「ハリー・ポッター」「天上の愛地上の恋」二次小説です。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。
二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。
いい所をヨハンに邪魔されたルドルフは、夕食の時間まで機嫌が悪かった。
「ルドルフ様、機嫌直して下さいよ。」
「アルフレート、今夜わたしの所へ来い。」
ルドルフはそう言うと、アルフレートの手を優しく撫でた。
「は、はい・・」
(また、こいつらは・・)
二人のそんな様子を見ていたヨハンは、溜息を吐いた。
“昔”から、この二人の関係を知っていたヨハンだったが、それは転生して二人と再会した時も、同じ損な役回りになってしまった事に何と自分は運が悪いのだと思った。
「おいおい、その位にしておけよ。」
「うるさいな。」
ルドルフは、そう言うとヨハンを手で追い払った。
「あ~、もうっ!」
「どうしたのよジャンナ、苛々しちゃって。」
そう言って彼に声を掛けて来たのは、ヨハンの恋人・ミリだった。
彼女は“昔”と同じように、ヨハンを“ジャンナ”と呼んでいた。
「その様子だと、またあの二人にあてられたのね?」
「あぁ。」
ヨハンはルドルフとは“昔”と同じような、互いに幼少の頃から親しい間柄だが、彼がアルフレートと恋人同士になってからは、彼らの“後始末”をする羽目になった。
「まぁ、少しの間もアルフレートと離れたくないっていうルドルフ様の気持ちはわからなくはないわよ。アルフレートとルドルフ様が幸せに過ごした時間は、短かったからね。」
「あぁ、そうだな・・」
あの後、マイヤーリンクから正気を失ったルドルフを連れ出し、アルフレート達と共に米国で暮らしていた頃の事を、ヨハンは思い出していた。
米国の農場で暮らし始めてから数年経った頃、ルドルフの正気が戻ったのは、雪の夜の事だった。
「ルドルフ様、わかりますか?」
「アルフレート、アルフレートなのか?」
かつて、アルフレートがベルトルト=バーベンブルクによって凌辱され、精神を闇の底から救い出してくれたのがルドルフの存在であったかのように、ルドルフもアルフレートのお陰で狂気から抜け出したのであった。
正気を取り戻したルドルフはアルフレートと幸せな日々を送っていたが、それは長く続かなかった。
アルフレートは、農場の仕事をする傍ら、村の学校で子供達に読み書きを教えていた。
そんな中、村に疫病に広がり、子供達の看病をしていたアルフレートもその疫病に罹ってしまった。
アルフレートはルドルフに病に臥せっている事は言わないでくれとヨハン達に口止めしてきたが、無駄だった。
1898年9月10日、ルドルフの母であるオーストリア=ハンガリー帝国皇后・エリザベートがスイス・ジュネーヴのレマン湖畔で無政府主義者のルイジ=ルキーニによって刺殺され、60年の生涯を終えた。
同じ頃、アルフレートの病状が悪化し、エリザベート暗殺の一月後、アルフレートは43年の生涯を終えた。
母と最愛の伴侶を立て続けに亡くしたルドルフは酷く憔悴し、アルフレートの後を追うかのように、その年の冬に亡くなった。
「あいつにとって、アルフレートは唯一無二の存在だったんだろう。だから、あんな形で・・」
「もう止しましょう、その話は。今は二人が幸せなんだから、いいじゃない。」
「そうだな・・」
「あ、今年のクリスマス・ダンスパーティー、あの二人はどうするのかしら?」
「さぁな。それよりもミリ、魔法薬学のレポートは終わったのか?」
「あ、いけない、まだだったわ!」
ミリはそう言いながら、忙しなく羽根ペンを動かした。
大広間でミリとヨハンが魔法薬学のレポートにひぃひぃ言っている頃、図書館ではルドルフとアルフレートが魔法史のレポートを纏めていた。
「やっと終わったな。」
「はい・・」
「じゃぁ、行こうか。」
ルドルフと手を握りながら、アルフレートは彼と共に図書館から出て、スリザリン寮へと向かった。
スリザリン寮の談話室は誰も居らず、静まり返っていた。
「ルドルフ様、ん・・」
「ここでお前を抱く。」
ルドルフはそう言うと、アルフレートの唇を塞いだ。
「いけません、誰かに見られたら・・」
「誰も居ないだろう?それにもう、我慢出来ない。」
ルドルフはアルフレートを己の膝上に抱くと、熱く滾った己のモノを彼の尻に押し付けた。
「ルド・・」
「もう喋るな。」
ルドルフは赤面するアルフレートの唇を塞いで彼の口内を犯した後、指先で彼の胸を愛撫した。
「あっ、やぁっ、ルドルフ様・・」
「どうして欲しい?」
ルドルフはそう言うと、口端を上げて笑った。
「焦らさないで下さい・・」
