BELOVED

好きな漫画やBL小説の二次小説を書いています。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。

愛唄 ~君に伝えたいこと~ 1

2025年01月08日 | 天上の愛地上の恋 現代転生パラレル二次創作小説「愛唄〜君に伝えたいこと〜」


「天上の愛地上の恋」二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。

―ルドルフ様
夢の中で、“彼”はいつも笑っていた。
いつも、自分の隣に居てくれた“彼”は、星空が美しく瞬く中で、静かに逝った。
―ルドルフ様、約束します。何処で何をしても、わたしは必ずあなたの元に戻ります。
(お前は嘘吐きだ、アルフレート。また一緒に居られると思ったのに、お前は―)
朝の光が、カーテン越しに殺風景な部屋を静かに照らし始めた。
「ん・・」
ルドルフは眠い目を擦りながらベッドから出ると、隣に寝ていた筈の女は居なかった。
彼女と何処でどう知り合ったのかさえ、もう憶えていなかった。
所詮、そういったレベルの女だったという訳だ。
ただ、それだけの話だった。
手早くシャワーを浴び、身支度を済ませると、ルドルフは愛車に乗って大学へと向かった。
「はぁ、今日も暑いなぁ。」
同じ頃、アルフレート=フェリックスは自転車を漕ぎながら、そう言って溜息を吐いた。
生まれ故郷である緑豊かな田舎から、極東の島国へとやって来て、数年経つ。
毎年、夏になると日本は酷暑が続き、昼夜問わずアルフレートは何とか暑さを凌いでいた。
日本に来て最初の頃は、日本語がわからずに苦労したが、やがて慣れて来た。
今は日本語も何も不自由なく流暢に話せるし、毎日アルバイト漬けだが、退屈な田舎での生活よりも刺激的な生活を送っていた。
(ふぅ、何とか間に合ったな。)
アルフレートがそう思いながら大学の駐輪場に自転車を停めていると、そこへ一人の学生がやって来た。
「アルフレート、おはよう。」
「おはよう、テオドール。」
「今日も暑いね。」
「あぁ。日本に来て数年経つけど、この暑さは未だに慣れないね。」
「そうだね。」
アルフレートがテオドールと共に大学の構内を歩いていると、向こうから華やかな連中が歩いて来るのが見えた。
「あの人達は?」
「あぁ、あの人達は、この大学の中で一番派手なグループさ。余り関わらない方がいいよ。」
「わかった。」
「あ、もうこんな時間だ、急がないと遅刻するよ!」
「待ってよ、テオドール!」
アルフレートはそう言って友人の後を追い掛けた時、誰かに見つめられたような気がしたが、彼はその事に気も留めなかった。
何とか一限目の講義に間に合ったアルフレートが背負っていたバックパックからルーズリーフを取り出した時、彼は再び強い視線を感じて振り向くと、そこには誰も居なかった。
(気の所為か・・)
「アルフレート君、君って家事出来る?」
「出来るけど、それがどうしたの?」
昼休み、アルフレートがコーヒーを飲んでいると、そこへ同じ学部の学生がやって来た。
「実はさぁ~、家事代行サービスのバイト、人手不足でカツカツでさぁ~、上司から誰か勧誘して来いって頼まれてさぁ・・」
「わかった、やるよ。」
家事代行のバイトは、アルフレートが今やっている配達員のそれよりも待遇や給料が良かった。
“今回の派遣先のお客様は気難しい人だけど、君なら大丈夫そうだ。”
面接の際、上司からそう太鼓判を押され、アルフレートが向かったのは、都内の一等地に立つタワー=マンションの最上階だった。
この部屋に住んでいるのは、自分と同じ大学に通う学生だという。
苦学生の自分とは、天と地程に住んでいる世界が違う人間が居るのだな―そう思いながらアルフレートは、大きく深呼吸してタワー=マンションのエントランスにあるインターフォンの画面に、派遣先の部屋番号を入力した。
『どちら様ですか?』
「家事代行サービスです。」
『どうぞ。』

カチャリと、オートロックが解除される音がしたので、アルフレートはそのままエレベーターで最上階まで向かった。
エレベーターから降りると、美しい装飾が施されたドアが、アルフレートの前に現れた。

