そーいえば、
京都の事件簿をブログに書き忘れていましたね。
それは祇園。
ぎおん徳屋にておこりました。
行列ができていたので
諦めそうになったのですが
5人くらいが一気に店内へ案内されたので
並び始めました。
前にはカップルが2組程度。
すぐ入れそうだと後ろを見渡すと僕が最後。
前の2組は回されたメニューを見終わって僕に手渡します。
僕はさっと目を通し、
お目当てを見つけチェック。
本わらびもち
そして誰かが並ぶのを待っていた。
すると数分もせずに並んだ女性に渡そうとしたら
「私は結構です」と断られた。
心の中で「いや、見ないにしても前から回ってきたから受け取って次の人に回して下さい。」と不愉快にはなったのですが、僕がそのメニューを手に持つことになりました。
また数分後に4人連れの中年男女グループが来たので、メニューを渡します。「ありがとう」と言って話をします。そりゃそうだ。一旦受け取るもんだ、こういうもんは。
後ろの女性は黙って佇んでいる。いや、並んでいる。でも別に気にしない。
そしていよいよ前の2組も入って、僕が行列の先頭に来た頃には20分くらいは経っていたのだろう。店員さんが行列を見て僕に話しかけてくる。
「お二人ですか?」
「いいえ、1人です」
少し考えて、
「御相席でもよろしいでしょうか?」
えっ~、嫌だな~~
気まずいし。
でも僕の相席のイメージはうどん屋さんのようなテーブルに背もたれのない四角い椅子が4つの席に対角線に座る、というイメージだった。
それなら別にいい。何も頑なに拒否する方が大人としておかしい。そう思った僕は
「いいです↓けど…」
と少し怪訝な顔をした。
すると客をさっさと捌きたい和服の店員は後ろの女性の意思確認も曖昧なまま、僕たち(?)をご案内する。
店内は意外に狭く、通されたところは……
個室
畳4.5条
「靴を脱いで、お入り下さい」
掘り炬燵のようになっていて、ゆうに6名は座れそうな机と四角い部屋。壁はモスグリーンでモダン和装。
お見合いかっ!?
座布団にぎこちなく座る他人。
これは最近5年以上は経験していない「気まずいマックス」である。
1分くらい何も話さない。
メニューがテーブルに鎮座するも、もうメニューは決まっている。
少しほったらかしにされたが、
数分後にやってきた和服の店員を少し憎んでいた。なんでこんな部屋に案内したのだ?
そんな僕の怒りに気づくわけもなく、オーダーを取る仕草。謝れ!このヘッポコ店員がっ!
「あっ、この本わらびもちを」
「私も……」
くっ!オーダーを省略しやがった。
僕が注文したやつに乗っけやがった。
赤の他人なのに……
ちゃんと自分で注文しろよ!
声を出せっ!
乗っかるなっ!俺に!
和装店員は出て行く。
また静寂。
ふすまを閉めてないだけましだが、外の声や客の騒ぎも聞こえない。ただただ2人がお茶をすする音のみ。
僕は恐怖を感じた。
これまで経験したことのない恐怖を。
気まずさとは痛いほどの沈黙と、この場にいても立ってもいられないほどの空気の重さを感じるのだ。
僕はその限界を感じて話をし始めた。
「こちらによく来られるんですね」
自然にそして静かに。
湯呑みを見ながら話しかけた。
自分自身が喋っているのかわからないような感覚で。
「何度か……」
ファーストコンタクト。この時初めて彼女を見た。30歳くらいの真面目そうな人。正直、タイプでは無いし、お近づきになりたいとは思わなかった。男とはゲンキンなものである。
しかしよくもまあ、僕という人間は大人になったものだ。当たり障りのない会話。本当の意味での雑談。大人のたしなみ。
僕は京の洗礼を受けているのだ。
京都で遊びたいなら、この程度は軽くこなしなさい!
神々が京都の素人に笑いながら与えてくる試練の一つ。
僕は勇気を持って雑談をこなす。
彼女が京都に来たらこの店に来ること、東京から2日の1人旅、兵庫に住んでいたこと、京都の紅葉で北野天満宮が綺麗だったこと、このまま16:30には新幹線に乗らなきゃいけないことなど。
ちょうどその頃には注文した品物が届き、あの和装店員は
「あらっ、こんなに仲良くなって」
と言いたげに笑顔で盆を置く。
変な間を一拍おいて、
「ご説明は、……ご一緒にさせていただきますね。」
その間(ま)っ!気になるぞ!
お前が思っているほど仲良くなってないぞ!
