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<動物保護>半世紀で1万匹 元お巡りさん末期がんで闘病中
末期がんと闘いながら講演を再開した有城さん=滋賀県愛荘町で、千葉紀和撮影
捨てられたり傷ついたりした動物を50年近くボランティアで保護してきた滋賀県近江八幡市の元お巡りさんが、末期がんと闘いながら「命の尊さ」を伝える活動を続けている。がんが全身に転移し、昨年春に主治医から「余命半年」の宣告を受けたが、6度目の手術を先月乗り越えた。「きっと動物たちが生かしてくれている。だから自分の務めを果たしたい」。痛みに耐えて今月、通算1111回目の講演を果たした。
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元京都府警の有城覚(ありしろ・さとる)さん(69)は、1963年の採用後に初めて勤務した交番で、女の子が持ち込んだ傷ついたキジバトのひなを助けられなかった後悔から、動物保護の勉強を始めた。けがをするなどして警察署に届けられる動物を自宅で飼育するようになった。
野生に返したり飼い主を探したりしたが動物は増え続け、最も多い時には約250匹が自宅にいた。これまでに助けた動物は1万匹を超えるという。
86年からは非番の日に動物を連れて小学校や公共施設を訪れる移動動物園「110番動物園」を始めた。耳を切り取られたウサギや目を接着剤でふさがれたネコなど虐待された動物と子供たちが触れ合う機会を提供した。定年後は退職金で飼育舎を建て、常設の動物園も開いた。
直腸がんと分かったのは8年前。摘出手術を受けたが、大腸や肝臓、肺などに次々転移した。二人三脚で活動を支えてきた妻の繁子さんを昨年に亡くし、体に負担がかかる抗がん剤の投与もやめており、長女の加織さん(37)は「生きていることが奇跡的」と話す。動物たちは少しずつ協力者らに引き取ってもらい、今は5羽のハトだけになった。
移動動物園と共に長年続けてきた講演は、動物を保護するためには、餌として魚や昆虫などの命を奪わなければならないという「矛盾」を語った上で、無益な命を奪う犯罪の抑止を呼び掛ける。今月14日に滋賀県愛荘町で1111回目の講演をし、約150人が静かに聴き入った。
有城さんは「動物を助けてきたつもりだったが、がんを患い目線の高さに気が付いた。懸命に生きようとする動物たちの姿に学び、より弱者の目線で命の重みを子供たちに伝えたい。その活動が結果として同じがん患者の励みになればいい」と話している。【千葉紀和】