朝日新聞への投稿短歌・俳句で「原発」に関連して詠まれたものを抜き書きした。
原発に土地奪われて夏三たび行くあてのない流浪の民か
(川崎市)山根重義 (8/11 佐佐木幸綱選)
公魚(わかさぎ)は釣られ集められ焼かれたり原発事故の後の日常
(平塚市)三井せつ子 (8/11 佐佐木幸綱選)
三十年チェルノブイリは手つかずにあと幾年か誰も知らざり
(別府巿)河野靖朗 (8/19 佐佐木幸綱選)
反原発のデモの渦からぬっくりと国会議員が二名生まれた
(日野市)植松恵樹 (8/19 佐佐木幸綱選)
高濃度の汚れちまった排液が海に漏れ出す泥沼原発
(名古屋市)諏訪兼位 (8/26 佐佐木幸綱選)
原子炉を作る企業の求人票昨年よりも数枚多かり
(伊達市)今奈奈 (8/26 佐佐木幸綱選)
天網は疎にして不漏原発は人工システム密にして可謬
(宇部市)崎田修平 (9/2 佐佐木幸綱選)
原発がありて失業なしという老若男女村人の票
(長岡市)佐藤正 (9/8 永田和宏選)
内に鼠外猪のはびこれる自宅(うち)に帰還を許されてもといふ
(福島市)青木崇郎 (9/8 野公彦選)
原発の避難先にて育てゐる茄子と胡瓜のはなに安らふ
(東京都)半杭螢子 (9/16 野公彦選)
放射能塗(まみ)れの猪豚我が町の県道奔る廃墟を奔る
(いわき市)馬目弘平 (9/23 佐佐木幸綱選)
土足にて我が家に入るせつなさよネズミの糞に覆われし床
(郡山市)渡辺良子 (9/23 佐佐木幸綱選)
東京ゆ二百五十キロにて汚染水タンクは増えてゆくばかりです
(福島市)美原凍子 (9/30 野公彦、永田和宏選)
東京は安全ですと言われれば区別の助詞の「は」がひっかかる
(枚方市)小島節子 (9/30 永田和宏選)
東京は東京にはの「は」と「には」の東京遠く遠く隔たる
(山形市)小林武子 (9/30 永田和宏選)
ただ単に汚染水と呼ぶ原発の高濃度放射性汚染水なのに
(東京都)吉武純 (9/30 佐佐木幸綱選)
フクシマの数値も呼び名も曖昧になるも原発の劫火は消えず
(東かがわ市)河野久之 (9/30 佐佐木幸綱選)
プレゼンの首相の言にウソでしょ!と叫びし我はふくしま県民
(郡山市)渡辺良子 (10/7 永田和宏選)
コントロールしておりますのその朝のフクシマのニュースは汚染水流出
(本宮市)廣川秋男 (10/7 永田和宏選)
こころまで汚染されてくまいにちをフクシマ人は生きております
(福島市)美原凍子 (10/7 佐佐木幸綱選)
今原爆七ヶ月後は原発忌
(養父市)足立威宏 (8/19 金子兜太選)
原発の廃墟ばかりや蟻地獄
(川崎市)池田功 (8/26 金子兜太選)
被爆地へ子らは帰らず秋深む
(福津市)松崎佐 (9/23 金子兜太選)
原発を止め名月を愛でにけり
(八王子市)額田浩文 (9/30 金子兜太選)
身に入むや未来を汚す汚染水
(兵庫県猪名川町)小林恕水 (9/30 長谷川櫂選)
原発事故に関連した短歌、俳句のみを抜き書きしているが、下の歌と句は原爆を詠んだものでも印象深かったので、採録しておいた。
六十八光年先に今もなほエノラ・ゲイの見し街はあるらむ
(尾道市)堀川弘 (9/2 永田和宏選)
原爆忌そは人類の忌なりけり
(東京都)三笠比呂史 (8/26 金子兜太選)