この国では「真面目に努力する人」ほど損をする…日本の「天才」が次々と海外へ流出してしまう根本原因
1/4(水) 12:17配信2023
0コメント0件
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock
なぜ日本の経済はよくならないのか。モルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)元日本代表の藤巻健史さんは「日本は、結果の平等を重視する社会主義国家だ。稼いでも高い税金が取られるため真面目に働く人ほど損をする。これでは経済がよくなるはずがない」という――。
【この記事の画像を見る】 ※本稿は、藤巻健史『超インフレ時代の「お金の守り方」』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。
■資本主義のアメリカ、社会主義の日本
なぜ、かつては二大経済大国と称された日米に、これほどまでの差がついてしまったのでしょうか。
その理由を端的に示せば、「資本主義国家のアメリカに対して、日本が社会主義国家だから」ということになるでしょう。
社会主義国家が資本主義国家に敗北したのは、20世紀の歴史が示す厳然たる事実です。ソ連が崩壊し、中国は建前はともかく、とっくの昔に資本主義国家になっています。
しかし、日本はいまだに社会主義国家であり続けている。だから敗北するのは当然だということです。
もちろん、日本は建前としては資本主義国家です。とはいえ、その現実は社会主義国家以上に社会主義です。
「日本は社会主義国家」――これは、モルガン銀行時代に海外から日本に転勤でやってきた部下が帰国する際、口をそろえて指摘することでした。日本は大きな政府で、政府による規制が強く、「結果の平等」を重視する。それはまさに社会主義そのものではないか、と。
日本では稼げば稼ぐほど高額な税金を取られます。一方、低所得者への生活保護は充実している。つまり、頑張って稼いだ人がなかなかお金持ちになれない一方、頑張らなくてもある程度の生活はできてしまう、ということです。これはまさに「結果の平等」です。
もちろん、様々な理由で働きたくても働けない人も多く、そういった人たちの生活は保護されなくてはなりません。しかし、働いても働かなくてもそれほど生活に大きな差が出ない、ということになると、誰が真剣に働こうとするでしょうか。これはまさに、社会主義国家が踏んできた轍に他なりません。
■アメリカには世界から「天才」たちが集まるワケ
私はモルガン銀行時代、ベルリンの壁崩壊直後の東ベルリンに入り、社会主義とはどういったものかを体験したことがあります。
客のほとんどいないがらがらのレストランで、客より威張りくさったウエイトレスがやる気のなさそうに働いている。しかも、前菜、主食、デザートの3品コースが出てくるまで、なんと4時間もかかったのです。
でも、それは当然のことです。いくら愛想を良くしても料理を早く出しても、もらう給料は同じなのですから。
アメリカにももちろん累進課税はありますが、日本よりも高所得者の税率は低く抑えられています。相続税もないに等しい。だからこそ一獲千金を目指して世界中から人が集まり、必死に働くのです。そして、それが経済の活力を生んでいるのです。
2022年10月2日の日本経済新聞によると、資産10億ドル(約1400億円)以上の富豪(ビリオネア)が一番多いのはアメリカで719人、2位が中国で440人、3位がインドで161人でした。
それに対して日本は27人で、台湾の45人、韓国の28人を下回るのだそうです。格差などないはずの共産主義国家である中国が世界第2位というのもおかしな話ですが、それより圧倒的に富豪が少ないのが日本なのです。
しかも、他国は相続税廃止・軽減の方向に進んでいるのに対し、日本はむしろ重税化の方向に向かっています。優秀な人材ほど、ますます日本を去っていくことでしょう。
■トップ5%が仕組みを作り、残り95%を動かす
日本のリーダーあるいは資産家と呼ばれる人と話していると、相続税をどう節税しようかという話ばかりしていて愕然とします。貴重な時間やエネルギーをそんなことに費やしてしまうから、この国は発展しないのです。
それに対してアメリカでは、優秀な人は莫大(ばくだい)な資産を手にすることができます。だからこそ、世界中から天才たちが集まる。
GAFAMをはじめとしたアメリカの優良企業のトップ層には天才の移民が数多くいます。グーグルCEOのサンダー・ピチャイ、マイクロソフトCEOのサティア・ナデラはインド出身、テスラのイーロン・マスクは南アフリカ出身の移民です。
そうした天才たちが成功すれば儲かり、税金もそこそこで済むアメリカに集まり、切磋琢磨(せっさたくま)することでさらに業績を上げていく。極論すれば、アメリカという国はそうしたトップ5%が動かしている国なのです。
そして、彼らが作ったシステムで残り95%の人が働くことで、社会が回っていくのです。
■「残り95%のアメリカ人」よりも日本人は優秀だが…
その95%のアメリカ人と比べれば、ほとんどの日本人のほうが圧倒的に優れています。そのこともまた、今回アメリカに行って痛切に感じたことです。
私が借りたレンタカー店の受付の女性は、ジュースを飲みポテトチップスを食べながらダラダラと書類を作っていました。スーパーマーケットの有人レジはやたらと遅い。飛行機の荷物係は楽しそうにおしゃべりしながら客の荷物を乱暴に投げ付ける。ホテルのバイキングは10時までだというのに、9時45分の時点でもう何もなくなり、さっさと片付けを始めてしまう。
こんなこともありました。私が借りていたアパートを返却する際、金曜日の午前10時にチェックに来るというので待っていたのに、いつまでたっても現れない。午後3時すぎに電話を入れたのですが、オフィスの営業時間が終わっているらしく、つながらない。土日は当然休み。仕方なく月曜日に改めて電話したところ、「ごめんごめん。今日行くから」と、ほとんど悪びれずに言われたのです。
以下はリンクで