傷跡

2011-10-05 08:53:39 | Autobiography
『落ち着きがない』って、親父からもお袋からもよく言われた。

今にして思えば…
じっとしていることが『落ち着いている』訳ではない…それは『おとなしい』であって、思いつきで行動してしまう『衝動』が抑えられないことを指して『落ち着きがない』と言っている…と、なかなか理解できなかったと思う。

例えば、散歩中の犬が『何か』を見つけて走り始めるような、そんな感じ。
じっとしていても、ブンブンと嬉しさを隠しきれない犬のシッポみたいな、そんな感じ。

おいらは『ワンコロ』と同等だった。
そのくらい解りやすく自分の感情が態度に出た。
よくいえば、素直。
悪く言えば、落ち着きがなかったんだろう。

その日、おいらは何か嬉しくて部屋の中を走り回っていた。
お袋が『危ないから止めなさい!』と言うのを何回か聞いた気がする。
でも、犬のシッポのように動き始めた感情はそう簡単に収まらない。

お袋の不安は的中する。
畳表の織り目に沿って足を滑らせて、おいらは転倒。
タンスの角に後頭部を強打する。
目から星が飛ぶ。
『転んだ…痛い…。』そう思った。
でも、意識はハッキリしていて、なんかクラクラ・ズキズキする頭が重いと感じていた。

『ほら、痛い思いしたじゃない!』と言ったお袋が急に慌て始める。
タオルを何枚か取ってきたお袋は、おいらの頭にそのタオルをかぶせた。
傷口が開いて出血していた。

その後のことは、よく覚えていない。
外科医に行って、傷口の縫合をしたことだけ…たったひと針だったが、チクリと痛かったことだけを覚えている。

何しろ後頭部のケガだったので、傷口も、出血の具合も見ていない。
ただ、出来てしまった傷跡が、後々『ハゲ』というからかいの原因になってしまったのは事実。
見えないから余計に気になる。

『その怪我』の痛みは出血の痛みよりも精神的な痛みとなって、それから10年以上も『悔やみきれない思い』としておいらを苦しめることになるとは、その当時のおいらは知る由もなく…。

もう直ぐ小学生になろうかと言う頃の話。
不良品の左手と、頭の傷跡と…。

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