チューリップの球根を植える
週末園芸家にとって、10月は忙しい。
梅雨明けからひと夏を過ぎた花壇やプランターの春花壇への植え替えの時期だからだ。
仕事上、園芸という趣味の時間に使える時間は限られる。私は土曜日も半日仕事があり、日没の早くなった10月には、本格的な作業をするのは日曜に限られる。その日曜に出勤があったり、家族サービスでドライブに出かけたりすると、さらに作業時間が無くなる。そしてやっと作った「今日は1日作業が出来るぞ」という貴重な日曜日に、朝から本格的な雨が降ったりするのである。
9月には、園芸店にチューリップをはじめとする球根が出始める。大好きなビオラも顔を見せ、何だかワクワクしてくる。今年の新品種はどんなものか、心に響いてくるような新たな花はないか、あちこちの園芸店やホームセンターをはしごし、品定めをする。その時点では、苗や球根の購入はしないで心の中にメモをする。
次に手持ちのプランターや花壇を思い浮かべ、あるいは図に書いて、春花壇のプランを立て、作業の段取りを考える。この作業が実に楽しい。一番盛りのことを想像してプランを立てる。咲き誇った花の間から、チューリップやアネモネや水仙の花が現れて咲いた様子を想像する。花の花との色や形の組み合わせがうまく行くか、楽しみである。
花壇のことを考え始めると、明らかに頭や心に変化が現れ、血圧は下がり、ストレスがさらさらと溶け出して行く(ような気がする)。
ここ数年は、デジタルカメラで花壇やプランターの写真を撮影し、パソコンに記録している。記憶力が著しく低下している私に春花壇のプランの強い味方となっている。前年の反省が生かされる。「この花は良かった。今年もぜひ使う」とか、「この花は思った程良くなかった」とか。
次に、苗や球根を1日で作業が終わる分だけ、計画のメモを手に、かねてから目を付けた園芸店から買ってくる。そのとき、新たに欲しい新品種が出ていて心乱れたり、予定の苗がなかったりして、なかなか計画通りには行かないがことも多い。
実際に植え付ける作業も楽しい。土をいじることは、何か人間の先祖の記憶に触れる本能的な喜びがあるのかもしれない。中でも春花壇では、球根の植え付けが特に楽しい。一旦、数ヶ月先まで土の下に隠れてしまう球根。これから迎える本格的な秋とその次の寒い冬。二つの季節を過ぎた、ちょっと先の未来にいる自分や家族へのプレゼントみたいだ。
現時点では、まだまだ夏のプランターの花が咲き続けている。切り戻しも苦手だが、季節が変わるからと、まだ花が咲き続けている株を引っこ抜くことが私には出来ない。花壇を植え替えるためには、それでも意を決して抜くしかない。だから植木鉢やプランターの方は、1カ所に2つのプランターを用意する。まだ観賞に堪える夏の花はそのままに、別のプランターに春の花を植え付けるのだ。そして時期をみてプランターを置く庭の檜舞台からバックヤード(庭の舞台裏)へと差し替える。そうやってギリギリまで夏の花を世話するから、春のプランターに差し替えた後もバックヤードで年末まで咲き続けることがある。さすがに零下の気温にさらすと1日にして枯れてしまうが、切り花で楽しんでいて根が出たものや、まだきれいな株を小さな植木鉢に植え替え、室内の日当りの良い窓辺においていたら、冬を越して咲き続けた。あたたかくなって挿し芽で増やして翌シーズンの夏花壇に植え付けた二年もののインパチェンスやアゲラタムがある。その二年ものの親株のインパチェンスの株元は、草花とは思えぬ太さで盆栽の風情です。
真冬に沖縄に行ったことがあるが、その時に道路際の植栽や家の庭に夏の花を見つけ驚いた。九州熊本もそれと同じで冬もあたたかいからこそのことだろう。
他県の園芸種物屋に嫁いだ妹から「そんなことやめてよ。苗が売れなくなるじゃない」と文句を言われそうだ。
(2011.10.26)
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