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光と闇の邂逅 第2話

2025年01月08日 | ハリポタ×天上の愛地上の恋 クロスオーバー二次創作小説「光と闇の邂逅」


「ハリー・ポッター」「天上の愛地上の恋」二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。

いい所をヨハンに邪魔されたルドルフは、夕食の時間まで機嫌が悪かった。

「ルドルフ様、機嫌直して下さいよ。」
「アルフレート、今夜わたしの所へ来い。」
ルドルフはそう言うと、アルフレートの手を優しく撫でた。
「は、はい・・」
(また、こいつらは・・)
二人のそんな様子を見ていたヨハンは、溜息を吐いた。
“昔”から、この二人の関係を知っていたヨハンだったが、それは転生して二人と再会した時も、同じ損な役回りになってしまった事に何と自分は運が悪いのだと思った。
「おいおい、その位にしておけよ。」
「うるさいな。」
ルドルフは、そう言うとヨハンを手で追い払った。
「あ~、もうっ!」
「どうしたのよジャンナ、苛々しちゃって。」
そう言って彼に声を掛けて来たのは、ヨハンの恋人・ミリだった。
彼女は“昔”と同じように、ヨハンを“ジャンナ”と呼んでいた。
「その様子だと、またあの二人にあてられたのね?」
「あぁ。」
ヨハンはルドルフとは“昔”と同じような、互いに幼少の頃から親しい間柄だが、彼がアルフレートと恋人同士になってからは、彼らの“後始末”をする羽目になった。
「まぁ、少しの間もアルフレートと離れたくないっていうルドルフ様の気持ちはわからなくはないわよ。アルフレートとルドルフ様が幸せに過ごした時間は、短かったからね。」
「あぁ、そうだな・・」
あの後、マイヤーリンクから正気を失ったルドルフを連れ出し、アルフレート達と共に米国で暮らしていた頃の事を、ヨハンは思い出していた。
米国の農場で暮らし始めてから数年経った頃、ルドルフの正気が戻ったのは、雪の夜の事だった。
「ルドルフ様、わかりますか?」
「アルフレート、アルフレートなのか?」
かつて、アルフレートがベルトルト=バーベンブルクによって凌辱され、精神を闇の底から救い出してくれたのがルドルフの存在であったかのように、ルドルフもアルフレートのお陰で狂気から抜け出したのであった。
正気を取り戻したルドルフはアルフレートと幸せな日々を送っていたが、それは長く続かなかった。
アルフレートは、農場の仕事をする傍ら、村の学校で子供達に読み書きを教えていた。
そんな中、村に疫病に広がり、子供達の看病をしていたアルフレートもその疫病に罹ってしまった。
アルフレートはルドルフに病に臥せっている事は言わないでくれとヨハン達に口止めしてきたが、無駄だった。
1898年9月10日、ルドルフの母であるオーストリア=ハンガリー帝国皇后・エリザベートがスイス・ジュネーヴのレマン湖畔で無政府主義者のルイジ=ルキーニによって刺殺され、60年の生涯を終えた。
同じ頃、アルフレートの病状が悪化し、エリザベート暗殺の一月後、アルフレートは43年の生涯を終えた。
母と最愛の伴侶を立て続けに亡くしたルドルフは酷く憔悴し、アルフレートの後を追うかのように、その年の冬に亡くなった。
「あいつにとって、アルフレートは唯一無二の存在だったんだろう。だから、あんな形で・・」
「もう止しましょう、その話は。今は二人が幸せなんだから、いいじゃない。」
「そうだな・・」
「あ、今年のクリスマス・ダンスパーティー、あの二人はどうするのかしら?」
「さぁな。それよりもミリ、魔法薬学のレポートは終わったのか?」
「あ、いけない、まだだったわ!」
ミリはそう言いながら、忙しなく羽根ペンを動かした。
大広間でミリとヨハンが魔法薬学のレポートにひぃひぃ言っている頃、図書館ではルドルフとアルフレートが魔法史のレポートを纏めていた。
「やっと終わったな。」
「はい・・」
「じゃぁ、行こうか。」
ルドルフと手を握りながら、アルフレートは彼と共に図書館から出て、スリザリン寮へと向かった。
スリザリン寮の談話室は誰も居らず、静まり返っていた。
「ルドルフ様、ん・・」
「ここでお前を抱く。」
ルドルフはそう言うと、アルフレートの唇を塞いだ。
「いけません、誰かに見られたら・・」
「誰も居ないだろう?それにもう、我慢出来ない。」
ルドルフはアルフレートを己の膝上に抱くと、熱く滾った己のモノを彼の尻に押し付けた。
「ルド・・」
「もう喋るな。」
ルドルフは赤面するアルフレートの唇を塞いで彼の口内を犯した後、指先で彼の胸を愛撫した。
「あっ、やぁっ、ルドルフ様・・」
「どうして欲しい?」
ルドルフはそう言うと、口端を上げて笑った。
「焦らさないで下さい・・」
