BELOVED

好きな漫画やBL小説の二次小説を書いています。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。

何度生まれ変わっても・・第1話

2025年01月10日 | 天上の愛地上の恋現代昼ドラ人魚転生パラレル二次創作小説「何度生まれ変わっても…」

表紙素材は、mabotofu様様からお借りしました。

「天上の愛地上の恋」二次小説です。

作者様·出版社様とは一切関係ありません。

両性具有·男性妊娠設定あり、苦手な方はご注意ください。

二次創作·BLが苦手な方はご注意ください。


ルドルフがアルフレートと出逢ったのは、幼少期を共に過ごした恋人に去られ、更に親友同然の存在だった愛犬を喪い、自殺未遂をした後療養の為に滞在したトリエステにある港だった。

「皇太子様がどちらにもいらっしゃらないぞ!」
「城内を隈なく捜せ!」
「あぁ、一体どちらに行かれてしまったのか・・」

慌てふためく使用人達がルドルフを捜している頃、当の本人は港で海を眺めていた。
冷たい潮風が時折頬を撫でるのを感じながら、ルドルフは手に巻かれた真新しい包帯を見た。
あの日からまだ何日も経っていなかったが、ルドルフは未だにあの日の事を夢に見てしまう。
「・・っ」
この身を引き裂かれたかのような悲しみを、ルドルフは未だに引き摺っていた。
ルドルフは、まるで死神に手招かれるかのように、水中にその身を投じた。
同じ頃、海の底にある王国では、華やかなパーティーが行われていた。
その中で、黒髪の人魚―アルフレートだけが浮かない顔をしていた。
「どうしたの、アルフレート?」
「ううん、別に・・」
「もしかして、あの人の“予言”の事を気にしているの?」
「そ、そんなんじゃないよ・・」
ローザが言う“あの人”とは、王国の外れにある洞窟に棲んでいる、ベルトルト=バーベンブルクの事だった。
蛸の人魚である彼は、黒魔術や占星術に長けており、その噂を聞きつけた悩める人魚達が彼の元へ来て彼と“契約”をして、自分の願いを叶えているという話を、アルフレートはローザ達から聞き、興味本位で彼の元へと向かった。
「やぁ、アルフレート。漸くわたしの元へ来たね。」
 バーベンブルクはそう言ってアルフレートに微笑んだ。
「あの、占いに来て貰いました・・僕の、未来について。」
「わかったよ。」
バーベンブルクは、アルフレートを占った後、彼に向かってこう言った。
「お前はもうすぐ叶わぬ恋をするよ。」
「叶わぬ、恋?相手は、誰なのですか?」
「それは教えない。さぁ、ここへは来ない方がいいよ。」
(僕が叶わぬ恋をするなんて、馬鹿げている。僕は・・)
アルフレートがそんな事を思いながら海の中を泳いでいると、突然派手な水音がして、一人の男が彼の前に“現れた”。