私のおかげでこんな出会いが出来上がりました!みたいな達成感を感じてんじゃねぇー!
そこまで店員は考えていないのかもしれないが、僕にはこの和装店員は、京都に舞い降りた「イタズラ堕天使」にしか思えない。
もう説明なんか一言も聞いていない。ただだだ僕は睨んでいたのではないかと、後になって思う。
「お邪魔しました」と言わんばかりの笑顔で個室から出て行く堕天使を最後に睨んでから、わらびもちの旨さを堪能。
お相手も本当に好きなのだろう。幸せそうに柔らかいわらびもちをススル。
そう、ススルという表現が合う。液体と個体のど真ん中。プルプルのわらびもちは、甘さと言い食感と言い神々のイタズラを払拭するほどの旨さで迫ってくる。
普通、堕天使が印象に残ってしまうほどの事件。それがやっぱり食べ物という主役が主役になる程の存在感。
それが素晴らしい。
どんなに気まずくても、
どんなに店員を憎もうとも、
それらを一気に吹っ飛ばす和菓子
コレが京都の奥深さなのかもしれない。
僕はあまりにウブ過ぎる。
知らなすぎるのだ。
巨大な京の神々に初戦をあしらわれた。
相席の女性は、見知らぬおっさんとの気まずい時間を最後に
「楽しかったです」
と言い残して新幹線に向かった。
大人は伝票を渡さず、払ってあげるのだろうが、あえてそれは辞めた。
あえて、だ。
途中、確実に「支払いどうしよう?」と浮かんだから。会話にも慣れ、初対面・赤の他人よりは盛り上がった場でも思い浮かんだ自分に少し格好良さも感じた。
でも、あえて。
僕がおごるのは変だもん。
気持ち悪いじゃん。
バカな女性なら「なんでよ~、おごればいいのに~」と考えるだろう。僕、そういうこという人キライ。
僕は1人旅で旅の最後に締めくくるほどのわらびもちをお金を出す価値を考えるのだ。
僕なら自分の働いたお金で払いたいのだ。
僕はこの試練を乗り切った。
もしこんな出来事が起こるのなら京都に通ってもいいかな。
お相手の方、当たり障りの無い会話に付き合ってくれてありがとう。あなたの大人な対応にも助けられたと思います。
京都事件簿ファイル1
京都の事件簿をブログに書き忘れていましたね。
それは祇園。
ぎおん徳屋にておこりました。
行列ができていたので
諦めそうになったのですが
5人くらいが一気に店内へ案内されたので
並び始めました。
前にはカップルが2組程度。
すぐ入れそうだと後ろを見渡すと僕が最後。
前の2組は回されたメニューを見終わって僕に手渡します。
僕はさっと目を通し、
お目当てを見つけチェック。
本わらびもち
そして誰かが並ぶのを待っていた。
すると数分もせずに並んだ女性に渡そうとしたら
「私は結構です」と断られた。
心の中で「いや、見ないにしても前から回ってきたから受け取って次の人に回して下さい。」と不愉快にはなったのですが、僕がそのメニューを手に持つことになりました。
また数分後に4人連れの中年男女グループが来たので、メニューを渡します。「ありがとう」と言って話をします。そりゃそうだ。一旦受け取るもんだ、こういうもんは。
後ろの女性は黙って佇んでいる。いや、並んでいる。でも別に気にしない。
そしていよいよ前の2組も入って、僕が行列の先頭に来た頃には20分くらいは経っていたのだろう。店員さんが行列を見て僕に話しかけてくる。
「お二人ですか?」
「いいえ、1人です」
少し考えて、
「御相席でもよろしいでしょうか?」
えっ~、嫌だな~~
気まずいし。
でも僕の相席のイメージはうどん屋さんのようなテーブルに背もたれのない四角い椅子が4つの席に対角線に座る、というイメージだった。
それなら別にいい。何も頑なに拒否する方が大人としておかしい。そう思った僕は
「いいです↓けど…」
と少し怪訝な顔をした。
すると客をさっさと捌きたい和服の店員は後ろの女性の意思確認も曖昧なまま、僕たち(?)をご案内する。
店内は意外に狭く、通されたところは……
個室
畳4.5条
「靴を脱いで、お入り下さい」
掘り炬燵のようになっていて、ゆうに6名は座れそうな机と四角い部屋。壁はモスグリーンでモダン和装。
お見合いかっ!?
座布団にぎこちなく座る他人。
これは最近5年以上は経験していない「気まずいマックス」である。
1分くらい何も話さない。
メニューがテーブルに鎮座するも、もうメニューは決まっている。
少しほったらかしにされたが、
数分後にやってきた和服の店員を少し憎んでいた。なんでこんな部屋に案内したのだ?
