伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

冗談めかした文体がユニーク。「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」

2020年01月04日 | 読書
 この本に惹かれたのは「鳥」の文字があったからだろう。普段からできれば鳥の写真を撮るためにカメラを持って歩いている。鳥大好き人間という分けではないが、何か鳥に関する知識が増えたら、後々、何かの役に立つ。おまけにこの題名。「鳥類学者」は「鳥」が好きに決まっているじゃないかという思い込みを大胆に裏切るこの署名。何が書いてあるんだろうと、気持ちを引きつけるには十分なインパクトがあった。

 さて、本を読み始める。書名が物語るように、本文も冗談をたくさん交えながら鳥や研究にまつわる22のエピソードが6つの章に分けて書き綴られている。

 内容はぜひ読んでみていただきたい。希少価値と著者が言う鳥類学者の生態をよく理解できるものと思う。

 さて、偶然とは恐ろしいものだ。エピソードの一つに吸血鳥のエピソードがあった。カラスが血の味を覚え、動物に傷を付け流れる血液をなめるのだという。著者は、この事例が発生した動物公園の担当者に取材し論文を仕上げたのだという。論文を投稿し、査読を受けたのだが、ウンもスンもない。それもそのはず、吸血鳥はすでに周知され、畜産専門誌にも掲載されていたのだという。

 そのエピソードはともかく、この動物公園は、岩手県盛岡市にあるのだという。そのくだりを呼んでいたその時、私は山田線の快速に乗り、盛岡駅を出発して間もなくだった。

 何という偶然。旅に持参する本に選ばれたのは、実はこうした縁があったからだったのかも知れない。

 もうひとつ。ガビチョウのエピソードが目から鱗だった。

 七色のさえずりを聞かせるガビチョウは、鳴き比べをさせようと輸入されたが、大きなさえずりで飼いきれず、やがて野生化してどんどん広まっている。我が家の近くにもたくさんのガビチョウが出現する。このガビチョウはヤブをテリトリーとし、気性が荒いため、在来種に対する影響が懸念されていた鳥だ。ヤブの中でさえずるウグイスなど影響が大きいのだろう。

 本書では、著者も当初はガビチョウの生態系への悪影響を訴えていたのだという。しかし、現実には、ガビチョウの生息域拡大による生態系への影響は確認されていない。様子を見ていた方が良いというのだ。今朝もガビチョウが目の前を飛んでいった。4羽いた。2つのペアということだろう。同書により、侵略者としてみていたガビチョウに対する見方が変わったことを実感した。

 全221ページの本書は、鳥や研究者の生態、鳥類から見た環境問題まで幅広い情報を面白く伝えてくれた。
 満足。


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