重そうな、それでいて高級そうな黒貂の毛皮に身を包んだ長身の男は、気を失っていた。
“人間に近づいてはいけない”と、幼い頃から大人の人魚達からうるさく言い聞かせられて来たアルフレートだったが、その時は無意識に男を抱き締め、そのまま彼を岸まで運んでいった。
「大丈夫ですか?」
アルフレートがそう言いながら男の頬を叩くと、彼は金褐色の睫毛を微かに震わせて呻いた後、蒼い瞳でアルフレートを見た。
「お前が、わたしを助けてくれたのか?」
「あ、あの・・」
アルフレートは、男の美しい蒼い瞳に吸い込まれそうになった。
「お前、名前は?」
「僕は、アルフレートですけれど・・」
「そうか・・」
アルフレート男は暫く見つめ合っていると、遠くから複数人のものと思われる足音と声がこちらに近づいて来る気配がした。
「わたしは、これで失礼します。」
「待て!」
ルドルフの手を離し、アルフレートは再び海の中へと入った。
ルドルフの掌には、アルフレートが零した涙―真珠が載せられていた。
「ルドルフ様、ご無事でよかったです!」
「誰か、ヴィーダーホーファー博士を呼べ!」
ルドルフを捜していた兵士達と女官達は、彼をミラマーレ城へと連れて行った。
「脈拍には異常はありません。しかし真冬の海水に長時間浸かっていたので、お風邪を召されておいでなので、少し休ませた方が良いでしょう。」
「は、はい・・」
寝室に一人残されたルドルフは、黒髪の人魚が残した真珠を飽きる事なく見つめていた。
「ルドルフ、ロシェクから聞いたが、お前真冬の海に飛び込んだんだってな?」
ヨハン=サルヴァトールが、ルドルフが入水自殺未遂をしたという知らせを受け、ルドルフの元へと向かうと、ルドルフは虚ろな瞳で窓の外に映る空を見ていた。
「大公、わたしは人魚に会った。」
「は?」
「人魚が、わたしの命を救ってくれた・・」
「ルドルフ、お前・・」
“彼”に去られて、ルドルフは気が違ってしまったのだろうか―そんな事をヨハンが思っていると、ルドルフが徐に寝台の近くにある引き出しを開け、その中からある物を取り出してヨハンに見せた。
「これは何だ?」
「人魚からの贈り物だ。」
ヨハンがルドルフの掌に載っている真珠をよく見ると、それは極めて純度が高いものだった。
「大公、この真珠でカフスボタンを作って欲しい。」
「わかった。」
「あの人魚は、“彼”に似ていた・・」
「そうか。」
お伽噺でもあるまいし、人魚なんてこの世に居る訳がないと思ったヨハンは、ルドルフの言葉を鼻で笑った。
しかし、彼はルドルフの快気祝いのパーティーが行われた船上で、人魚の姿を目にした。
その人魚は、ルドルフの心を“殺し”去っていった彼の恋人と瓜二つの顔をしていた。
「お前は・・」