アルフレートが熱で潤んだ瞳でルドルフを睨みつけると、ルドルフは彼の額にキスをした後、スラックスの前を寛がせ、素早く己のモノにスキンを着け、彼の中に挿入った。
翌朝、大広間で朝食を食べていたヨハンは、スリザリンのテーブルがやけに静かな事に気づいた。
「あちゃぁ、ありゃ二人にやられたな。」
「そりゃ、大変だわね。」
スリザリンの寮生達は、皆目の下に酷い隈が出来ていた。
その理由は、ルドルフとアルフレートの艶声に悩まされて皆寝不足になってしまったからだろう。
自分達は、現在15歳―思春期真っ只中だ。
その頃の“昔”の自分達は、異性の事しか考えていなかったように思えた。
「ルドルフ、少しは控えたらどうだ?」
「何の話だ、大公?」
魔法植物学の授業でヨハンがそれとなくルドルフに忠告すると、彼はわざとらしくヘッドフォンを着け、マンドレイクを鉢から引っこ抜いていた。
「ルドルフ、あのな・・」
「ん~、聞こえないぞ?」
「そいつを一旦下ろせ。」
「何だ?」
ルドルフはマンドレイクをヨハンの耳元に近づけた。
ヘッドフォン越しでもマンドレイクの泣き喚く声が聞こえるので、ヨハンはそれ以上何も言わなかった。
「おいルドルフ、アルフレートはどうした?」
「アルフレートなら、わたしの部屋で休んでいる。昨夜は盛り上がり過ぎてあいつを苛め過ぎてしまった。」
「へぇ、そうかい・・」
「もっとあいつの中に入っていたかったが・・」
「やめろ、それ以上は聞きたくない。」
ヨハンとルドルフがそんな話をしている頃、アルフレートはスリザリン寮にあるルドルフの部屋に居た。
一般生徒は四人部屋で寝るのが普通なのだが、一度ルドルフがアルフレートを寝室に連れ込んで同室の者達から苦情が殺到した為、彼だけは特例として個室を与えられていた。
「う・・」
ヨロヨロと寝台から起き上がると、首筋から全身にかけてルドルフがつけた所有の証に気づき、アルフレートは昨夜の事を思い出し、顔を赤くして俯いた後、浴室に入ってシャワーを浴びた。
ルドルフと初めて結ばれたのは、昨年のクリスマス・ダンスパーティーの時だった。
それからというもの、ルドルフは時と場所を選ばずアルフレートを求めるようになった。
毎日彼に抱かれるのは、少し体力的に辛いので、ルドルフが戻ったらその事を話そうか―アルフレートがそんな事を思いながらタオルで身体を拭いていると、誰かが部屋に入って来る気配がした。
「誰か、居るのですか?」
バスローブを着て浴室から出たアルフレートは、部屋のドアの近くで立ち竦んでいる二人の少年達の姿に気づいた。
一人は金髪灰眼で、もう一人は黒髪翠眼だった。
「あ、あの、朝食を持ってきました。」
金髪の少年―スコーピウス=マルフォイはそう言って、ソファの前にあるテーブルの上に朝食を載せたトレイを置いた。
「ありがとう、スコーピウス君。」
「僕の事、ご存知なんですか?」
「ルドルフ様が、君の事を気に掛けているからね。あ、君は確か、アルバス=セブルス=ポッター君だね?」
「あ、はい!」
黒髪の少年―アルバスは、アルフレートに突然声を掛けられ、緊張の余り固まってしまった。
「そんなに緊張しないで。二人共、朝食を届けてくれてありがとう。」
「い、いえ・・」
「昨夜は迷惑をかけたね。アルバス、君が、最近元気が無いとルドルフ様から聞いているよ。何かあったの?」
「飛行術も魔法薬学も上手くいかなくて・・それに、僕だけがポッター家の中でスリザリンなんです。」
そう言ったアルバスは、俯いた。
“魔法界の英雄”であるハリー=ポッターの息子であるアルバスの苦悩やプレッシャーを感じる姿に、アルフレートはルドルフの姿と重ねていた。
「ルドルフ様も、ハプスブルク家の中で唯一スリザリンに組み分けられたのですよ。魔法薬学も苦手ですし。」
「え、そうなんですか!?」
「今からお話する事は、ルドルフ様には内緒ですよ。」
アルフレートは二人にそう言って微笑むと、ホグワーツに入学した年に迎えたクリスマス休暇の事を話し始めた。
―あの子がスリザリンだなんて。
―ハプスブルク家の血をひいた子が、どうして・・
―やはり、ヴィッテルスバッハ家の血が・・
ルドルフがスリザリンに組み分けされた事により、彼の周囲に居る人間達は心無い陰口を叩いていたが、ルドルフの事で一番憤慨していたのは、彼の祖母・ゾフィーだった。
『お前はこの家の恥晒しよ、ルドルフ!』
祖母に面と向かって罵倒され、平手で頬を打たれたルドルフは、吹雪が舞う中外へと飛び出していってしまった。
「ルドルフ様、お戻りください、お風邪を召されます。」
「うるさい、お前だって僕が居なくなればいいと思っているんだろう!?」
「馬鹿な事をおっしゃらないで下さい!」
アルフレートはそう叫ぶと、ルドルフを抱き締めた。
「やめろ、離せ!」