新世紀を定義づける地政学的なドラマは、恐らく、中国と米国が
軍事力と影響力を競い合う戦いだろう。日本はどう動くべきか?
2011年10月6日 木曜日
◆米国と中国、どちらを選ぶか 10月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙
新世紀を定義づける地政学的なドラマは、恐らく、中国と米国が軍事力と影響力を競い合う戦いだろう。この新たな争いは既に、両大国にはさまれたアジア諸国に厄介な選択を迫りつつある。
米国連邦議会上院では3日、中国から輸入される製品に関税を課すことを容認する法案が可決されると見られていた。
仮に、米国の保護主義の勢いがこれでしばらく止まるとしても、米国内に漂う対決ムードは中国の隣人たちにジレンマを突きつける。
経済的な利益と戦略的な利益のズレ
日本やインド、オーストラリア、韓国、そして大半の東南アジア諸国にとって、中国は今や最大の貿易相手国だ。ところが、これらの国々はまだ、軍事面で最も重要な関係を米国と結んでいる。経済的な利益と戦略的な利益が互いに異なる方向を指しているこの状況を、各国は果たしていつまで続けられるだろうか?
人民日報に先週掲載された社説から判断する限り、そう長くは続けられないだろう。中国共産党の機関紙である同紙は、「米国の軍事力という助力と中国とのバランスが取れている限り何でも好きなことができると思っている特定の国々」に狙いを定めていたからだ。
この記事は恐らく、掲載の前日に日本とフィリピンが発表した声明に触発されたものだ。両国はこの中で海洋分野における2国間協力の強化を約束し、中国が南シナ海の広い範囲で領有権を主張していることへの異議をほのめかしていた。
しかし、中国の警告はベトナムやインド、韓国、オーストラリア、あるいは台湾などに向けられる可能性も同じくらいあった。これらの国々は皆、ここ1年間で米国との軍事的なつながりを強めているからだ。
もちろん、これは皮肉な話である。隣人たちが大慌てで米国の軍事力に頼ろうとしているのは、この人民日報の記事が体現しているように、中国が武力をちらつかせて威嚇してくるためにほかならないからだ。(後略)
(私のコメント)
東アジアにおけるバランス・オブ・パワーは中国の台頭と共に変化を生じてきている。アメリカは中国の台頭を支援してきましたが、経済的な台頭は必然的に軍事的な台頭を伴う。特に軍事力の近代化は目覚しくミサイル戦力を初め海軍力や空軍力を強化して、近隣諸国を脅かすようになりました。
中国軍部にも対米強硬派と対米協調派があるように、アメリカにも対中強硬派と対中融和派がある。アメリカが中国に弱みを握られているのは確かであり、どこまで中国を融和路線で引っ張れるかがアメリカ外交の腕の見せ所だろう。出来るだけ融和路線でドルを買い支える中国でいさせることだ。
しかし中国は、ドルを買って溜め込んでもドルがどんどん安くなればそれだけ損をする事になる。どこで堪忍袋の緒が切れるかですが、それは中国国内の強硬派をおとなしくさせるかにかかっている。中国軍は国軍ではなく、共産党の軍隊だから政府とは一線を画している。だから共産党の幹部は軍をどれだけ掌握できるかが問題だ。
軍部も予算を拡大させていくには軍事的な脅威を煽る必要があり、それはアメリカの軍部も利害は一致している。アメリカと中国は経済戦争と軍事対立の二局面戦争であり、日本政府もアメリカに陰に陽に協力させられる立場にある。
ビックコミックの10月号の「ゴルゴ13」では、アメリカと中国をめぐる経済戦争と軍事対立の関係を分かりやすく漫画にしていますが、中国海軍の軍事的挑発に対して手を出せないアメリカ海軍の苦悩が描かれている。アメリカの原子力空母艦隊に至近距離に中国の潜水艦が浮上した事は「株式日記」でも以前紹介しましたが、中国の新鋭潜水艦をアメリカ海軍は把握できない。
