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棋王戦藤井八冠が防衛に王手 敗れた伊藤七段が言及しなかった勝負の分かれ目

2024年03月07日 22時03分33秒 | 文化と芸能

棋王戦藤井八冠が防衛に王手 敗れた伊藤七段が言及しなかった勝負の分かれ目(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース 


棋王戦藤井八冠が防衛に王手 敗れた伊藤七段が言及しなかった勝負の分かれ目
3/6(水) 11:10配信




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デイリー新潮
棋王戦第3局(日本将棋連盟提供)


 将棋の棋王戦五番勝負(主催・共同通信社)の第3局が、3月3日、新潟県新潟市の「新潟グランドホテル」で行われ、藤井聡太八冠(21)が挑戦者の伊藤匠七段(21)に105手で勝利、対戦成績を2勝1分けとした。これで藤井は、棋王連覇と八冠防衛、自己記録を更新するタイトル戦21連勝に王手をかけた。【粟野仁雄/ジャーナリスト】


【写真】藤井八冠が昼食に選んだ「慶楽味わいランチ」。その中身は四川料理に着想を得たという「日本発祥の中華料理」


藤井八冠の「信じられないところ」
 先手は藤井。両者「角換わり腰掛け銀」で午前中に45手も進む早いペースだったが、突然、伊藤の手が止まり、1時間の昼食休憩を合わせて142分の大長考となる。そして伊藤は藤井陣の「3八」に飛車を打ち込んだ。終盤は藤井も慎重に持ち時間(4時間)を使い、その差が縮まったが、先に伊藤が「1分将棋」に追い込まれた。


 ABEMAで解説を担当したのは、この日が30歳の誕生日だった八代弥(わたる)七段(30)。師匠は最年長棋士として奮戦するも先ごろ引退した青野照市九段(71)だ。タイトル歴こそないが、A級に11期も在籍するなどトップ棋士として君臨してきた。


 八代七段はAI(人工知能)が藤井の勝率を7割近くと示した中盤、盛んに「それほど差が開いているとは私には見えない」と話した。さらに「将棋というのは必ずしも最善手を続けていかなくてはならないというものではありません。大きなミスをしないことが一番大事なのですが、プロでも誰でも大きなミスをしますよ。藤井八冠は絶対にそれがないことが信じられないんです」と話した。


優勢、劣勢の見極めが重要
 同じく解説を担当した阿久津主税(ちから)八段(41)も「私たちはAIも参考にして解説しているから、ある程度わかることがある」と話した。確かに解説者は岡目八目であるうえ、最近はAIによる勝率の予測や候補手まで参考にしながら解説できる。


 しかし、当の対局者は違う。自分が優勢なのか劣勢なのか、第三者の客観的な情報が全くない中で戦っている。サッカーや野球なら途中の得点に応じて戦略を変えられるが、将棋ではそれができない。


 将棋は、守るべき時に攻めたら負け、逆に攻めるべき時に守っても負ける頭脳ゲームだ。守るか攻めるかの決断のため、自分が優勢か劣勢かの見極めが重要になる。相手の仕草や表情は参考になるかもしれないが、藤井も伊藤もポーカーフェイス。感情を表すのは損なので、棋士はピンチにもチャンスにも概して「淡々と進めているふり」をしている。

勝負の分かれ目となった一手
 大雑把に言えば、今対局の伊藤は「攻めるべき時に守ってしまった」と言えるだろう。


 伊藤が86手目「6三」に銀を引いて守った場面だ。ほとんどの将棋愛好家が「1九飛打」と考えた局面で、伊藤が違う手を指したので驚いた。飛車打ちなら「1一」に成り込まれていた香車と藤井陣の角の「両取り」になる。阿久津九段も驚いたと思うが、「我慢しましたね」と話すにとどめた。


 しかし、加藤一二三九段(84)の指摘は端的だ。日刊スポーツ3月4日付「ひふみんEYE」で「5筋の守備銀を6筋に引いた手でチャンスを逃したと思います。/藤井棋王から香車を6筋に打たれる手が見えていましたが、あそこは飛車を1筋に打ち込んで角と成香の両取りをかけ、攻め合いに持ち込めば難しかったでしょう。勝負の分かれ目となりました」と指摘した。伊藤が飛車を打ち込めば勝っていたというわけではない。互角に戻したかまだまだ戦えたという範疇だろうが、やはりこの一局では大きな一手だった。