(嗚呼、ここへ来ては・・あの人に会いに来てはいけなかったのだ。)

アルフレートは、ルドルフに“叶わぬ”恋をしてしまった。
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何度生まれ変わっても・・序

2025年01月10日 | 天上の愛地上の恋現代昼ドラ人魚転生パラレル二次創作小説「何度生まれ変わっても…」

表紙素材は、mabotofu様様からお借りしました。

「天上の愛地上の恋」二次小説です。

作者様·出版社様とは一切関係ありません。

両性具有·男性妊娠設定あり、苦手な方はご注意ください。

二次創作·BLが苦手な方はご注意ください。


―アルフレート。
何処からか、波の音と共に誰かの呼ぶ声が聞こえたような気がした。
(これは、夢?それとも・・)
アルフレートがそんな事を思いながら寝返りを打っていると、外から雷鳴が轟き、彼は不思議な夢から覚めた。
「まだ三時、か・・」
寝直そうとしても目が冴えて眠れないので、アルフレートはベッドから出てこたつの中に入り、数日前に図書館から借りて来て読み始めた本を手に取った。
物語の世界に没入し、気づけばアルフレートは朝を迎えていた。
「おはよう、アルフレート。今日は早いんだね。」
「はい、雷で目が覚めてしまって・・」
「あぁ、夜中の?あれは凄かったわよね。」
台所アルフレートが入ると、そこには朝食を作っている彼の遠縁の叔母・ふみの姿があった。
「はい、これ。」
「ありがとうございます。」
「ねぇアルフレート、本当に大学に行かないの?」
「はい。この家に置いて頂けるだけでも有難いので・・」
「そんなに自分を卑下しなくてもいいじゃない。あんたの爪の垢を篤也に煎じて飲ませてやりたい位だわ。」
ふみが言った、篤也というのは、彼女の息子でアルフレートの良き義理の兄のような存在である。
十二歳で両親を交通事故で亡くし、ふみとその家族の一員となって、この小さな漁師町で暮らし始めてから、五年の歳月が経った。
アルフレートは、現在十七歳。
そろそろ進路を考える時期でもあり、アルフレートは大学へ行かない事を決めた。
今までふみ達に良くして貰ったのだから、これから先は彼らに恩返しをしなければ―そんな事を思いながら、アルフレートは自転車で高校へと向かった。
潮の香りを嗅ぎながらアルフレートが自転車のペダルを漕いでいると、港に一人の男が立っている事に気づいた。
少し赤みがかったブロンドの髪は冬の陽光に照らされ、神々しい光を放ち、まるでその姿は地上に降り立った天使のようだった。
こんな田舎に、珍しいな―アルフレートがそんな事を思いながら港を通り過ぎようとした時、男の蒼い瞳と、アルフレートの翠の瞳がぶつかった。
(え、何?)
男に見つめられた時、アルフレートの脳裏に、ある光景が浮かんで来た。
“約束する、何度生まれ変わっても、お前を・・”
(この人は、一体・・)
暫くアルフレートが男と見つめ合っていた時、遠くから始業を告げるチャイムが聞こえて来たので、アルフレートは我に返り、港を離れた。
「やっと見つけた、わたしの・・」
男の声は、海鳥の泣き声に掻き消された。
(今朝港で見かけた人、一体何者だったんだろう・・)
放課後、学校から出てアルバイト先の食堂へと自転車で向かったアルフレートは、その途中で一台の車と擦れ違った。
「今晩は~」
「アルフレート君、今日もよろしくね。」
「はい。」
この食堂は、この町唯一の憩いの場であった。
「カニクリームコロッケ定食、あがりました!」
夕飯時には、町民達が集まり、賑わっていた。
この食堂の一番人気のメニューは、新鮮なカツオの切り身の上に細かく切り刻んだタマネギ、マヨネーズをかけ、それを熱々のご飯の上にかける、“カツオマヨ丼”だった。
「アルフレートちゃん、カツオマヨ丼ひとつ!」
「はいよ!」
その日はいつものように、アルフレートが働いていると、そこへ一人の男が店に入って来た。
「いらっしゃいませ~」
アルフレートがそう言って男に笑顔を浮かべると、彼は突然アルフレートの前に跪き、アルフレートにこう言った。
「やっと見つけた、わたしの伴侶。」
「え?」
男はアルフレートを蒼い瞳で見つめた後、彼の唇を塞いだ。
突然の事に、アルフレートは一瞬驚きで固まったが、男の頬を平手打ちした。
「何するんだ、この変態!」
「わたしの伴侶になってくれ。」
「誰か、警察呼んで下さい!」
その後、アルフレートと男はそれぞれ店に駆け付けた警察官から事情を聞かれ、アルフレートが帰宅したのは夜十時を過ぎた頃だった。
「災難だったねぇ、明日は休んで、ゆっくりしなさい。」
「はい・・」
ふみと共に帰宅したアルフレートは、自室に入ると深い溜息を吐いた後ベッドの中に入った。
すると、また昨夜と同じ夢を見た。
―アルフレート。
そう言って自分に微笑んでいるのは、バイト先の食堂で自分に突然キスをして来た男と瓜二つの顔をしていた。
(何なんだ、もう!)
夢から覚めたアルフレートが、苛立ち紛れに枕を殴っている頃、アルフレートに平手打ちをされた男は、札幌市内のホテルの一室で目を覚ました。
(今日も、彼に会わなければ・・)
男がそんな事を思いながらベッドから出てコーヒーを飲んでいると、枕元に置いてあったスマートフォンがけたたましく鳴った。
「もしもし?」
『ルドルフ様、どちらにいらっしゃるのですか?すぐにウィーンにお戻りになって・・』
「わたしには、まだやるべき事がある。それまでウィーンには戻らないと、父上に伝えておけ。」
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綺羅星の如く 第1話