アルフレートが熱で潤んだ瞳でルドルフを睨みつけると、ルドルフは彼の額にキスをした後、スラックスの前を寛がせ、素早く己のモノにスキンを着け、彼の中に挿入った。
翌朝、大広間で朝食を食べていたヨハンは、スリザリンのテーブルがやけに静かな事に気づいた。
「あちゃぁ、ありゃ二人にやられたな。」
「そりゃ、大変だわね。」
スリザリンの寮生達は、皆目の下に酷い隈が出来ていた。
その理由は、ルドルフとアルフレートの艶声に悩まされて皆寝不足になってしまったからだろう。
自分達は、現在15歳―思春期真っ只中だ。
その頃の“昔”の自分達は、異性の事しか考えていなかったように思えた。
「ルドルフ、少しは控えたらどうだ?」
「何の話だ、大公?」
魔法植物学の授業でヨハンがそれとなくルドルフに忠告すると、彼はわざとらしくヘッドフォンを着け、マンドレイクを鉢から引っこ抜いていた。
「ルドルフ、あのな・・」
「ん~、聞こえないぞ?」
「そいつを一旦下ろせ。」
「何だ?」
ルドルフはマンドレイクをヨハンの耳元に近づけた。
ヘッドフォン越しでもマンドレイクの泣き喚く声が聞こえるので、ヨハンはそれ以上何も言わなかった。
「おいルドルフ、アルフレートはどうした?」
「アルフレートなら、わたしの部屋で休んでいる。昨夜は盛り上がり過ぎてあいつを苛め過ぎてしまった。」
「へぇ、そうかい・・」
「もっとあいつの中に入っていたかったが・・」
「やめろ、それ以上は聞きたくない。」
ヨハンとルドルフがそんな話をしている頃、アルフレートはスリザリン寮にあるルドルフの部屋に居た。
一般生徒は四人部屋で寝るのが普通なのだが、一度ルドルフがアルフレートを寝室に連れ込んで同室の者達から苦情が殺到した為、彼だけは特例として個室を与えられていた。
「う・・」
ヨロヨロと寝台から起き上がると、首筋から全身にかけてルドルフがつけた所有の証に気づき、アルフレートは昨夜の事を思い出し、顔を赤くして俯いた後、浴室に入ってシャワーを浴びた。
ルドルフと初めて結ばれたのは、昨年のクリスマス・ダンスパーティーの時だった。
それからというもの、ルドルフは時と場所を選ばずアルフレートを求めるようになった。
毎日彼に抱かれるのは、少し体力的に辛いので、ルドルフが戻ったらその事を話そうか―アルフレートがそんな事を思いながらタオルで身体を拭いていると、誰かが部屋に入って来る気配がした。
「誰か、居るのですか?」
バスローブを着て浴室から出たアルフレートは、部屋のドアの近くで立ち竦んでいる二人の少年達の姿に気づいた。
一人は金髪灰眼で、もう一人は黒髪翠眼だった。
「あ、あの、朝食を持ってきました。」
金髪の少年―スコーピウス=マルフォイはそう言って、ソファの前にあるテーブルの上に朝食を載せたトレイを置いた。
「ありがとう、スコーピウス君。」
「僕の事、ご存知なんですか?」
「ルドルフ様が、君の事を気に掛けているからね。あ、君は確か、アルバス=セブルス=ポッター君だね?」
「あ、はい!」
黒髪の少年―アルバスは、アルフレートに突然声を掛けられ、緊張の余り固まってしまった。
「そんなに緊張しないで。二人共、朝食を届けてくれてありがとう。」
「い、いえ・・」
「昨夜は迷惑をかけたね。アルバス、君が、最近元気が無いとルドルフ様から聞いているよ。何かあったの?」
「飛行術も魔法薬学も上手くいかなくて・・それに、僕だけがポッター家の中でスリザリンなんです。」
そう言ったアルバスは、俯いた。
“魔法界の英雄”であるハリー=ポッターの息子であるアルバスの苦悩やプレッシャーを感じる姿に、アルフレートはルドルフの姿と重ねていた。
「ルドルフ様も、ハプスブルク家の中で唯一スリザリンに組み分けられたのですよ。魔法薬学も苦手ですし。」
「え、そうなんですか!?」
「今からお話する事は、ルドルフ様には内緒ですよ。」
アルフレートは二人にそう言って微笑むと、ホグワーツに入学した年に迎えたクリスマス休暇の事を話し始めた。
―あの子がスリザリンだなんて。
―ハプスブルク家の血をひいた子が、どうして・・
―やはり、ヴィッテルスバッハ家の血が・・
ルドルフがスリザリンに組み分けされた事により、彼の周囲に居る人間達は心無い陰口を叩いていたが、ルドルフの事で一番憤慨していたのは、彼の祖母・ゾフィーだった。
『お前はこの家の恥晒しよ、ルドルフ!』
祖母に面と向かって罵倒され、平手で頬を打たれたルドルフは、吹雪が舞う中外へと飛び出していってしまった。
「ルドルフ様、お戻りください、お風邪を召されます。」
「うるさい、お前だって僕が居なくなればいいと思っているんだろう!?」
「馬鹿な事をおっしゃらないで下さい!」
アルフレートはそう叫ぶと、ルドルフを抱き締めた。
「やめろ、離せ!」
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光と闇の邂逅 第1話