 伊藤は2手後の88手目に飛車を打ち込んだがすでに遅く、89手目の藤井の「3一角」の王手からは防戦一方だった。


 とはいえ、伊藤が銀を引いた瞬間、筆者は驚いたものの「これがプロらしい手なんだ。やはり違うなあ」と思ってしまった。それが良い手ではなく、素人考え通りに飛車を打ち込むべきだったということも解説やAIの評価値などで理解しているだけである。対局後の伊藤は「一局を通して苦しい将棋だった」と振り返り、この場面には触れなかった。


 加藤九段は伊藤の次の第4局について「『駒が前に出る将棋』を指してもらいたいですね」(同前)とエールを送った。


怖がり過ぎた? 香車の打ち込み
 藤井は83手目に「2七飛」とした。これは「1七」にいる伊藤の「と金」の横に飛車を動かし、大駒の飛車を捨てる手。しかし、「と金」が飛車を取ると、1筋がスポーンと抜けてしまう。そうなると、藤井の香車が「1一」の香車を取り込んで成り込める上、強力な武器となる香車が藤井の手に入る。伊藤の陣形は非常に香車に弱い形だった。もちろん、それは伊藤も織り込み済みだったはずだが、香車の打ち込みに過敏になりすぎたか、前述のように手順が狂ってしまったようだ。


 そこからの藤井の攻撃も素晴らしかった。自陣は全く安全になり、97手目に「5四香車」を打ち、これを銀で取らせる。103手目の「5三角成」で伊藤は玉の頭上に馬が居座られ万事休す。しかし、投了するかと思われるようなこの局面でも、104手目に「6二桂馬」と自陣に打った。


 この粘りの一手を阿久津八段は「根性の一手」と称賛した。しかし、すでに及ばない。藤井が次に「5一銀」とすると、午後6時53分に伊藤は投了した。


「どうやっても藤井さんの勝ちですが、私ならもっとオーソドックスな手を指していくでしょうけど、『5一銀』も鋭い」と阿久津八段は感嘆した。


 序盤について藤井は「前例が多くない形」、伊藤は「認識のない展開」としていた。阿久津八段も「藤井さんの研究手中で途中からはやってみたかった手を試していたようです。伊藤七段も途中まではよくついていったが、飛車切から藤井八冠が加速し、あっという間の見事な寄せでした」と評した。

名人戦の挑戦者は豊島九段
 藤井はタイトル八冠のうち名人、棋聖、王将、棋王の四冠を渡辺明九段(39)から奪った。棋王位は最後に渡辺から奪ったタイトルだ。しかし、昨年の棋王戦で、藤井は2勝した後、今回と同じ新潟市の対局場で第3局を戦い、1分将棋に追い込まれた末、渡辺に敗れた。あまり「ゲンの良い場所」ではなかったはずだが、今期は間違いやすい1分将棋を避けてしっかりと時間も残して伊藤に快勝した。


 伊藤は対藤井の公式戦でまだ白星がなく、これで9敗1分けである。第4局は3月17日に栃木県日光市の「日光きぬ川スパホテル三日月」で行われる。小学生の時に全国大会で対局した藤井に勝ち、藤井を大泣きさせたことで知られる伊藤の初勝利に期待したい。


 一方、4月10日から始まる名人戦七番勝負(主催・毎日新聞社、朝日新聞社)の挑戦者は、2月27日に行なわれた名人戦順位戦リーグ戦最終日のA級リーグ戦の結果、元三冠で叡王、竜王を藤井に奪われた豊島将之九段(33)に決まった。


粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に「サハリンに残されて」(三一書房)、「警察の犯罪――鹿児島県警・志布志事件」(ワック)、「検察に、殺される」(ベスト新書)、「ルポ 原発難民」(潮出版社)、「アスベスト禍」(集英社新書)など。


デイリー新潮編集部






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