2025年01月10日 | F&B×天愛 異世界転生ファンタジーパラレル二次創作小説「綺羅星の如く」

表紙は、黒獅様からお借りしました。

「天上の愛地上の恋」「FLESH&BLOOD」二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

海斗とアルフレートが両性具有です、苦手な方はご注意ください。

二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。

「申し訳ないけど、もう来なくていいから。」
「え?」
店主からの、突然の解雇通告は、アルフレートにとってまさに青天の霹靂そのものだった。
「うちも厳しいから、ね・・」
「そうですか、お世話になりました。」
アルフレートはそう言うと、更衣室に入り、ロッカーに入れてあった私物をリュックに詰め込むと、4年間働いていたダイナーを後にした。
警察を辞めてから、貯金とダイナーで働いた給料で何とか食い繋いできたが、それも限界に来ている。
今更大学時代に取った資格を活かして仕事をしようかとアルフレートが交差点で信号待ちをしながら考えていると、信号無視をしたトラックが彼の元に突っ込んで来た。
遠のく意識の中、アルフレートは誰かが自分を呼んでいる声を微かに聞いたような気がした。
「それにしても、今日は嵐が来そうだな。」
「えっ、こんなに天気が良いのに?」
“グローリア号”の船長・ジェフリー=ロックフォードの言葉を聞いた彼の恋人・東郷海斗は、そう言って蒼く澄み切った空を見た。
「わかっていないな、坊や。俺位の年になると、雲の動き一つで天気がわかっちまうのさ。」
「へぇ・・」
海斗が恋人の言葉に感心していると、何かが“グローリア号”の近くに漂っている事に気づいた。
「ジェフリー、あれ見て!人が浮いているよ!」
「ボートを下ろせ!」
二人はボートに乗り、海に浮いているアルフレートを救出した。
「大丈夫ですか?」
「う・・」
「カイト、ナイジェルとキットを呼んで来い!」
「わかった!」
アルフレートが目を覚ますと、そこは船長室のような部屋にある、ハンモックの中に自分が寝かされている事に気づいた。
「あの、ここは・・」
「あんた、海の中を漂っていたんだよ!俺達が見つけていなきゃ、死んでたぜ!」
「助けて下さり、ありがとうございます・・」
「ジェフリー、入るぞ。」
船長室に入って来たのは、ブルネットの髪をした男と、鳶色の髪をした男だった。
ブルネットの髪をした男はナイジェル=グラハム、鳶色の髪をした男はクリストファー=マーロウとそれぞれアルフレートに名乗った。
「これ、あんたの荷物だろ?海水に浸かったが、一応中身を確認してくれ。」
「は、はい・・」
アルフレートは、部屋の床に広げられた自分の私物をひとつずつ確認した。
運転免許証、IDカードなどのカード類は海水に浸かっていたが、乾かせば大丈夫そうだ。
「そのメダイは?」
「これは、亡くなった祖父の形見です。これだけは無事で良かったです。」
「そうか。ここで会ったのも何かの縁だ。あんた、名前は?」
「アルフレート=フェリックスと申します。」
「俺はジェフリー=ロックフォード、こっちは俺の恋人の、東郷海斗だ。」
「よろしくお願い致します。」
こうしてアルフレートは、“グローリア号”の一員となった。
「アルフレートさん、ちょっといい?」
「は、はい・・」
アルフレートが“グローリア号”の一員となってから数日後の事、海斗に呼び出され、彼と共にアルフレートは船長室に入った。
そこには、ナイジェルとクリストファー=マーロウことキットの姿があった。
「あの、わたしに話したい事って・・」
「実は、今朝こんなものが届いたんだ。」
そう言うとキットは、一枚の紙をアルフレートに見せた。
「それは・・」
「この国の皇太子の許婚が、行方不明になっているみたいでな。その許婚とあんたの顔が、そっくりなんだよ。」
「確かに・・」
アルフレートは、その紙に描かれていた女性の顔が、自分と瓜二つである事に気づいた。
「そこでだアルフレートさん、俺を助けると思って、俺に協力して欲しい。」
「協力?」
キットは、皇太子に命じられて失踪した彼の許婚を捜していたが、一向に見つからない。
丁度いいころ合いに皇太子の許婚と瓜二つの顔をしたアルフレートと出会い、キットの頭の中にある作戦が閃いた。
「わたしが、皇太子の許婚の振りをしろ、と?」
「あぁ。知り合ったばかりのあんたにこんな事を頼むのはなんだが、俺に協力してくれないか?」
「わかりました・・」
キットに協力する事になったアルフレートは、皇太子の許婚を演じる為の“レッスン”を彼から一週間、みっちりと受けた。
「さてと、これから色々と大変な事になるだろうが、その覚悟は出来ているか?」
「はい。」
「アルフレートさん、頑張って!」
「ありがとう、カイトさん。」
キットと共に“グローリア号”から降りたアルフレートは、ドレスの裾を摘み、慣れないハイヒールで歩きながら馬車に乗り込んだ。
「そうか、アンジェラが・・」

ハプスブルク帝国皇太子・ルドルフは、そう言うと持っていた羽根ペンをペン立ての中にしまった。

彼の前には、許婚の死亡通知書が置かれていた。



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