2025年01月08日 | ハリポタ×天上の愛地上の恋 クロスオーバー二次創作小説「光と闇の邂逅」


「ハリー・ポッター」「天上の愛地上の恋」二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。

「ルドルフ様、起きて下さい。」
「ん・・」
ルドルフ=フランツ=カール=ヨーゼフ=フォン=ハプスブルクは、気怠そうな様子で寝台の近くに立って自分を揺り起こした恋人を蒼い瞳で見た。
「もうそろそろ起きませんと、汽車の時間に遅れてしまいますよ。」
「わかった。」
少し不貞腐れたような顔をしたルドルフは、浴室でシャワーを浴びた後、素早く身支度を済ませ、恋人・アルフレート=フェリックスと共にキング=クロス駅へと向かった。
「こうしてホグワーツ特急に乗っていると、何だか“昔”の事を思い出すな。」
「そうですか・・」
アルフレートはそう言うと、窓の外に広がる田園風景を眺めながら、初めてホグワーツ特急に乗り、組分け帽子を被った時の事を思い出していた。
オーストリアの名門伯爵家・ハプスブルク家の嫡子として生まれたルドルフと、孤児であったアルフレートが出会ったのは、ルドルフが家族と共に避暑の為に訪れた、シュタルンベルク湖近くの別荘地だった。
そこの管理人をしていたアルフレートの遠縁の伯父・マティアスの手伝いをしていたアルフレートは、その日人気のない湖の近くで守護霊を創る練習をしていた。
“いいかい、アルフレート、守護霊を創り出す為には、人生で一番幸せな事を思い出すんだ。”
「エクスペクト・パトローナム!」
アルフレートがそう叫びながら杖を振ると、その先から白銀の一角獣が現れ、湖を駆けていった。
「やった、出来たぞ!」
「凄い・・僕と同い年で・・」
背後から突然声が聞こえ、アルフレートが振り向くと、そこには自分と同い年位の少年が立っていた。
金褐色の髪を揺らし、美しく澄んだ蒼い瞳で自分を見つめている少年が、貴族だとアルフレートは一目でわかった。
「君、名前は?」
「僕は、アルフレートだけど、君は・・」
「ルドルフ様、どちらにおいでですか~」
別荘地の方から、数人分の慌しい足音と共に、ルドルフとアルフレートの前に現れたのは、ハプスブルク家の使用人達だった。
「ルドルフ様、奥様が捜していらっしゃいますから、どうかわたくし達と共にお屋敷へお戻り下さい。」
「嫌だ!」
「ルドルフ様・・」
頑としてその場から動こうとしないルドルフにハプスブルク家の使用人達が困り果てていると、二羽のフクロウが滑るように彼らの元へと舞い降りて来た。
フクロウ達は嘴に咥えていた二通の手紙をそれぞれルドルフとアルフレートの足元に落とすと何処かへと飛び去っていった。
「一体、何だこれは?」
「さぁ・・」
アルフレートが手紙に目を通すと、そこには“H”という蜜蝋が捺されており、手紙には、こう書かれていた。
『アルフレート=フェリックス様、貴殿のホグワーツ魔法魔術学校への入学を許可いたします。』
「ホグワーツ?」
「もしかして、君は何も知らないのか?まぁそうだろうな、見たところ・・」
「ルドルフ、こんな所に居たのね。」
「母上・・」
「奥様、こちらを。」
使用人の一人が、そう言ってルドルフの元に来た手紙をルドルフの母・エリザベートに見せた。
「まぁ、ホグワーツからだわ。これから、色々と忙しくなるわね。」
「はい、母上。」
ルドルフはそう言った後、チラリとアルフレートを見た。
「あら、あなたは・・」
