置付けた内容になっています。


アンケートの効果

 計画策定にあたっては、市として子育て中の3000世帯を対象にしたアンケートを実施し、1909件(63.6%)の回答を得、この結果を計画策定に反映した内容としています。

 アンケート実施は、次の効果を発揮しているといいます。

 一つは、貧困に悩む子どもの存在を再認識したこと。
 二つに、アンケートの結果が反映した計画が、子どもの
貧困に関する様々な事業を展開する上での「拠り所」となっていること。

 三つに、同市が施策の柱の一つに掲げる「困難に気づき、支援につなげる」を進める上で、行政だけでなく、市民にも困難に気づいて支援につなげていくという意識を持っていただく啓発の根拠ができたこと。

 担当者は、「実態把握なくして計画なし」と説明しました。


市民参画促す補助創設

 市民の事業参加を拡大するために、秋田市協働サポート交付金「あきたまご」という助成制度も創られました。交付対象事業1件につき年間100万円を限度に、初年度は10分の10、2年目は10分の5、3年目は10分の3を助成する制度です。

 これまで、子ども食堂(「みんなdeごはん」という名称)や制服リユースを内容とする「小歩むすび」、学習支援の「こどもいきいき応援事業」、居場所となるサロンスペースを開設する「子どもの安全基地づくり事業」、田植えから収穫と食までを体験する「おむすびごろりん」の事業が採択されてきたといいます。また、4年目以降の助成についても、別の形で支援する制度を検討中だと説明されました。


庁内連絡会で認識共有

 こうした子どもの貧困対策に関して作られた庁内連絡会は、庁内の認識を共有することにつながり、事業化にいたる垣根を低くしたといいます。また、計画の策定が、市民団体の取り組みの広報を効果的にすすめる力となり、子どもの居場所を作ることで社会的なセーフティーネットの一端を担うことに役立ってきたといいます。


本市も調査が必要では

 いわき市は、子どもの貧困対策を子ども・子育て支援事業に位置付けるものの、これまでの議会答弁では、実態調査に関して否定的な見解を繰り返しています。秋田市の事例を見た時に、この対応が妥当かどうかが問われます。



調査をもとに実態に即した引きこもり対策推進――藤里町

 藤里町では、拠点施設「福祉の拠点こみっと」での視察とでした。

 事前に関連する本を読んでいたので、この建物は、別の目的に使われていたものを、町が買い取り整備したものだと予備知識がありました。

 藤里町社会福祉協議会の担当者は、「まず施設を見ていただきたい」と、「こみっと」と横に建つ「自立訓練事業所くまげら館」を案内してくれました。

 「こみっと」の建物は、もともと、近くの素波里ダムの管理事務所として使われていた施設を、買い取った町が引きこもりとなっている住民の居場所として整備し、貸与された社会福祉協議会が事業用に活用しているのだといいます。

 一方、くまげら館は、もとはダム管理事務所に付属した職員の宿泊所を改修した施設です。研修室や、訓練作業室、宿泊室を備え、宿泊室は、自立訓練やこみっとでの講習会参加の際の宿泊所として利用する場合は、一定の負担をしていだき、宿泊することもできる施設です。また、こみっとの事業で生まれた製品「まいたけキッシュ」は、この施設の訓練作業室で製造されていますが、このような使い方もされています。

実態把握が事業開始の引き鉄に

 こみっとでの事業は、引きこもり住民の居場所作りの事業として始まりました。

 社協は、お年寄りの訪問介護などの際に、子ども達の引きこもりの問題を抱えている家庭に気づきました。そこで、行政区、民生委員、同級生など様々なつながりを利用しながら実態を調査したといいます。

 調査対象とした引きこもりは、一般にイメージされる、部屋にこもって何年も生活しているというのとは違い、2年間以上、正規の職につけていない50代までの人という基準で把握していったといいます。

 その結果、人口4000人程の町に131人の引きこもり状態にある住民がいることを把握できました。

居場所から就労訓練の場所へ

 こみっとは当初、将棋の得意な住民などを講師に将棋サークルを作るなどして、時間を過ごせる環境を整えました。しかし、最初のうちは通所するものの、やがて足が遠いていったといいます。

原因は、登録生(引きこもりの住民も含めた現在の呼称。こみっとの利用登録をしている方のこと)のニーズと用意された活動内容が合致していなかったことにあったといいます。

 利用者は、実は「働きたい」と考えていました。その時にレクリェーション活動を用意されても、事業に魅力を感じることがなかったわけです。

 そこで、こみっとでは、資格取得につながる講習会の事業を導入することにしました。視察当日にも、大会議室では介護資格にかかわる講習会が行われていました。この講習を利用できるのは登録生だけではありません。一般の受講生も利用できます。こうすることによって、登録生と一般の方がコミュニケーションを図る機会が増加し、引きこもり対策にも好影響があったといいます。


住民団体の施設共用が好効果

 また、こみっとには、委託を受けて地域の諸団体の事務局的な機能も用意されていました。具体的に見えるのは、団体に割り当てられたロッカー一つなのですが、様々な団体の方々がこみっとにやってくるといいます。

 こうした団体では、比較的高齢な方が中心的役割を担っている場合が多いため、パソコンの使い方を登録生が教えたり、作業してあげたり、逆に団体関係者が登録生に親しく話しかけたり、という関係が生まれました。

 こうした関係が、登録生のコミュニケーション訓練にも役立つのだといいます。


就労訓練で若干の収入も

 また、働きたいというニーズに応えるとともに、登録生に、若干ながらも報酬を支払える事業も展開しました。

 こみっとには、「お食事処」の機能も付加させました。ここで、登録生が教わった「そば」や「うどん」を打って、お客さんに提供しています。

 また、まいたけを活用した「まいたけキッシュ」や、「ふきと山うどの含め煮」「わらびと舞茸の山椒煮」と次々と商品を開発し販売もしています。

 さらに、現在、葛の根とワラビの根を粉にして商品化する取り組みを進めるため、ワラビ畑を作る作業をすすめているといいます。

 こういう作業には、まちのお年寄りや登録者などがあたっていますが、こうした作業訓練に当たる事業の中でも、登録生がコミュニケーション能力を獲得するための交流の機会が増やされ事業の効果を高めているようです。また、この売り上げが若干の収入保障にもつながっているわけです。

 これらの商品開発は、社協内に配置された開発担当者が進めているといいます。

体験事業はIターン事業

 「こみっと」では、引きこもり対策事業を、町外の方も体験利用できる事業も行ったといいます。利用者はこれまで約50組。この中で、町に定着した人が1人いたといいます。

 この体験事業は、町外の方を引き寄せるIターン事業的な色合いが強い。説明者は、このとらえ方が足りなかったために、町に高い関心を持った人が数人いたものの、定着につなげることができなかったと反省的に説明しました。

 その改善のために、町とも協議しながら、準備を整えているといいます。

補助で町が事業支える

 これらの事業は、社協の側が立案して町長に提案、町が予算を獲得して社協に補助金を交付する形で展開されているといいます。

 小さい自治体ならではの小回りの良さが発揮されていると思います。

実態把握で事業検証を

 本市も、県の事業を引き継いで、今年度から引きこもり対策事業をすすめています。基本は居場所づくりと、コミュニケーションスキルを身につけてもらうことが目的です。

 ただ、実態把握がないままに、事業が展開されている点が残念です。

 藤里町では、実態調査の結果、引きこもり対応を国の基準より広くとって実施することにしましたが、これは町の実態を踏まえた措置だったと説明していました。

 実態把握を踏まえ本市の行う事業を検証することが必要です。


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