7年間、60億kmってなんだかわかりますか?
これは4年前の6月に地球に帰還した「はやぶさ」が飛んだ時間と距離だ。
それを可能にしたのが、NASAでも開発できなかった國中均氏(53歳)が開発したマイクロ波型イオンエンジン。
マイクロ波は地上では本当に弱いが、宇宙空間では加速がついて1万km/hにもなるという。
それを生んだ発想の源が挑戦。
たとえ10%しか可能性がないとしても、いや10%も可能性があるのだったらやろう!!!
そうしないと進歩はない。
想像力でやりつくせることは全部やりつくす。「こんなこともあろうかと思って」作っておく。
すごいぜ!この野郎。
今は「はやぶさ2」を開発中。
原動力は「自分を馬鹿にした人を見返してやりたい」という気持ち。
好きなものは飛ぶもの。
幼稚園の頃から「飛ぶもの」にあこがれていた。
東大で栗木恭一教授に出会う。 栗木教授はマイクロ波エンジンを開発中だった。
國中氏は予算がない中、秋葉原の中古部品と電子レンジを分解してマイクロ波エンジンのモデルを作った。東大の周りの研究者からは「穀潰し」とまで言われた。
成功すれば、圧倒的に遠くまで飛べるこのエンジンを「はやぶさ」に使ってみたい。と言われ、「作ってみせます」と言った。
しかし、中和器を長持ちさせるのが最大の難関だった。
2年ほど失敗の連続で、しだいに、恐怖で眠れなくなった。出口のない、答えのない問題かも?自信をなくし、やめたいと教授に言うと、
「歩くのはかまわない、でも、止まってはいけない」と栗木教授に言われた。
それから、また、磁石の組み合わせ実験に取り組んだ。
1年後。もう、これが失敗したらやめようと思い、ある組み合わせを試したところ、中和器の耐久時間が1万時間になった。(まるで、ドリカムの「何度でも」だ)
粘るか、粘れるかが決め手。
去年12月。「はやぶさ2」の実験は佳境に。
他のサブシステムは出来ているのに、メインのイオンエンジンの完成が遅れている。
「死ぬ気でやってもらわないと困るよ!!!」と檄をとばす國中。
檄をとばされたのは、細田さん。若手だ。
これから先一つのミスも許されない。考えられる限りの準備をして本番に臨む。
どんなに困難なミッションでも問われるのは結果のみ。
どんなに恐くても、若手に任せる覚悟が國中氏にはできていた。
メーカーからの特注品を8時間かけて組み立て完了。
そして、ついに、新型イオンエンジン噴射成功。
でも、これで終わりではない。冬に予定されている打ち上げの準備が始まったばかり。
國中氏は「グッドラック」と言って、出て行った。
國中氏は言っている。「生き馬の目を抜くというが、すばやくやりきることと周到に準備してやりきることが重要」