「初めまして、奥様。僕は、アルフレート=フェリックスと申します。あの、僕はこれで失礼を・・」
「勝手な真似は許さないよ。君は僕とホグワーツへ行くんだ。」
「え・・」
こうして、ひょんな事からアルフレートはハプスブルク伯爵家で暮らす事になった。
ロンドンのダイアゴン横丁で学校に必要な物をエリザベート達とひと通り買い揃えたルドルフとアルフレートは、あてもなくブラブラと歩いていた。
そんな時、ルドルフが足を止めたのは、ショーウィンドーに高価なネックレスや指輪などが飾られている宝飾店だった。
「あの、ルドルフ様?」
「サイズは合っているな。」
ルドルフは店員から出して貰ったサファイアの指輪を、そう言って躊躇う事無くアルフレートの左手薬指に嵌めた。
「え、あの・・」
「これを、指輪の裏に彫ってくれ。」
「かしこまりました。」
慣れた様子で店員に注文するルドルフの姿を、アルフレートは顔を赤く染めながら見つめていた。
「あの、そんな高価な物、頂けません。」
「僕も同じ物を創るから、大丈夫だ。」
「そ、そういう問題ではなくて・・」
「友情の証だ。」
「は、はぁ・・」
9月1日、二人はホグワーツ特急に乗り、ホグワーツ魔法魔術学校に入学した。
「フェリックス=アルフレート!」
アルフレートが緊張した面持ちで椅子に座ると、ミネルバ=マクゴナガルが彼の頭に組分け帽子を被せた。
すると、帽子はすぐさま、“レイブンクロー”と叫んだ。
「ハプスブルク=ルドルフ!」
ルドルフの頭に帽子が被る前に、帽子は“スリザリン”と叫んだ。
―スリザリン・・
―ハプスブルク家の方が・・
―そんな、嘘だろ・・
「ルドルフ様・・」
「さっきは驚いただろう?ハプスブルク家の者は皆、グリフィンドール出身なんだ・・僕以外は。」
そう言ったルドルフの横顔は、少し寂しそうに見えた。
「そんなに落ち込まないで下さいよ。僕なんて、今まで自分が魔法が使えるなんて知らなかったんですから。」
アルフレートはそう言うと、宝石のような美しい翠の瞳でルドルフを見つめた。
―わたしの地上の神は、あなたです、ルドルフ様。
(あぁ、お前は今も“昔”もわたしをまっすぐな瞳で見つめるのだな。わたしは、その瞳が愛おしくもあり、恐ろしくもある。)
「ルドルフ様?」
「すまない、少し考え事をしていた。」
「そろそろ降りる準備をしませんと。」
そう言ってトランクの中からローブを取り出したアルフレートの首には、あの日自分が贈った指輪が光っていた。
「まだ持っていたのか、その指輪。」
「はい・・あなた様から頂いた、大切な物なので。」
「アルフレート・・」
ルドルフがアルフレートを己の方へと抱き寄せ、彼の唇を塞いで舌で口内を犯すと、アルフレートもそれに応えるように舌でルドルフのそれと絡め合うかのような濃厚なキスを交わした。
骨盤同士をぶつけ合うように互いの身体を密着させ、二人だけの世界に浸っていたルドルフとアルフレートだったが、二人が居る個室のドアが何者かによって激しくノックされ、ルドルフは舌打ちしてアルフレートから離れた。
「おい、いつまでイチャついているんだ!さっさと降りるぞ!」
そう怒鳴りながら個室に入って来たのは、二人と“昔”から因縁があるヨハン=サルヴァトールだった。
「大公、いつも良い所を邪魔して・・」
「ルドルフ、さっさと降りろ!」
「あぁ、わかった。」
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氷上に咲く華たち 2