最新型の通常型潜水艦は、リチウム電池などの発達で1週間ぐらいの潜行任務が可能であり、海底に潜んでいたら発見することは難しい。アメリカの原子力空母は一発の核魚雷や核ミサイルで沈めることが可能であり、中国の潜水艦は第七艦隊にとっても脅威だ。さらには対艦弾道ミサイルも開発しているから第七艦隊は中国沿岸では張子の虎だ。
アメリカの戦略としては、軍事的に形勢が不利になってきたので、アセアン諸国や日本を巻き込んで中国に対抗させる戦略をとるようになってきたようだ。フィリピンをはじめとしてアセアン諸国は中国の軍事的な増強に対して、アメリカを頼りにしていますが、アメリカとしても痛し痒しだろう。
日本としては中国の台頭は一つのチャンスであり、対米従属外交でアメリカべったりよりも、中国とも手を組むフリをする必要があるだろう。今までのアメリカ政府からの理不尽な要求に対して日本政府は粛々と従ってきましたが、あまり強硬なことを要求してきたら中国とも裏で手を組みますよと言った脅しも必要だろう。
だから私は鳩山政権に期待しましたが、普天間問題は腰砕けになってしまった。もちろん私は在日米軍の価値も認めますが、在日米軍がなくなって困るのは韓国や台湾やアセアン諸国であり、日本はその気になれば中国軍に対抗できるだけの国力はある。しかしそれだけのことが出来る政治家がいない。
日本政府部内の動きは、外務省幹部や前原政調会長などのようにアメリカに筒抜けであり、日本の独自外交など無理なのだろう。ウィキリークスなどでそれが明らかになりましたが、国会ではそれが問題にならないから問題だ。中国とも同じ関係であり外務省幹部や政党幹部から内部情報を進んでリークする連中がいる。しかし日本にはスパイ罪がないから彼らを逮捕できない。
長期的に見ればアメリカの国力の衰退は明らかであり、中国としては黙っておとなしくしていればアメリカはいずれ東アジアからも撤退していくだろう。アメリカは韓国や台湾も中国に譲り渡すかもしれない。単独ではとても中国には対抗できないからだ。アメリカが東アジアから手を引けば台湾や韓国は日本を頼るしかなくなりますが、韓国は反日教育で高飛車な態度で接してくる。
台湾はまだ現実的な対応ですが、日本政府としてはアメリカが台湾や韓国をどうするか高みの見物しているしかない。日本はアメリカによって手足をもがれた状態であり軍隊を持つことを禁止された。自衛隊は警察予備隊であり、国軍ではないから憲兵隊もないから警察の下部組織に過ぎない。
アメリカ内部でもこれではまずいと考える人も出てきて、日本の核武装を認める人も出てきた。核ミサイルがなければ日本は中国にも対抗は出来ませんが、その気になればいつでも出来るのでしょうが、それだけの決断が出来る政治家がいない。国会も外務省もスパイの巣窟であり、情報がアメリカや中国に筒抜けだ。
<転載終わり>
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株式日記が指摘しているように日本にはスパイ罪がありませんので、アメリカや中国、北朝鮮のスパイを罰することができません。アメリカをはじめ、イギリス、フランス、ドイツ、中国、ロシア、韓国、北朝鮮など、どの国にもスパイ防止法くらいはあります。世界でもスパイ防止法(機密保護法)すら無い国は、日本くらいではないでしょうか。
私は十代から反共でしたので、中国やロシア(当時はソ連)によるスパイ行為に対して、逮捕はするものの、何の罪にも問えないことに忸怩たる思いを持っていましたが、今思えば日本に対して最もスパイ活動が激しいのは、アメリカだということが判りました。尤も、日本に米軍基地がある限り、米軍と自衛隊は連携して行動しているので、スパイ活動と定義することすらできないということになりますが。
ただ、日本の場合はスパイ防止法を制定すると、植草一秀さんのような冤罪事件が多くなるとも考えられるので、冤罪の防止という観点からの法整備も、並行して行う必要はあると思います。