天国への階段
美術教室の道具棚の上に腰かけて
無口な君に代わって
流れるように語り続けるギター
長く黒い髪を揺らして
うつむき加減にギターを弾く君は
確かにとても輝いていた
児童公園にある小さな人工の山さえ
見ると登らずにはおれないきみは
高いところが大好きだった
君が初めて乗った飛行機の中で
眼下に見える山々の名を
ひとつ一つ僕に教えてくれた
まだ少年の心と面影を残した頃に分かれて
突然再会したときには
お互い家族がいたね
君は髪を短く切り、饒舌になっていた
でも話すのは子どものことばかりで
君自身のことには口を閉ざしたね
走り回る子ども達に囲まれ
君が手にした僕のギターで
僕が演奏をねだった曲
弾き方を教えてくれると言ったのに
約束を果たす前に
君は一人、天国への階段を昇った
工事現場の砂利の山さえ
見ると登らずにはおれない君は
とうとう君の大好きだった山々さえも越す
空の高みに昇ったんだね
(2012.1.26)