2025年01月08日 | YOI×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説「氷上に咲く華たち」


表紙素材は、ソラ様からお借りしました。

「ユーリ・オン・アイス」「天上の愛地上の恋」二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

勇利とアルフレートが両性具有です、苦手な方はご注意ください。

二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。

「本気なの?」
「俺が冗談で、こんな事を言うとでも思っているの?」
「もしかして、僕の所為?」
「違うよ、俺自身が考え、俺自身で決めた事だ。ユウリの所為じゃない。」
「でも・・」
「もうこの話は終わりだ、いいね?」
「う、うん・・」
勇利とヴィクトルは、互いに気まずい空気を纏ったまま、バルコニーから去った。
「じゃぁ俺、先にホテルの部屋に戻るから。」
「わかった。」
「ユウリ、浮気したら承知しないよ?」
「し、しないって!」
バンケット会場の前でヴィクトルと別れた勇利は、アルフレートが待っているレストランへと向かった。
『すいません、遅れました。』
『いいえ、今来た所ですので。』
アルフレートがそう言った時、店員が二人の元にやって来た。
『ご注文はお決まりですか?』
勇利はコーヒーを、アルフレートはハーブティーをそれぞれ注文した。
『あの、僕に話したい事って・・』
『ユウリさんは、ヴィクトルさんとはどのような関係なのですか?』
『えっ』
 アルフレートの直球過ぎる質問に、勇利は思わずコーヒーで噎せそうになった。
「ぼ、僕とヴィクトルは、コーチと生徒だけど・・恋人同士かなって・・」
『そ、そうなんですか?ごめんなさい・・』
『い、いえ・・』
アルフレートは少し困ったかのように、首の後ろを掻いた。
その左手薬指に、真新しい結婚指輪が光っている事に勇利は気づいた。
『あの、それは・・』
『これは、ルドルフ様・・あの方から贈られたものです。』
『え、それじゃぁ・・』
『来年の夏には結婚式を挙げるつもりです。』
『おめでとうございます。』
『ありがとうございます。実は、家族が増える予定なんです。』
アルフレートは、そっとまだ目立たない下腹を擦った。
『そ、そうなんですか?じゃぁ、スケートは・・』
『年齢が年齢なので、引退しようと思っています。ユウリさん、あなたとお話出来て良かった。』
アルフレートはそう言うと、勇利に微笑んだ。
『また、会いましょうね。』
『はい。』
勇利とレストランの前で別れたアルフレートは、ホテルの部屋へと戻った。
「お帰り、アルフレート。外は寒くなかったか?」
「はい。」
ルドルフに抱き締められ、アルフレートはそう言った後彼に微笑んだ。
「お前は何故、あのロシア人の恋人と仲良くなろうとしているんだ?」
「それは、彼が・・」
「今日は疲れた、休もう。」
「はい・・」
グランプリファイナルを締めくくるエキシビションで、世界中の注目を集めたのはヴィクトルと勇利ではなく、表情で優雅なワルツを披露したルドルフとアルフレートだった。
「流石ウィンナワルツの国、やるね。」
「やっぱりルドルフさん、カッコよかねぇ・・」
「ユウリ・・」
「ヴィクトル、そんな顔しないでよっ、僕はヴィクトル一筋だからっ!」
「俺もだよ、ユウリ~!」
「あ~あ、バカップルがまたやってるよ~」
エキシビションの後、アルフレートをホテルの部屋に残し、ルドルフはある場所へと車で向かった。
『来ないのかと思っていたよ。』
『彼女は?』
『あの小屋の中さ。』
『そうか。これで‟後始末“を頼む。』
『はいよ。』
ルドルフは、“彼女”が居る小屋を一瞥した後、車でホテルへと戻った。
「お帰りなさいませ、ルドルフ様。今までどちらへ行かれていたのですか?」
「お前は、知らなくていい。」
「はい・・」

アルフレートには、“あの事”を決して知られてはいけない。
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氷上に咲く華たち 1

