BELOVED

好きな漫画やBL小説の二次小説を書いています。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。

炎の巫女 氷の皇子 第1話

2025年01月31日 | 天愛 異世界ハーレクイン転生パラレル二次創作小説「炎の巫女 氷の皇子」

表紙素材は湯弐様(ID:3989101)からお借り致しました。

「天上の愛地上の恋」二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

両性具有・男性妊娠設定ありです、苦手な方はご注意ください。

二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。


その昔、この帝国には闇の悪魔を封じ込め、国を護る聖女が居た。
聖女は浄化の力を持つ炎を操り、それ故に“炎の巫女”と呼ばれた。
聖女はやがて、帝国を統べる皇帝と恋に落ち、結ばれるが、戦いの最中命を落としてしまう。
死の間際、聖女は皇帝に誓った。
幾度も魂が巡り、姿を変えても生涯、皇帝(あなた)を愛し、守り続けると―

「アルフレート、これを。」

12歳となったアルフレート=フェリックスは、父親代わりに自分を育ててくれた孤児院の院長・
ユリウスによって、額に“守護の印”を授けられた。

「この“守護の印”は、特別な者にしか授けられないものだ。アルフレート、お前はこれから多くの困難に立ち向かう事になるだろう。だが、お前は生まれ持った力で人々を助けなさい。」
「はい、ユリウス様。」
「正直な事を言うと、お前をこの村に置いておきたいが、老人の我儘でお前を苦しめたくない。帝都で沢山学んでおいで。」
「はい。」
生まれ故郷である貧しい山村から、アルフレートは一路帝都へと向かった。
(帝都には、一体何があるんだろう?)
帝都へと向かう汽車の中で、アルフレートはそう思いながら、ユリウスから渡された手紙に目を通した。
『ユリウスへ、わたくしの愛しい天使をよろしくお願いします。』
ユリウスによれば、アルフレートはこの手紙とロザリオと共に、孤児院の前に捨てられていたのだという。
(この国の何処かに、僕を産んでくれたお母さんが居るんだ!)
期待と不安に胸を膨らませたアルフレートを乗せた汽車は、間もなく帝都に着こうとしていた。
同じ頃、帝都・ウィーンの中心部にある王宮では、一人の少年がバルコニーから見える外の街並みを眺めていた。
「ルドルフ様、こんなところにいらっしゃったのですね。さぁ、もうじきラテン語の先生がいらっしゃいますから・・」
「わかった。」
ルドルフはバルコニーを後にし、私室があるスイス宮へと向かった。
彼の名は、ルドルフ=フランツ=カール=ヨーゼフ=フォン=ロートリンゲン、ロートリンゲン=ハプスブルク帝国皇太子として生を享け、何不自由ない生活を送っていた。
だが、ただひとつ彼に足りないものといえば、両親の愛情だった。
父親である皇帝は政務に忙しく、母親である皇妃は窮屈な宮廷を嫌い、放浪の旅を繰り返していた。
彼の理解者は、愛犬のアレクサンダーと、姉のジゼルだけで、同年代の同性の友人は彼の周りには居らず、彼はいつも孤独だった。
「アレクサンダー、お前が人間だったらいいのに。そうすれば、寂しくないのに。」
愛犬の頭を撫でながら、ルドルフは苦しそうに咳込んだ。
「ルドルフ、どうしたの?」
「何でもありません、姉上・・」
そう言って姉に対して虚勢を張ったが、彼女には通用しなかった。
「あなた、熱があるじゃない!誰か、誰か来て!」
寝台に寝かせられたルドルフは、苦しそうに咳込みながら寝返りを打っていた。
―これで一体、何度目なのかしら?
―本当に、ルドルフ様は・・
微かに開いた、扉越しに聞こえる、女官達の心無い噂話。
頑健で、風邪ひとつひいた事が無い皇帝の一人息子でありながら、病弱でいつも寝込んでばかりいる自分の出自を、噂する者が多い事を、ルドルフは物心つく頃から知っていた。
誰か一人でもいい、熱にうなされて苦しむ自分の手を、握ってくれる者が居てくれたらいいのに―そんなルドルフの心に呼応するかのように、部屋は徐々に氷に覆われていった。
「ルドルフ様、どうかなさって・・」
女官達はルドルフの様子を見に彼の私室へと向かったが、その扉が氷で覆われている事に気づき、悲鳴を上げた。
「一体何事だ!?」
「陛下、ルドルフ様のお部屋が・・」
ロートリンゲン=ハプスブルク帝国皇帝・フランツ=カール=ヨーゼフは、氷で覆われているルドルフの部屋の前で、一人息子に向かって呼び掛けた。
「ルドルフ、部屋の扉を開けなさい。」
「はい、父上。」
扉を開けて部屋の中から出て来たルドルフの顔は、蒼褪めていた。
「ルドルフ・・」
「父上、僕は・・」
「恐れる事は無い。その力は、ハプスブルク家に神から授けられた特別なものだ。」
「はい・・」
「何ですって、ルドルフに“力”が?」
フランツの母・ゾフィー大公妃は、ルドルフの“力”が現れた事を知り、驚愕の表情を浮かべた。
「そう・・やはり、ルドルフが“皇帝”の生まれ変わりなのね。」
「母上・・」
「数日前、占術師から言われたわ。“皇帝の伴侶となる聖女が近々現れる”と。」
「まさか・・」
「あの子の運命は、神様の導きによって決まるものなのよ。」

ゾフィーは、そう言った後、降り始めた雪を窓から眺めた。

「寒いなぁ・・」

帝都に着いたアルフレートは、寒さで悴んだ手を暖める為に、掌に小さな炎を灯した。

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