20代女性に急増する梅毒・クラミジア 放置しないで!勇気を持ち未来を守るアクションを 知る/決める 私のカラダ④ (msn.com)
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性と生殖について、納得のいく人生の選択をしていくために、必要な健康知識を学ぶ連載。今回は近年、若い女性にも急増している性感染症、中でも、将来の妊娠と赤ちゃんの健康に直結する「梅毒」と「クラミジア感染症」を取り上げます。
赤坂山王メディカルセンターレディース外来担当医で、山王病院産科部長の大柴葉子医師に、どのような病気なのか、予防法や対処法を聞きました。
母子感染が増加傾向
――まずは梅毒から。国立感染症研究所によると、令和5年の梅毒患者報告数は1万4906人(暫定)に上り、平成11年以降過去最多となりました
「長い間、年間1000人を下回っていたのが、平成25年以降、増加に転じ、右肩上がりの傾向が続いています。令和4年に1万3000人を超え、50年ぶりの高水準となりました。産婦人科医としては、母子感染が増えていることにも、強い危機感を抱いています」
――新型コロナウイルス禍を経て、マスクの着用や手洗いなど呼吸器感染症への予防意識は高まったようにも思えます。一方で、性感染症が増えている現状をみると、同じ感染症でも予防意識に格差がある気がします
「性感染症は、人と人との性行動に乗じて広がる感染症です。性的接触による感染を物理的に防ぐコンドームの着用を習慣化してもらいたいですが、現在の感染拡大の状況をみると、啓発不足や性教育不足といった課題も感じられます」
――人の交流の仕方も、以前とは変わってきました
「現代において、人は人とSNSで結ばれるようになりました。また、交通網の発達で世界中を短時間で移動できるようになっています。思いもかけない出会いやつながりが生まれ、性感染症にかかる機会自体が増えているのです。であれば、予防はもちろん、病気を正しく知り、感染が疑われる場合は、すぐに対処できるようにしておきたいですね」
――梅毒はどのような病気なのですか
「スピロヘータという細菌(梅毒トレポネーマ)による慢性の感染症です。細菌に感染した口や性器の病変部への濃厚な粘膜接触によって、うつっていきます」
初期症状、痛みがないので要注意
――体にどんな変化が起こるのでしょう
――新型コロナウイルス禍を経て、マスクの着用や手洗いなど呼吸器感染症への予防意識は高まったようにも思えます。一方で、性感染症が増えている現状をみると、同じ感染症でも予防意識に格差がある気がします
「性感染症は、人と人との性行動に乗じて広がる感染症です。性的接触による感染を物理的に防ぐコンドームの着用を習慣化してもらいたいですが、現在の感染拡大の状況をみると、啓発不足や性教育不足といった課題も感じられます」
――人の交流の仕方も、以前とは変わってきました
「現代において、人は人とSNSで結ばれるようになりました。また、交通網の発達で世界中を短時間で移動できるようになっています。思いもかけない出会いやつながりが生まれ、性感染症にかかる機会自体が増えているのです。であれば、予防はもちろん、病気を正しく知り、感染が疑われる場合は、すぐに対処できるようにしておきたいですね」
――梅毒はどのような病気なのですか
「スピロヘータという細菌(梅毒トレポネーマ)による慢性の感染症です。細菌に感染した口や性器の病変部への濃厚な粘膜接触によって、うつっていきます」
初期症状、痛みがないので要注意
――体にどんな変化が起こるのでしょう
「初期は感染患部の潰瘍などの皮膚病変や局所リンパ節の腫脹です。痛みがないのが特徴です。何だろう? と思ってやり過ごしてしまうことがあります。いったん症状は引きますが、無治療だと数カ月後に細菌が全身に散らばり、感染箇所とは別の体幹の発疹(バラ疹)や、手足の潰瘍などが出現します」
――放置する間に、細菌が全身をむしばむのですね
「脱毛や、眼や耳の症状、認知機能低下など体への影響は多岐に及ぶこともあります。一方で、無症候性といって症状がない場合(潜伏梅毒)もありえます。令和4年のデータでは、全罹患数のおよそ22%が無症候性でした」
――症状がないのは非常に怖いですね。気づかないまま、深刻な病状へと進むこともありますか
「無症状で、さらに数年すると、全身に回り、栄養障害、重い神経障害、ゴム腫などの皮膚病変が現れます」
――自覚しにくいところが、難点ですね
「俗に3日、3カ月、3年といわれ、さまざまな症状が現れたり消えたりするので、なかなか診断されにくいことがあります。皮膚科、泌尿器科、性病科ではなく、耳鼻科、眼科、精神科などにおいて、初めて診断されるような場合があります」
見過ごされやすいから、広がる
「症状が出たり、消えたりする。痛みがない。色々な症状が出るので、梅毒の診断がつかずに、見過ごされやすい疾患です。特に初感染後の1年以内に不特定多数の人に伝播されることになります。HIV(エイズウイルス)との重複感染も報告されています」
――母子感染についても教えてください
「罹患した妊婦から胎盤を通じて胎児が感染し、流産、死産、また出産に至っても、赤ちゃんに先天梅毒を起こす可能性があります」
――妊娠中の梅毒に気づく対策はありますか
「梅毒検査は妊婦健診においては、初期のスクリーニング検査項目となっています。ただ、妊娠初期に検査で陰性だったとしても、注意が必要です。その後に疑わしい症状が出たり、感染につながるリスクの高い行動をしたりした場合には、必要に応じて梅毒検査を行い、胎児の先天感染を防ぐことが大事です」
――妊娠中に妊婦、胎児双方に治療ができるのですか?