そんな僕の怒りに気づくわけもなく、オーダーを取る仕草。謝れ!このヘッポコ店員がっ!
「あっ、この本わらびもちを」
「私も……」
くっ!オーダーを省略しやがった。
僕が注文したやつに乗っけやがった。
赤の他人なのに……
ちゃんと自分で注文しろよ!
声を出せっ!
乗っかるなっ!俺に!
和装店員は出て行く。
また静寂。
ふすまを閉めてないだけましだが、外の声や客の騒ぎも聞こえない。ただただ2人がお茶をすする音のみ。
僕は恐怖を感じた。
これまで経験したことのない恐怖を。
気まずさとは痛いほどの沈黙と、この場にいても立ってもいられないほどの空気の重さを感じるのだ。
僕はその限界を感じて話をし始めた。
「こちらによく来られるんですね」
自然にそして静かに。
湯呑みを見ながら話しかけた。
自分自身が喋っているのかわからないような感覚で。
「何度か……」
ファーストコンタクト。この時初めて彼女を見た。30歳くらいの真面目そうな人。正直、タイプでは無いし、お近づきになりたいとは思わなかった。男とはゲンキンなものである。
しかしよくもまあ、僕という人間は大人になったものだ。当たり障りのない会話。本当の意味での雑談。大人のたしなみ。
僕は京の洗礼を受けているのだ。
京都で遊びたいなら、この程度は軽くこなしなさい!
神々が京都の素人に笑いながら与えてくる試練の一つ。
僕は勇気を持って雑談をこなす。
彼女が京都に来たらこの店に来ること、東京から2日の1人旅、兵庫に住んでいたこと、京都の紅葉で北野天満宮が綺麗だったこと、このまま16:30には新幹線に乗らなきゃいけないことなど。
ちょうどその頃には注文した品物が届き、あの和装店員は
「あらっ、こんなに仲良くなって」
と言いたげに笑顔で盆を置く。
変な間を一拍おいて、
「ご説明は、……ご一緒にさせていただきますね。」
その間(ま)っ!気になるぞ!
お前が思っているほど仲良くなってないぞ!
私のおかげでこんな出会いが出来上がりました!みたいな達成感を感じてんじゃねぇー!
そこまで店員は考えていないのかもしれないが、僕にはこの和装店員は、京都に舞い降りた「イタズラ堕天使」にしか思えない。
もう説明なんか一言も聞いていない。ただだだ僕は睨んでいたのではないかと、後になって思う。
「お邪魔しました」と言わんばかりの笑顔で個室から出て行く堕天使を最後に睨んでから、わらびもちの旨さを堪能。
お相手も本当に好きなのだろう。幸せそうに柔らかいわらびもちをススル。
そう、ススルという表現が合う。液体と個体のど真ん中。プルプルのわらびもちは、甘さと言い食感と言い神々のイタズラを払拭するほどの旨さで迫ってくる。
普通、堕天使が印象に残ってしまうほどの事件。それがやっぱり食べ物という主役が主役になる程の存在感。
それが素晴らしい。
どんなに気まずくても、
どんなに店員を憎もうとも、
それらを一気に吹っ飛ばす和菓子
コレが京都の奥深さなのかもしれない。
僕はあまりにウブ過ぎる。
知らなすぎるのだ。
巨大な京の神々に初戦をあしらわれた。
相席の女性は、見知らぬおっさんとの気まずい時間を最後に
「楽しかったです」
と言い残して新幹線に向かった。
大人は伝票を渡さず、払ってあげるのだろうが、あえてそれは辞めた。
あえて、だ。
途中、確実に「支払いどうしよう?」と浮かんだから。会話にも慣れ、初対面・赤の他人よりは盛り上がった場でも思い浮かんだ自分に少し格好良さも感じた。
でも、あえて。
僕がおごるのは変だもん。
気持ち悪いじゃん。
バカな女性なら「なんでよ~、おごればいいのに~」と考えるだろう。僕、そういうこという人キライ。
僕は1人旅で旅の最後に締めくくるほどのわらびもちをお金を出す価値を考えるのだ。
僕なら自分の働いたお金で払いたいのだ。
僕はこの試練を乗り切った。
もしこんな出来事が起こるのなら京都に通ってもいいかな。
お相手の方、当たり障りの無い会話に付き合ってくれてありがとう。あなたの大人な対応にも助けられたと思います。
京都事件簿ファイル1