2025年01月08日 | YOI×天上の愛地上の恋クロスオーバーパラレル二次創作小説「氷上に咲く華たち」


表紙素材は、ソラ様からお借りしました。

「ユーリ・オン・アイス」「天上の愛地上の恋」二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

勇利とアルフレートが両性具有です、苦手な方はご注意ください。

二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。

ロシア・ソチで行われたグランプリファイナルシリーズは、ロシアのヴィクトル=ニキフォロフの優勝によって幕を閉じた。

「ヴィクトル、金メダルおめでとう。」
「ありがとうユウリ。ユウリもあと少しで俺に勝てたのに、惜しかったね。」
ヴィクトルの隣を歩きながら、彼の恋人である勇利は、この大会で銀メダルを獲得した。
「まぁ、ユウリが金メダルを獲っても獲らなくても、もう俺達は夫婦だから関係ないね?」
「もう、ヴィクトル・・キスはホテルに戻ってからにしてって言ったでしょう?」
「相変わらずシャイだな、ユウリは。」
ヴィクトルがそう言いながら笑って勇利に抱きついた時、向こうから金髪碧眼の青年と黒髪翠眼の青年がやって来た。
「ハイ、ルドルフ。銅メダルおめでとう。」
「貴方に祝ってもらえるほどのものではない。」
金髪碧眼の青年―オーストリアの“皇太子”ことルドルフ=フランツ=カール=ヨーゼフは、慇懃無礼な口調でそう言うとロシアの“皇帝”を睨みつけた。
「そんなに睨む事ないだろう?」
「申し訳ありません、ニキフォロフ様。」
ルドルフの隣に立っていた黒髪翠眼の青年―ルドルフの恋人であるアルフレート=フェリックスが、そう言ってヴィクトルに頭を下げた。
「アルフレート、行くぞ。」
「ではわたし達はこれで失礼いたします。」
去り際アルフレートは、勇利に軽く頭を下げると、慌ててルドルフの元へと駆けていった。
「彼、ちょっと苦手だな・・恋人の方は良い子なのに。」
「ヴィクトル、またそんな事言って。でもルドルフさんもカッコよかねぇ。」
「ユウリ、もしかして年下がタイプなの?まさか浮気を・・」
「する訳ないじゃん、馬鹿!」
そんな会話をしながら、ヴィクトルと勇利は会場を後にした。
大会の後、ホテルの宴会場で開かれたバンケットで、勇利はピチットとクリス、そしてユーリと共に楽しく酒を飲んでいた。
「ユリオももう20歳か・・時の流れって案外早いもんだねぇ~」
「何ジジィみたいなこと言ってんだよ、カツ丼!」
「え~、だって僕達の競技人生は短いんだよ?僕だってもうすぐ30になるし、体力的に選手として競技を続けていくにはそろそろ限界かなぁ・・」
「30手前なのに、ユウリはまだティーンみたいだよね。その美貌の秘訣は、やっぱりヴィクトルとのセックス?」
「ク、クリス、いきなり変な事言うのやめてよ!」
クリスの言葉を聞いた勇利は思わず飲んでいたシャンパンを噴き出してしまった。
「え~、だってユウリ、ヴィクトルと結婚してから演技の幅が変わったよね?なんかこう・・人妻感溢れるっていうか・・いやらしくなったよね。」
「ピチット君まで~!」
「カツキさん、先程はルドルフ様が失礼な態度を取ってしまって、申し訳ありませんでした。」
勇利がクリス達とそんな話をしていると、シャンパングラス片手にアルフレートが彼らの方へとやって来た。
「アルフレートさん、別にいいですよ、気にしてないんで。」
「そうですか。カツキさん、この後少し話したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「はい、構いませんよ。すいません、ちょっと失礼します。」
勇利は会場にヴィクトルの姿が無い事に気づき、アルフレートにそう言うとそのまま人気のないバルコニーへと向かった。
「ヴィクトル、こんな寒い所で何してるの?」
「少し考え事をしていたんだよ・・俺達の、未来について。」
「え?」
「ユウリ、もし俺が現役を引退するって言ったら、君はどうする?」
「ヴィクトル、何言って・・」

ヴィクトルの言葉を聞いた勇利が驚いて彼の方を見ると、ヴィクトルのライトブルーの瞳が微かに揺れていることに気づいた。
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