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卓越性の探究者、波田野が皆さんに販売戦略・営業手法についてや、コミュニケーションについて思う事をお届けします。

マーケティング研究 他社事例 346 「新しい車室空間」 ~オフィスにも家族団らんにも~

2019-05-08 08:51:11 | ビジネス
マーケティング研究 他社事例 346 「新しい車室空間」 ~オフィスにも家族団らんにも~


旭化成が自動車シート材大手のアメリカ、セージ・オートモーティブ・インテリアズを有利子負債込みで1200億円で買収すると発表がありました。

このM&Aにはどのような狙いがあるのでしょうか?

セージはアメリカやイタリア、ブラジル、中国などに生産拠点を持ち、BMWやジャガー・ランドローバーなど高級車メーカーとの取引実績も豊富です。

2017年12月期の売上高は約4億7500万ドル(約520億円)でした。

一昨年5月に自社グループで提供できる素材や部品を搭載したコンセプトカー「AKXY(アクシー)」を公開し、自動車向け事業の拡大に意欲を見せていた旭化成でしたが、今回の買収でその成長のシナリオが鮮明になった形です。

答えは、車の内装材分野の強化です。

素材業界では帝人が自動車向け樹脂部品を手掛けるアメリカ社を買収しました。

東レもオランダの炭素繊維メーカーを今年後半にも買収完了する予定など、自動車向け事業の拡大を狙ったM&A(合併・買収)が活発となっています。

ただ、いずれも狙うのは低燃費ニーズの高まりを受けた軽量化素材の供給拡大です。

鉄よりも軽い樹脂の強みを活かして、販路を広げる狙いがあります。

旭化成の今回の買収もそうした軽量化の流れに乗っているようにも見えるが、「内装材」に焦点を当てたところに競合との違いがあるのです。

昨年の7月19日の記者会見で小堀秀毅社長はその理由をこう語った。

「車の車内はこれからオフィスにもなるし、家族団らんの場にもなる。」

事実、自動運転技術の進化でドライバーが運転に割く時間が減れば、車内で仕事などの別な作業をするためのスペースが必要になります。

不特定多数の人が利用するカーシェアリング用の車では、汚れにくく掃除しやすい内装デザインが好まれています。

そんな新しい車室空間を最適な素材を含めて提供出来れば、大きなビジネスになり得ると考えられます。

だからこそ、デザイン力の高さに定評があり、しかも世界の自動車大手への提案力のあるセージの買収を決めたのです。

旭化成にとって自動車用内装材は決して「飛び地」の事業ではありません。

グループの旭化成ホームズが「へーベルハウス」ブランドで住宅事業を手掛けており、インテリアデザインのノウハウもあります。

車室空間が変わる中で、この知見を活かさない手はありません。

HV(ハイブリッド車)であれ、EV(電気自動車)であれ、車である限り、内装材の商機は広がります。

旭化成は自動車向け事業の売上高を2015年度の1000億円から2025年度に3000億円に引き上げることを狙うが、目標達成には買収するセージのみならず、「へーベルハウス」の活かし方も鍵になるかもしれません。


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