「活動性の梅毒感染が判明した妊婦さんには直ちにペニシリンという抗生物質を投与します。内服薬のほか、最近日本でも注射薬が保険適用になりました。妊娠のどの時期でも必要十分投与し、血液検査で梅毒の活動性が低下したことを確認します。感染が判明した妊婦数と先天梅毒の報告数には乖離がありますので、適切な治療により先天梅毒は防ぐことができると考えられます」
陽性と分かるのは感染から数週間後
――診断はどのように行うのですか
「梅毒の診断は血液検査の組み合わせで行われます。トレポネーマそのものを検出する検査と病気の活動性を判断する検査です。注意してほしいのは、陽性となるのに感染から数週間かかることです。感染初期は見過ごされやすいので、陰性となっても感染が疑わしい場合には数週あけて再検査をするようにしてください」
――早期発見と早期治療が大切ですね
「なるべく早く診断、治療をすることにより、他者への感染を防ぎ、病気の進展も避けることができます。放置した場合には、自分が他人に感染を広げることになり、妊娠した母体においては胎児感染をおこし、胎児に不可逆的なダメージが起こります。罹患した本人には、心臓や脳など命にもかかわる深刻な病状に進展するリスクがあります」
「心配があっても、なかなか相談したり受診したりしにくい性感染症ですが、梅毒とクラミジア感染症は、特に感染初期に、必ずしも痛みなどのはっきりした困る症状を伴わない場合が多く、ためらっている間に病気が進行し、他者への感染を広げてしまいやすいことを頭に入れて、リスクを避ける行動をとってほしいです」
不妊症にもつながるクラミジア感染症
――続いて、クラミジア感染症について教えてください
「クラミジア感染症は、クラミジア・トラコマティスという微生物による感染症です。感染を放置してしまうと、女性の場合は子宮頸部から子宮内膜、卵管、付属器へと上行性に炎症が広がり、腹腔内まで病気が進展します」
――生殖器全体に進行すると、妊娠への影響もありそうです
「大いにあります。クラミジア感染症は、子宮外妊娠、流産、不妊症の原因となることを知っておいてほしいです。または骨盤腹膜炎、肝周囲炎など急性腹症(急激な腹痛で医療介入の必要が状態)になることがあります」
――どのようなタイミングで検査ができますか
「現在は妊娠初期の検査の一つとして、クラミジア感染の有無を調べています。妊婦の場合では数%の人がクラミジアに感染していると考えられています」
――赤ちゃんへの影響は
「クラミジアに感染している妊婦が未治療または不十分な治療のまま出産すると、生まれてくる赤ちゃんに産道感染を起こすことがあります。結膜炎、咽頭炎、肺炎などです。新生児のクラミジア結膜炎は、生後1週間から2週間で発症します。新生児ならではの脆弱性により、産道のクラミジア感染では 結膜炎以外にも中耳炎、肺炎を併発して重篤な事態を引き起こすことがあります」
――治療法はありますか
「治療は本人だけでなくパートナーも一緒に抗生物質を服用します。その際、パートナーが検査を受けて陽性である必要はありません。治療中は性行動を慎むか、コンドームを使用し、きっちりと決められた期間、薬を服用したのち、検査で治っていることを確認することが望まれます」
治療は可能、ためらわずに検査を
――梅毒、クラミジア感染症のリスクと注意点について、学んできました
「この2つに限らず、性感染症を予防し、広げないために大事なことは、ためらわずに必要なときに、医療機関や保健所で検査を受けることです。治療は可能ですが、常に再感染のリスクもあります。ハイリスクな行動を控える判断をし、行動パターンを変える理性と勇気を持ちましょう」
「妊婦さんのパートナーにおいては、うかつな感染により妊婦さんに感染させるだけでなく、おなかの赤ちゃんにまで因果が及ぶことを認識しましょう」
――検査を受ける目安についてアドバイスをください
「検査が勧められる場合は以下のような場合です。特殊な人が受ける検査だというのは思い込みです。誰にとっても、身近な検査だと理解し、認識を新たにしてくださいね」
• 性感染症が心配な人
• 新しくパートナーが変わった人
• 結婚する人
• 子供を作ろうと考えている人
「また従来、検査を勧められていた以下の人たちも、引き続き定期的に検査をしましょう」
• エイズ検査を希望する人
• 不特定多数のパートナーと性交渉をもっている人
• 不特定多数のパートナーとオーラルセックスを含む性行為がある人
• 外国で性交渉をもった人
https://www.msn.com/ja-jp/health/other/20%E4%BB%A3%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AB%E6%80%A5%E5%A2%97%E3%81%99%E3%82%8B%E6%A2%85%E6%AF%92-%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%9F%E3%82%B8%E3%82%A2-%E6%94%BE%E7%BD%AE%E3%81%97%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%A7-%E5%8B%87%E6%B0%97%E3%82%92%E6%8C%81%E3%81%A1%E6%9C%AA%E6%9D%A5%E3%82%92%E5%AE%88%E3%82%8B%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%82%92-%E7%9F%A5%E3%82%8B-%E6%B1%BA%E3%82%81%E3%82%8B-%E7%A7%81%E3%81%AE%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%83%80/ar-BB1jpKRM?ocid=msedgdhp&pc=NMTS&cvid=d47f342e1e71410d83ffdce0b31f02f1&ei=24